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プレスリリース 2021年4月2日

中東・北アフリカ諸国で急増する公的債務-強力な組織・制度が回復の鍵

新型コロナウイルス感染症対応策のコスト累計が2021年末には2,270億ドル超に

ワシントン、2021年4月2日 — 新型コロナウイルス感染症の流行は、中東・北アフリカ(MENA)地域で長く続いてきた開発課題を悪化させ、貧困層の増加、公的資金の減少、債務の脆弱性悪化、政府への信頼の一層の低下を招いている。

保健・社会的保護の施策に必要な多額の借入れにより政府負債が増加した。各国は今後も保健と所得移転のための歳出を続けなければならず、それでなくても大きかった債務負担がさらに高まり、感染収束後の政策判断は複雑なものとなるだろう。 

世界銀行は中東・北アフリカ地域経済報告の最新版「中東・北アフリカ地域の債務:組織・制度が描く回復への道筋」を発表し、新型コロナウイルス感染症の流行がこれまで経済にもたらした壊滅的打撃と、それに伴う公的債務急増による長期的な影響、公衆衛生上の危機収束後も政府が直面するとみられる困難な選択について詳しく取り上げている。

例えば、同地域の2021年の経済成長率はマイナス3.8%になるとみられ、これは2020年10月時点での世界銀行の予測を1.3%ポイント上回っているが、危機以前の2019年10月時点での予測より6.4%低い。感染症関連の累計コストが今年末までに国内総生産(GDP)に与える損失は2,270億ドルに上るとみられる。2021年の同地域の回復は限定的となる見通しであり、回復もワクチンの配布が公平に行われるか否かによっても左右される。

「MENA地域の政府が新型コロナウイルス感染症対応のために借り入れを増加した際には、人命と生計といった人的資本への投資を行った。」と、世界銀行のフェリード・ベルハジ中東・北アフリカ地域担当副総裁は述べた。「この先には、ワクチン配布の状況で希望が見えるが、域内は依然危機的状況にある。域内政府が、基本的な保健医療・社会的保護の施策に充てるため多額の借り入れを行ったことは確認している。今回の危機についてはっきり言えることがあるとすれば、域内各国が今後数年間により強くより強靭に立ち直るには、強力な組織・制度が不可欠だということだ。」

同報告書によると、域内諸国の政府が基本的な保健医療・社会的保護の施策の資金として必要とした多額の借り入れが政府債務を大幅に増大させた。平均すると域内諸国の公的債務は、2019年は対GDP比約46%だったが、2021年にはほぼ10%増の55%に増えた。特に、域内の石油輸入国の2021年の債務は、平均で対GDP比93%になるとみられる。

支出、そして借入れの必要性が高い状況は当面の間、続くだろう。域内諸国は、感染危機が続く限り、保健医療と社会的保護への支出を続ける以外に選択肢がない。その結果、域内諸国の大半が危機収束後に、本来であれば経済開発に使うことができたはずの資金を債務返済に回さざるを得ない状況に陥るかもしれない。 

短期的目標と公的債務増大の長期的リスクの葛藤を解消するため、域内諸国に何ができるかについて、同報告書は、経済回復を3つの段階に分けて政策の選択肢を検証している。 

  • 感染危機の間の優先的支出
  • 感染収束期の財政刺激策
  • 中期的な過剰債務に伴うコストの軽減

以上の3つの段階のすべてを通じて特に重要な問題として浮上するのが、ガバナンスと透明性である。

「MENA諸国が短期的なニーズと長期的な公的債務リスクの妥協点を探るに当たり、強力にして効率的かつ透明な組織・制度が重要な枠割を果たすことになるだろう。」と、ロベルタ・ガッティ世界銀行中東・北アフリカ地域総局チーフ・エコノミストは述べる。「新型コロナウイルス感染症拡大とワクチン・プログラムに関する公的情報を透明な形で活用することが、回復の加速に役立つ可能性がある。一方で、債務の透明性と公共投資の質を高める改革を直ちに実施すれば、借入コストを減らし長期的な成長を促進できる。このように、透明性の高い組織・制度が、MENA地域の持続的なな回復に向けた道筋を描くために役立つはずだ。」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策

世界銀行グループは、途上国に開発のための資金や知識を提供する世界有数の機関であり、途上国が今回の世界的流行への対応を強化できるよう、広範かつ迅速な措置を講じている。世界銀行グループは公衆衛生の取組みや重要な物資及び機器の円滑な供給を支援する一方で、民間セクターが事業を継続し、雇用を維持できるよう支援している。世界銀行グループは、各国が貧困層・脆弱層を守り、民間セクターを維持し、景気回復を促進できるように、2021年6月までの15カ月間に最大1,600億ドルの資金を100カ国超に提供する。この金額はグラント(無償資金)又は譲許的融資の形で提供される、国際開発協会(IDA)からの新規資金500億ドルと、途上国による新型コロナウイルス感染症ワクチンの調達・配布のための120億ドルが含まれる。


お問い合せ

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