プレスリリース

温暖化に伴い極端な天候による被害が続出

2013年11月18日




気候・災害リスク管理への投資拡大を-新報告書

ワルシャワ、20131118 – 世界的な気候変動が続く中、地球温暖化に伴う極端な天候によるコストや被害が増大している。影響はすべての国に及ぶが、特に深刻な被害を受けているのは途上国で、規模が大きくなる一方の洪水、干ばつ、暴風雨で多数が犠牲になり、人々の暮らしが失われている。

「フィリピンが過去最大の台風30号(ハイエン)の直撃を受け、気候変動により極端な気候現象がいかに激しさを増しているかがはっきりと示されました。最も大きな被害を受けるのは貧しい人々です」と、世界銀行グループのジム・ヨン・キム総裁は述べた。「今は緊急支援を最優先しなければなりませんが、こうした悲劇を受け、温室効果ガス排出を抑制し、今後深刻化するであろう気候・災害リスクに備えるための支援を先送りにしている余裕はもはや残されていないことは明らかです」

ワルシャワで開かれている国連気候変動枠組条約締約国会議(COP19)の一環として本日発表された世銀の新報告書によると、気候変動への適応や天候関連の防災対策において、脆弱国支援のためにできることはまだ多い。本報告書「災害に強い社会の構築気候・災害リスクを開発に組み入れる」(仮題)は、海面上昇、淡水資源の塩水化、干ばつなど、長期間で現れる影響のほか、洪水、熱波、サイクロンのような極端な気候現象も取り上げている。

本報告書は、台風30号の直撃がフィリピンに甚大な被害をもたらすよりも前に作成されたもので、気象関連の災害は人命や仕事を奪い、個人の財産やインフラを破壊・損傷し、特に貧困層に大きな影響を及ぼすとしている。

「過去30年間の自然災害による犠牲者は250万人以上で、被害総額は4兆ドル近くに達しています。経済的損失は、1980年代の年間500億ドルから、過去10年間は年間2000億ドル弱へと増えています。しかも、こうした損失の約4分の3は極端な天候に起因したものです」と、世銀のレイチェル・カイト持続可能な開発総局SDN副総裁は述べている。「気象に起因する個々の現象をすべて気候変動と結びつけることはできませんが、気候変動対策を講じない限り、極端な気候現象は激しさを増すだろうと専門家は警告しています」

世銀グループの経験から得られた教訓を集中的に取り上げたこの新報告書は、長期的な強靭性を培い、災害リスクを軽減し、将来制御できないコストを避けるために、分野とセクターを越えて協力するよう各国政府や国際開発コミュニティに呼びかけている。 

主な分析結果

  • 過去30年間、災害による被害は、1980年代の年間平均500億ドル程度から過去10年間には2000億ドル弱まで増えてきている。再保険会社のミュンヘン再保険のデータによると、報告されている災害被害総額は1980~2012年が3.8兆ドルと推定され、その74%は極端な天候に起因する。
  • 天候関連の経済面への影響は、高価値の資産が危険にさらされているため、急成長中の中所得国で特に大きい。2001~2006年の6年間、災害による平均被害総額は対GDP比1%に上り、高所得国の平均の10倍に相当する。 
  • 最も対応力の低い小国、低所得国が、特に大きな打撃を受けている。例えば、ハリケーン・トーマスは2010年にセントルシアで対GDP比43%もの壊滅的被害を与えた。「アフリカの角」地域では、2008~2011年の長期の干ばつにより、最悪時には1330万人が食糧不足に陥り、被害総額はケニアだけで121億ドルに上ったと推定される。
  • 気候変動や災害に強い開発の推進は、人命を救い、暮らしを守るだけでなく、気候変動のショックから貧困層を守ることができる。早期警報システムは世界各地で数え切れないほどの人命の救助に効果的で、通常、初期投資コストの4~36倍の利益をもたらすことが立証されている。インドのオリッサ州とアンドラ・プラデシュ州では、長年にわたり防災に取り組んだ結果、2013年のサイクロン「ファイリン」による犠牲者は40人にとどまった(1999年の同様のサイクロンの犠牲者は1万人)。
  • 初期投資のコストは高額だが、見返りは極めて大きい。災害評価の経験から、より安全性の高いインフラを構築する方が既存の構造物を建て直すより10~50%高くつくことがわかっている。大規模なインフラの場合ははるかに高くつく可能性もある。例えば、2008年のナミビア洪水の後、洪水危険地域での高架道路建設や排水路改善の必要が生じ、そのためには、被災した構造物の建て直しの5.5倍のコストがかかった。
  • 強靭性構築についてはすでに多くのことがわかっているが、関係省庁や各分野での協力を改善することが必要。世銀やそのパートナーは、災害に強い開発に関してグローバルに豊富な知識を蓄積してきたが、現地の機能とグローバルな資源の分断を避けるためには、気候・災害の管理というアジェンダの調和化を一層進めることが求められる。

世銀は、気候・災害リスクに対する各国の対応を支援するため、様々な種類の融資を提供したり、組み合わせたり、活用したりしている。その際「世銀防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)」や「気候変動への耐性強化パイロット・プログラム」を通じ、少なくとも70か国に対して、気候・災害リスクを開発の計画立案や投資に組み入れるための支援を行っている。

加えて、危機的状況にある国や人々を支援するため、助言サービス、各種ツール、オンライン・プラットフォーム、国別リスク評価なども提供している。 

「世銀グループでは、災害リスク管理を最優先アジェンダと位置づけています」と、カイト副総裁は述べた。「残念ながら、災害リスクの開発への組み入れについてはさらに傾注していく必要があります。我々は、計画立案過程の改善、災害に対する強靭性基準の策定と早期警報システムの確立において各国を支援することができます。この分野の世銀ポートフォリオは急増しつつあり、投資額3ドルのうち2ドルは、単なる事後対策ではなく予防と準備態勢構築に的を絞ったものです」

台風30号(ハイエン)後の復旧・復興においては、世銀はフィリピン政府と密接に協力しており、出来る限りの支援を提供する用意がある。

報告書「災害に強い社会の構築:気候・災害リスクを開発に組み入れる」(仮題)は、世界銀行とGFDRRによって作成されました。報告書の詳細はウェブサイトをご覧ください www.worldbank.org/climatechange

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プレスリリース番号:
2014/189/SDN

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