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プレスリリース 2020年7月31日

新型コロナウイルス感染症による所得減少から人々を守る: 8世帯のうち1世帯には社会的保護が鍵

ブリュッセル、2020年7月31日  – 新型コロナウイルス感染症の世界的流行の影響により、8世帯のうち1世帯が長期的な所得減少に直面しており、そのような世帯を保護するため、欧州連合(EU)加盟国は現行の社会的保護と労働市場支援を強化する必要がある、と世界銀行は最新の報告書「強靭性の回復」で指摘している。同報告書はまた、経済活動の停止が解除されても雇用の8分の1近くが脅かされるとしている。

世界銀行が発表する最新のEU定期経済報告である同報告書は、新型コロナウイルス感染症が市民の所得と労働市場に及ぼす影響に各国が効果的に対応するための優先事項を挙げている。新型コロナウイルス感染症の世界的流行への迅速な政策対応により各国は、雇用喪失への直接的な影響を防ぐと共に、雇用関係の維持に必要な時間的な余裕を得ることができた。今回の流行拡大の結果、職場で人との距離をとるというアプローチの実践が難しい人に悪影響を及ぼしているが、その一方で、テレワークへの移行が可能な人はさほど影響を受けていない。

同報告書は、「貧困に陥る恐れのある」人口の割合が、2019年の14.7%から、2020年には17.7~18.7%へと3~4%上昇しかねないとしている。「貧困に陥る恐れ」の基準は国によって異なり、国別平均所得の60%未満に陥った人がこの層に入るとされる。「新型コロナウイルス感染症は、近年EUで見られた所得向上を一部帳消しにする危険がある。」と、ガリーナ・A・ヴィンスレット世界銀行欧州連合担当局長は言う。 「現行の社会的保護システムを通じ困窮世帯にバランスのとれた支援を行うと共に、仕事に安心して復帰できる態勢づくりと経済の回復にインセンティブを与える必要がある。」

同報告書は、EUが将来的なショックや危機への対応に対してより効率的に備えることができるよう、各国には今、経済活動再開の段階で社会的保護システムを拡充する機会が開かれていると強調している。具体的には、危機に直面した際に迅速に適応できるよう社会的保護システムの柔軟性を高めること、非正規雇用の人々への的を絞った支援など、対象範囲のばらつきを解消することなどがある。同報告書で特筆すべき点として挙げられているのは、既存の社会扶助対象者への給付は比較的直接的な方法とはなるものの、既存プログラムでは、すべての低収入労働者や失業の危険に瀕した人が網羅されているわけではないことだ。

今回の危機によって、労働市場における格差とリスクが拡大しつつあり、EU全域での所得収斂は行き詰っている。同報告書は、女性、若者、低賃金労働者、低学歴労働者の4グループが危機的状況にあるとしている。いずれも、今回の危機から大きな影響を受けた職業に就いている、または雇用契約が不安定である傾向が強い。

例えば、ここ数カ月間における若い失業者への影響は明白である。こうした層の雇用見通しや所得は、世界銀行の複数の報告書が示す通り、世界規模の金融危機の際に大きな打撃を受けており、暫定的な指標からは、彼らが今回の危機で深刻な影響を受ける可能性が高いことがうかがえる。女性は男性と比べ、働いているセクターや就いている職業のせいで、仕事への復帰においてより大きなリスクを抱えている。女性の場合、仕事への復帰が難航するであろう人の割合は5人に1人だが、男性の場合は10人に1人となっている。男女間の格差は、子供の世話や家事を誰が担当するかをめぐって不平等が生じているために拡大している。

同報告書はまた、今回の危機を乗り切り、脆弱世帯の所得回復を支援するためのソリューションを導入するためには、社会からの信頼と企業、政府、労働組合の間の協力が重要であると強調している。これは強靭性強化の柱として、世界銀行による第5回定期経済報告書で強調された点と一致する。危機が長引き、政府による支援パッケージが実行可能なセクターに的を絞りこんだものとなる場合、調整の取れた対応の重要性は高まっていく。「今回の危機により労働市場における格差が拡大しつつあるが、EU諸国はこの期間に社会的脆弱層のための社会プログラムの強化、経済回復の支援、生産的な雇用創出を促進することができる。」とヴィンスレットは述べている。

ヨーロッパ・中央アジア地域における世界銀行の取組み

世界銀行はこれまで、ヨーロッパ・中央アジア地域諸国が新型コロナウイルス感染症の影響を緩和できるように14億ドル以上の支援を表明している。2020年4月2日以降、新たな緊急対応プロジェクトを通じて約4億9,000万ドルが承認されている。加えて、各国の新型コロナウイルス感染症対策を支援するため、追加融資を含め最大9億2,500万ドルが、進行中のプロジェクトや貸出から移転、使用、提供された。

先の見えない状況が続く中、世界銀行の報告書「世界経済見通し」最新版は、ヨーロッパ・中央アジア地域は2020年に大幅な景気後退となり、4.7%のマイナス成長となると予測している。

 


プレスリリース番号: 2020/ECA/126

お問い合せ

ブリュッセル
Oliver Joy
+32 25520059
ojoy@worldbank.org
東京
開裕香子
(+81-3) 3597-6650
yhiraki@worldbankgroup.org
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