ワシントン 2013年5月1日 – 世界銀行グループが本日発表した新たな報告によると、紛争影響下の脆弱国20か国が政治的・経済的課題を抱えながらも最近、ミレニアム開発目標(MDGs)の少なくとも1つ以上の目標を達成し、さらに6か国は達成期限である2015年より前に目標を達成する見通しである。
これは、わずか2年前と比べても著しい進展である。世界銀行で開かれた「脆弱性フォーラム」の場で発表された今回の報告は、紛争の影響下にある脆弱な低所得国によるミレニアム開発目標(MDG)の達成はないと報告された「世界開発報告(WDR)2011:紛争・安全保障・開発」とは顕著な違いを見せている。世銀は今後、紛争影響下の脆弱国における業務の有効性を高めるため、一連の内部改革を進めていく。
「これは、達成の可能性が低いとしてこれらの国を見捨ててはならないという国際社会に対する警鐘となるはずだ」と、ジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁は述べている。「こうした進捗の兆しは、たとえ脆弱で暴力に満ちた国であっても開発は可能であり、また実際に開発が進んでいることの証だ。ただし多くの国にとって、先行きはとてつもなく厳しい。成功事例は希望を与えるが、紛争影響下の脆弱国はその実に多くが世界の他の国々に後れを取っているのが現状だ。これらの脆弱国に暮らす人々の生活水準向上のため、基本的な支援をタイミングよく提供していく必要がある」
同分析によると、ギニア、ネパール、ボスニア・ヘルツェゴビナ、東ティモールを含め、紛争影響下の脆弱国8か国が、極度の貧困(1日1.25ドル未満で生活する人々の数)を半減するという目標を既に達成している。
紛争影響下の脆弱国において最も大きな前進があったのは、教育におけるジェンダーの平等(男子生徒数に対する女子生徒数の比率)である。キリバス、ミクロネシア、ミャンマー、ツバルなどが目標を達成し、ブルンジ、チャド、コンゴ共和国、東ティモール、ネパール、イエメンなども順調である。
しかし、同分析は、MDGの目標達成期限まで1,000日を切ったにもかかわらず、現時点で貧困関連の目標を達成できている紛争影響下の脆弱国は約20%に過ぎず、脆弱国はMDGの大部分を達成できないだろうとしている。同分析は「グローバル・モニタリング・レポート」のデータに基づいて、紛争が再燃している国では、一度見られた進捗が後退する可能性があるとも指摘している。
こうした進捗の兆しが確認された背景には、開発が加速していること、そしてデータとモニタリングの品質が改善されたことがある。ただし同分析は、依然として多くの国でデータの不足が課題であるとも指摘している。
「脆弱国だからといって破綻国家というわけではない。これまでの進捗に習い、効果的な活動を拡大する形で取り組みを加速させる必要がある」とキャロライン・アンスティ世界銀行専務理事は述べている。「測定可能ということは達成可能ということだ。脆弱国がこの先厳しい道のりを進んでいく中、我々が力を合わせて、各国のデータ収集能力の構築を支援すべく取組みを続けていくことが不可欠だ」
この分析によると、ネパール、ツバル、コモロ、ミャンマー、アフガニスタンなど、紛争影響下の脆弱国6か国が既に、飲料水へのアクセス整備に関する目標を達成している。ギニア、ギニアビサウ、シエラレオネも2015年までのこの目標達成に向けて順調に進んでいる。
ネパールは、紛争影響下の脆弱国の中で唯一、妊産婦死亡率低減の目標を達成している。ネパールでは妊婦死亡率が1996年に比べて半減している。アフガニスタン、アンゴラ、エリトリア、東ティモール、イエメン共和国など、紛争影響下の脆弱国は、現在のペースで前進を続ければ、妊産婦の健康改善に関するMDGを達成できる予定である。
1つまたはそれ以上の目標を達成している紛争影響下の脆弱国は、アフガニスタン、アンゴラ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コモロ、ギニア、ギニアビサウ、イラク、キリバス、リベリア、リビア、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦、ミャンマー、ネパール、スーダン、シリア、東ティモール、トーゴ、ツバル、ヨルダン川西岸・ガザ地区の20か国である。
紛争影響下の脆弱国における世銀業務の大部分は、世銀の最貧国向け基金である国際開発協会(IDA)の支援を受けており、現在、紛争影響下の脆弱国において190件のプロジェクトが進められている。IDAは2000年以降、紛争影響下の脆弱国に対し220億ドルを超える支援を行っており、こうした資金は約1000万人の子供への予防接種、約150万人の女性に対する妊婦健診の実施などのプロジェクトに充てられている。紛争影響下の脆弱国におけるIDAの取組みの効果を高めるため、世銀は、紛争と脆弱性の原因への対処により集中し、より柔軟で迅速な支援を提供するという新方針を含めた改革策を実施している。
注:「グローバル・モニタリング・レポート2013(英語)」のデータ分析、および世界銀行「2013年度脆弱環境リスト(英語, PDF)」に基づく。
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