ハノイ、2021年8月25日—世界銀行と社会開発研究所は、「ベトナム草の根レベルの新型コロナウイルス感染症予防・対応強化」プロジェクトに対し日本社会開発基金(JSDF)によるグラント275億ドルに関する合意書に署名した。
同プロジェクトは、名称の通り、感染症の大流行をはじめとする公衆衛生上の緊急事態に対しコミュニティ・レベルでの予防・対応機能の強化を目指すもので、ビンプク、カンホア、ロンアンの3つの省が対象として推奨された。同プロジェクトの下での支援により、3,500人以上の脆弱層を含め、推定27万人が恩恵を享受する。
「草の根の保健システムは、突発的な流行や世界的大流行に対する最前線での防御という意味で極めて重要な役割を担う。」と、世界銀行ベトナム局長代行を務めるラフル・キツルは述べた。「今回の新型コロナウイルス感染症危機で、そうしたシステムが抱えるいくつかの不備が明らかになっており、国の感染症対応システムをあらゆるレベルで強化する必要がある中、機能強化の必要性が浮き彫りとなっている。」
そこで同プロジェクトは、機器や技能の提供を通じた村落保健施設の機能強化を集中的に図っていく。具体的には、保健従事者が、感染の疑われる事例を早期に検知できるよう能力を高め、疫学的調査を実施する一方で、医療施設内での交差感染を最小限に抑えられるよう支援する。さらに、感染症危機が続く間、基礎的な保健医療サービスが途切れることなく提供されるよう支援する。
同プロジェクトはまた、対象期間である2024年12月までの3年間に、リスクに関する正確な情報の伝達を通じ、認識の向上と、公衆衛生上の非常事態の予防・対応における持続的な行動変容の促進を目指す。新型コロナウイルス感染症の感染形態、感染が疑われる兆候と症状、予防措置について科学的で事実に基づいた情報が、保健従事者のほか、コミュニティ・レベルで人々にも提供される。奨励される行動としては、マスクの正しい着用、適切な手洗い、環境衛生がある。
同プロジェクトには革新的な取組みとして、感染症危機が続く間に最脆弱層のニーズに応えようという試験的な支援が盛り込まれている。対象には、都市部の高齢者、少数民族、インフォーマル部門の労働者、HIV感染者・エイズ発症者、薬物中毒者、風俗産業で働く女性が含まれる。約3,500人のこうした人々を対象に、、ボランティアのネットワークを駆使して新型コロナウイルス感染症の検出・予防措置に関する情報、心理面での支援を提供するほか、食料、医薬品、防護具などの現物支給も行う。
同プロジェクトの実施を担当する社会開発研究所は、ベトナムの非政府組織(NGO)であり、公衆衛生、ジェンダー、コミュニティ開発のリサーチ、権利擁護、研修、支援で20年の経験を誇る。
日本社会開発基金(JSDF)は、日本政府と世界銀行によるパートナーシップであり、他のプログラムから取り残された最貧困・最脆弱層のエンパワーメントと直接給付による生計の向上を図るコミュニティ主導型開発や貧困削減プロジェクトの支援を目的にグラントを提供している。