2023年9月11日~9月15日
急速な都市化を支えるため、自治体には安定した歳入基盤が必要である
今日、都市は様々なプレッシャーにさらされています。 急速な都市化、人口増加、サービス需要の増加、気候の影響などによる継続的なプレッシャーと、COVID-19以降の「ビルド・バック・ベター(より良い復興)」という社会的要請が相まって、都市はより環境にやさしく、強靭かつ包摂的で、安全な都市環境を、多大な費用をかけて構築する必要に迫られています。
こうした背景から、東京及び横浜で開催された世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)の都市開発実務者向け対話型研修(TDD)の参加者は、都市化のペースとそれに対するインフラや公共サービスの需要を支えるための安定した収入源をどう確保すべきかについて議論しました。各都市が税制のパフォーマンスを向上させ、十分に活用されていない資産や政策手段を有効活用し、安定した歳入につなげていかなければならないことは明らかです。本研修では、その解決策として固定資産税と土地を活用した資金調達を取り上げました。
固定資産税と土地を活用した資金調達の再評価
固定資産税は、世界中の地方自治体で広く使われている歳入方法です。米国や日本のような国では、インフラ・プロジェクトの資金調達や公共サービスの提供において、固定資産税は一般的に信頼性が高く、予測可能な収入源となっています。しかし、多くの発展途上国ではそうではありません。これらの国々では、土地の評価、税金の計算、税金の徴収に大きな課題があります。ただ、そうした国においても、固定資産税の評価、計算、徴収の改善を模索する動きが活発化しているのです。また、開発権の販売、インパクト・フィー、特別評価地区、土地区画整理など、先進国で普及している土地を活用した資金調達の形態も途上国ではほどんど見られません。これらのスキームを活用するためには、一定の社会基盤が整っている必要があるからです。このような基盤が未発達の多くの発展途上国においては、土地の利活用で生まれる歳入だけでなく、より広範な経済効果を誘発する機会を逃しているのです。
固定資産税と土地を活用した資金調達 TDD
TDLCは、都市管理とガバナンスに関するグローバル・ソリューション・グループ(GSG)、都市再生と土地開発利益還元に関する知識のサイロ・ブレーカーズ(KSB)と共同で、土地を活用した資金調達と固定資産税の導入に関する課題と解決策を議論するTDDを開催しました。9月11日から15日にかけて東京と横浜市で開催されたこのイベントには、ブラジル、エチオピア、ガーナ、インドネシア、北マケドニア、パキスタン、フィリピン、タンザニアの8カ国から36人が参加したほか、日本、米国、南アフリカ、韓国からも世界的な専門家や実務家が参加し、固定資産税と土地を活用した資金調達に関する豊富な知識と経験を共有しました。
参加者は、デューク大学名誉教授のロイ・ケリー博士などの専門家による講演を通じて、固定資産税についての理解を深めました。ケリー博士は、固定資産税は地方自治体にとって安定的で管理しやすい財源であり、土地の利用価値を引き出し、納税者の支払い能力に配慮することができると説明しました。また、これらのツールの活用を困難にしかねない政治的なハードルを回避するために、固定資産税の計算と徴収方法について全体設計と実施戦略をよく考える必要があると指摘しました。
土地を活用した資金調達に関する議論では、開発権、特別評価地区、公的不動産管理、また土地区画整理に焦点が当てられました。また、官民パートナーシップ(PPP)も、多くの土地を活用した融資プロジェクトがPPPであることから、重要な議題のひとつとなりました。ここでは市場調査を行い、民間企業の信頼性の見極め、民間セクターの参加を可能にする法制度や環境の整備し、ステークホルダーとの対話を行っていく重要性が強調されました。