広島市と聞くと、まず頭に浮かぶのは1945年の原爆による壊滅的な被害かもしれません。しかし、広島の歴史は破壊だけでなく、驚異的な復興と強靭化のストーリーでもあるのです。
広島の戦後復興は、特に土地管理や土地行政の面で、都市開発において貴重な学びを提供してくれます。東京開発ラーニングセンター(TDLC)では、この広島と東京を舞台に、「都市の土地管理」をテーマにした都市開発実務者向け対話型研修(テクニカルディープダイブ:TDD)を開催しました。
1週間にわたる知見交換プログラムには、広島や日本の専門知識から学ぶために10の低・中所得国および地域から土地の専門家が集まりました。世界中の都市が急速な都市化、気候変動、インフラ不足による土地問題に直面する中、広島の経験は貴重な学びを提供してくれます。
都市の土地管理が重要な理由
都市の土地管理と行政は、効率的な都市開発の基盤です。しかし多くの開発途上国では、土地行政システムの成熟度を超えた急速な都市化が進んでおり、そのため災害リスクのある地域での非公式な居住、無秩序な土地利用、制御不能な都市スプロールなどの問題が発生しています。このため、都市の土地管理と行政の強化は、より住みやすく持続可能な都市の創出に向けた重要なステップとなります。世界銀行も土地保有と行政における投資を拡大しており、2025年5月5日から8日までワシントンD.C.で開催される次回の土地カンファレンスでは、土地保有の確保と気候行動のためのアクセスが果たす基盤的役割に焦点を当てます。
「世界銀行は、土地への投資を倍増するという野心的な目標を打ち出しています。これはつまり、より多くの国や都市で土地記録、地籍記録、不動産評価、計画、許認可への投資に取り組んでいくということです。」と、ミカ・ペッテリ・トルホネン世界銀行首席土地管理専門官は述べました。
広島:レジリエンスの事例
広島の戦後復興は、土地管理と土地行政の両面での説得力ある事例です。例えば、1945年の原爆により、広島の軍事施設が集中していた基町地区が甚大な被害を受けました。その後、生存者のための一時的な公共住宅が建設されましたが、広島では深刻な住宅不足に直面しており、川沿いには頻繁に火災が発生する非公式な居住地が急増しました。この地域の再開発は、市にとって緊急の課題となりました。
基町再開発プロジェクトは1969年に始まり、広島平和都市建設法によって推進されました。この法律により、国からの特別な支援が提供され、軍用地が市に移管され、住宅や道路などの必要なインフラ、および広島中央図書館のような市民施設の建設が可能となる土地整理が実施されました。
プロジェクトの完了に伴い、非公式居住地から多くの人々が新しく建設された中・高層アパートに移り住み、1978年には戦後復興の大規模なプロジェクトが完了しました。
広島からの教訓
広島の経験から、現代の都市が直面する都市土地管理の課題に対して貴重な学びがあります。
1. 区画整理は、広島の再建において重要な役割を果たしました。原爆投下後、緑地や平和記念公園や平和大通りのような道路用地を確保した上で、元の土地所有者と調整を重ねながら、都市のレイアウトが大きく変更されました。
2. コミュニティの参加が重要な要素でした。市と県政府は、土地所有者や基町の非公式居住地に住んでいた人々と協力して、彼らのニーズと懸念を考慮した上でインフラや施設の改善案を提案し、新しい住居に移り住むことを可能にしました。
3. 総合的な計画は、広島の戦後復興の重要な要素でした。市の計画には安全性、緑地、そして社会的一体性が強調されており、屋上庭園やスポーツ施設なども含まれていました。この包括的なアプローチにより、単なる建物の再建だけでなく、より住みやすく包括的な都市環境形成が実現しました。
より平和でリバブルな未来に向けて
広島から学ぶべき最も重要な教訓は、平和の持つ深い価値です。ワークショップの一環として、参加者が広島平和記念公園を訪れたその日に、2024年ノーベル平和賞が日本の被爆者団体である日本被団協に授与されました。この訪問は、平和がリバブルな地球の基盤であることを改めて思い起させるものとなりました。
都市化、気候変動、インフラ開発といった複雑な課題に取り組む世界中の都市にとって、広島の戦後復興から得られる教訓は、より強靭で持続可能であり、そして平和な未来への道筋を示しています。
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