Skip to Main Navigation

質の高い都市インフラを持続可能で、強靭かつ包摂的なものにするために

Image

ハイライト

  • 世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップおよび持続可能な都市インフラ・サービス・グローバル・ソリューション・グループと共同で、5日間の都市開発実務者向け対話型研修を対面で開催し、都市インフラ事業がもたらす課題と機会について議論しました。
  • 参加者は、講義・視察を通じて日本の都市における事例について学び、日本の質の高いインフラ、官民パートナーシップ、インフラの維持管理・運営について理解を深めました。
  • 各事業の初期計画段階で環境、強靭性、包摂性を考慮することを求めるQII原則は、持続可能で質の高いインフラの整備を促します。また、事業のライフサイクルを通じて、経済的な効率性を高めることにもつながります。

 

2023年1月30日~2月3日

急成長する都市では質の高いインフラ投資が必須

世界は現在、長引くコロナ禍の影響、気候変動、ロシアによるウクライナ侵攻、エネルギー・食糧不足等、様々な危機に直面しています。そのような中、経済力も能力も限られている途上国は、持続可能な開発目標の達成や、既に15兆ドルにも達しているインフラ格差への対応が困難になっています。

こうした背景から、急速に成長する世界の都市において、持続可能で質の高いインフラ投資を促し、生活に不可欠な公共サービスを提供していくことがますます重要になってきています。とりわけ世界全体の温室効果ガス(GHG)排出量のうち、少なくとも70%が都市に起因するとも言われているため、各都市は住民に必要なサービスを提供しつつ、GHG排出量削減に向けて慎重に開発事業を計画・実施する必要があります。

「質の高いインフラ投資に関する原則」は開発の目的に沿っており、費用対効果も高い

都市インフラ事業がもたらす課題と機会について議論するため、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、質の高いインフラ投資(QII)パートナーシップおよび持続可能な都市インフラ・サービス・グローバル・ソリューション・グループと共同で、持続可能で質の高い都市インフラに焦点を当てた都市開発実務者向け対話型研修(TDD)を開催しました。本TDDは、2023年1月30日から2月3日までの5日間、東京都と福岡市で行われました。

3年ぶりに対面で行われた今回のTDDでは、東アジア・太平洋地域とサブサハラ・アフリカ地域など9カ国(カンボジア、エチオピア、ジャマイカ、マダガスカル、モロッコ、パキスタン、セネガル、トルコ、ベトナム)から33名のインフラ専門家や都市実務者が参加し、世界銀行タスクチームリーダー、日本の関係者とともに質の高いインフラについて議論しました。

質の高いインフラ投資に関する原則(QII原則)は、持続可能で開発目的に合ったインフラの提供や、長期にわたり最善な公共サービスを提供することを可能にし、政府にとっても費用対効果の高いインフラ整備を目指す6つの原則です。2016年にG7とG20で提唱された同原則は、持続可能なインフラが経済繁栄の重要な原動力であるというコンセンサスが得られ、日本が議長国を務めた2019年のG20において承認されました。また、同原則は世界銀行グループが掲げる、「環境に配慮した強靭で包摂的な開発」(GRIDアプローチ)の目標を達成するための重要な基盤としての役割も担っています。

QII原則

Image

日本の都市: 持続可能で質の高いインフラの計画・実施

Image
行動計画に対するフィードバックを聞くマダガスカルのチーム

これまで実施した都市開発実務者向け対話型研修(TDD)と同様に、今回のTDDも知識共有と構造的学習の場として、参加者同士のディスカッションのほか、海外の都市専門家との対話や日本のベストプラクティスの紹介など、参加者に様々な恩恵をもたらしました。講義ではQIIのエキスパート、都市や各国の専門家が登壇し、QII原則が何を意味するのか、QII原則がどのように都市インフラの改善に役立ってきたのかについて解説しました。参加者は、東京都の豊島区役所、福岡市の山王雨水調整池、同市の天神ビッグバン開発地区、国土交通省の九州技術事務所への視察などを通じて日本の事例について学び、質の高い日本のインフラ、官民パートナーシップ、インフラの維持管理・運営について理解を深めました。

世界銀行で「質の高いインフラ投資パートナーシップ」のプログラムマネージャーを務めるジェーン・ジェミーソンは、「QII原則をどう実施してきたかについて、日本の専門家の話を直接聞けたことはとても貴重な経験となりました。世界銀行のQIIパートナーシップでは、途上国政府と協力し、彼らのインフラ整備計画におけるインフラの質の問題に取り組んでいます。今回、日本のこれまでの取組みが我々の事業にも有益であることを再認識できてよかったです」と述べました。

今回のTDD終了後に実施された満足度調査によると、33人全員が満足し、32人が「自国の事業に適用できる解決策への理解が深まった」としています。また、参加者の60%以上が、「自国の行動計画を作成するにあたり、本TDDで最も有益だったのは日本の事例である」と回答しています。ある参加者は、「本TDDを通じて、事業や都市計画におけるQIIの基準と実施・適用方法への理解が深まった」とコメントしました。

主な論点:効率性、アクセシビリティ、漸進性の重要性

各登壇者はQII原則に基づいて事業を進めることにより、持続可能で質の高いインフラを整備でき、ライフサイクルの最初から最後まで経済性を高められることを強調しました。

世界銀行のコンサルタントである西牧宏氏は、50年にわたって質の高いインフラを整備してきた日本の経験を総括し、 1)質の高いインフラは、経済成長、インフラのライフサイクルコストの低減、災害に対する強靭性に貢献する、2)環境に配慮した制度的枠組みと透明で包括的なガバナンス構造が不可欠である、3)技術開発とイノベーションがインフラ開発には欠かせない、と述べました。

また、テクニカルリードを務めた世界銀行の持続可能な都市インフラのグローバルリード、ジョアンナ・マシックは、全体を振り返り、「QIIパートナーシップと連携し、インフラと都市という2つの重要なトピックを関連付けることができ大変嬉しく思います。私にとっての一番の成果は、QII原則を紹介しながら、世界の事例や日本の経験を共有できたことです。公共サービスやアクセスも含めて、日本がいかに一貫して質の高いインフラを導入してきたかを参加者自身が学べたことは大きな収穫だったと思います」と述べました。

また、テクニカルリードを務めたQIIパートナーシップのプログラムマネージャー、ジェーン・ジェミーソンも、東京の質の高いインフラが30年から50年の進化を経た成果であることに言及し、「私が学んだことの一つは、インフラの構築は漸進的に進めていく必要があるという点です。国がどういう状況にあるかをまず確認してから、課題に対して質の高い介入をすべきなのです」と述べました。

各国の参加者もそれぞれの経験を共有し、自国における実行可能な解決策としてQIIの原則をどのように適用できるかについて語りました。

パキスタンのパンジャーブ州にある「手頃な住居プロジェクト」のフォーカルポイントであるカディジャ・ムニリ氏は、同州ではインフラ整備とサービス提供が不十分であると述べ、QII原則が都市再生、民間資金の活用、インフラ事業の建設・所有・運営を促進するための指針になると述べました。ジャマイカ社会投資基金のマネージングディレクターであるオマー・マクファーレン=スウィーニー氏は、同国が投資しているインフラの質に問題があると指摘し、今後は費用対効果、ライフサイクルコストの計算、調達手法を見直し、インフラ整備に必要な財務的・技術的な専門知識についての理解を深めることが重要であると述べました。セネガルのデリバリーユニットの副CEOであるジビー・ディアグニー氏は、インフラへのアクセス、ライフサイクルコストに基づく民間事業者の選定、既に建設されたインフラの維持管理とコンプライアンスの重要性に気づかされたとし、今後セネガルのインフラ事業にQII原則が適用されることを願うと述べました。エチオピアのアレメイ・エフ・アルビエイ都市開発大臣は、質の高いインフラ整備に対する需要が同国で高まっているとし、官民パートナーシップ(PPP)を通じた民間セクターの参加、上流工程から調達する方法、政府の役割について学んだことが主な収穫であると述べました。

イベントの最後には、QIIパートナーシップのホストであり、インフラ・ファイナンス・官民パートナーシップ・保証(IPG)グループのグローバル・ディレクターでもあるイマド・ファクーリが閉会の挨拶を行いました。

TDLCが主催する都市開発実務者向け対話型研修(TDD)は、都市に関連するテーマや新たなトピックを取り上げ、地域および世界レベルで実行可能な解決策を生み出すことを目的としています。QIIを取り上げた今回のTDDは、2023年度に実施された5つのTDDのうち2つ目にあたります。2015年以来、都市開発実務者向け対話型研修は計41回行われ、90カ国以上から総勢1,632名の人々が参加してきました。こうした参加者は世界銀行の融資事業(計290件)や非融資事業(計128件)に関わっており、TDDを通じて他の参加者から多くの知見を得ています。



Api
Api