御母衣ダムは、岐阜県の庄川上流部に建設された日本屈指のロックフィルダムです。電源開発の御母衣発電所プロジェクトに対しては、世銀の貸出1千万ドルの他、日本政府がニューヨーク市場で国債を発行し調達した3千万ドルもあてられました。
庄川は、岐阜県北西部の山岳地帯より北に向って流れ、高岡市の近くで富山湾にそそいでいます。流域一帯は、冬期シベリアからの季節風がもたらす多くの雪が、春にはとけて水嵩を増し、また台風期には多量の雨を降らせるため、水量に恵まれた我が国有数の河川の一つです。そのうえ河川勾配が急であるため水力発電にとっては好条件で、1926年以来次々と20の発電所が造られてきました。1957年、電源開発株式会社はこの庄川最上流部に世界有数のロックフィルダムと、ダム左岸の直下約210mの地下に発電所建設に着工しました。
ダムは、土と岩を盛り立てて造った体積795万立方mにおよぶ世界有数のロックフィルダムです。ロックフィルダムはコンクリートダムと比較して経済的であり、基礎となる岩盤も良質でなくとも容易に築造できる利点から、近年では多くの大規模ロックフィルダムが造られていますが、日本でこの先駆となったのが御母衣ダムです。 また、御母衣ダムが造られたことにより、下流の発電所群の発生電力量の増加にも役立っています。発電所はダム左岸直下210mの地下にあり、2台の発電機で造られた21万5千kWの電気は、関西方面に送られています。
御母衣ダムの建設は、荘川村及び白川村の一部の水没を伴うものでした。水没地域の住民は7年にわたる激しい反対運動を展開しダム建設に抵抗しました。ようやく反対運動が終息した頃、高碕達之助電源開発総裁(当時)が、ある日湖底に沈む運命にあった2本の老桜を目にし、ふるさとを失う人々の心のよすがにとの思いから移植を決意しました。世界の植樹史上でも例を見ない巨桜の大移植は、その後多くの人々の協力により成功しました。後にその桜は地名をとって「荘川桜」と命名され、約50年を経た現在でも、春には満開の花を咲かせ、夏には溢れる緑を、秋には見事な紅葉を見せています。
プロジェクトデータ |
調印日:1959年2月17日 受益企業:電源開発 対象事業:電源開発 御母衣発電所(215,000KW) 貸出額:1000万米ドル |