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特集 2020年10月19日

新型コロナウイルス感染症の流行と急速な都市化における廃棄物管理

2020年10月19日~23日

廃棄物管理は、世界の都市が直面している大きな課題です。世界銀行が発表した最新の報告書「What a Waste 2.0」によると、世界の廃棄物量は2050年までに70%増加すると予測されています。その量は急速な都市化による人口増加に伴って増えており、都市に住む人々の健康や安全、回復力、生産性を脅かす新たな課題を生み出します。

廃棄物は世界的な問題ですが、従来は地方自治体レベルで管理すべき取り組みとして認識されていました。現在は国レベルで環境汚染の削減やリサイクル促進、循環型経済に取り組む政府が増えていますが、地方自治体はいまだに廃棄物管理に苦戦しています。

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TDLCがオンラインで開催した、廃棄物管理に関する実務者研修会合では、パネルディスカッションの一つで、シルパー・カザ(世界銀行 都市開発専門官)が世界における廃棄物管理の現状について話しました。写真:世界銀行グループ

クレメナ・イオンコヴァ世界銀行上級都市開発専門官によれば、地方自治体には廃棄物管理対策に向けた自主性や資源が不足していることが多いため、各国政府が地方自治体を導き、権限ややる気を与え、制度構造や政策、資金調達などの環境を整えることが重要です。これは、東京開発ラーニングセンター(TDLC)が10月19日から23日にかけて初めてオンラインで開催した「廃棄物管理に関する都市開発実務者向け対話型研修(テクニカル・ディープ・ダイブ:TDD)」で出された提案の一つでした。

市民を重視した廃棄物管理に取り組む日本の都市

本TDDでは、TDLCの都市連携プログラム(CPP)のパートナー都市である福岡市と北九州市による、廃棄物に対応するための独自のソリューションが紹介されました。

北九州市は、ごみの収集コストを相殺するため、1998年に家庭用ごみ袋を有料にしました。当初、この新しい制度に対する市民の反応は好意的ではなかったものの、大規模な市民活動によって、何百人ものボランティアがごみ集積所で協力を呼びかける動きが生まれました。青栁祐治 北九州市環境局参事は、市民参加が制度導入の成功の鍵だったと振り返ります。

この成功を踏まえ、北九州市は段階的にごみ収集の料金を引き上げ、リサイクルの対象となる廃棄物の品目を増やしました。同市は、今や廃棄物処理、特にリサイクルの分野における先進都市です。ごみ収集の料金が上がるにつれて廃棄物の量は減少しており、同市の廃棄物管理は市民が誇る取り組みとなっています。

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青栁参事のプレゼンテーションで使われたスライドから、北九州市のごみ集積所に立つ市民ボランティアの様子。写真提供:北九州市

福岡市によるごみ収集の取り組みも、市民から高く評価されています。最近の調査では、98%の市民が満足していると回答しました。福岡市の取り組みの特長は、夜間の収集です。日中の交通渋滞を避け、ごみも人目につかないため、より美しい都市環境を実現しており、さらに夜間に収集員が活動することで治安向上にもつながる、といった利点があります。

また、福岡市は、ごみの埋め立てや管理に関する独自システムを採用しています。比較的低いコストで設置や維持管理が可能で、高度な技術を必要とせず、従来の埋め立て方法に比べて温室効果ガスの発生量を50%削減することができます。この方法は容易に適用できるため、すでに17カ国で導入されています。

コロナ時代における廃棄物管理

新型コロナウイルス感染症の世界的流行の状況は刻々と変化しており、各自治体は様々な影響を受けています。日本の廃棄物処理に関するプレゼンテーションの中で、古澤康夫 東京都環境局資源循環推進専門課長は、東京都では在宅勤務を推進した結果、商業廃棄物が減った一方で、家庭からの廃棄物が増えたと話しました。

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プラスチック汚染と循環型経済におけるアップストリームの手段について話すデルフィン・アリー(世界銀行 上級環境エンジニア)。写真提供:世界銀行グループ

また、新型コロナウイルス感染症の流行による衛生面への懸念から、個人用防護具を含む使い捨てプラスチックの使用が増えており、その結果、プラスチック削減への機運を後退させています。これに対する手段として、デルフィン・アリー世界銀行上級環境エンジニアは、復興政策にプラスチック汚染に対する取り組みを組み込むという提案をしました。

本TDDは終始オンラインで開催され、日本や各国の専門家による生中継のプレゼンテーション、北九州市における廃棄物の収集過程を収録した映像の放送、オンラインでのディスカッションなどが連日行われました。コロンビア、エルサルバドル、エストニア、ジョージア、ガーナ、インド、リベリア、パキスタン、フィリピン、南アフリカ、ヨルダン川西岸・ガザ地区の計11カ国から、計75人が参加しました。

TDD 研修は、TDLCの代表的な実践的知識共有プログラムです。約1週間のセッションでは、専門家によるパネルディスカッション 、現地視察、参加者同士のつながりを通じて都市に関連する課題に向き合い、世界と日本の成功事例を活用して、途上国における世界銀行のプロジェクトに適用できる行動計画の策定につなげます。



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