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特集 2019年12月20日

1年を振り返って:14の図表で見る2019年

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© 世界銀行



2010年代が終わろうとする今、世界では多くの分野で進歩が見られました。最貧国では水、電気、衛生設備(例えばトイレ)へのアクセスが拡大し、貧困率と子供の死亡率は低下しています。テクノロジーの普及により、今では携帯電話の数が世界の総人口を上回っています。一方で、好ましくないことでもこれまでの記録が塗り替えられる事態が起きています。例えば、2019年、移住を強いられた人の数は過去最高を記録しました。大気中の二酸化炭素の量は過去最大に上り、生物多様性は急速に失われつつあります。以下のチャートは、2020年を迎えようとする今、目覚ましい達成があったことと並び、深刻な課題が残っていることを示しています。

1. 15カ国で8億人が極度の貧困から脱却

30年前、極度の貧困層は世界人口の3分の1以上に上りましたが、今では、1日1.90ドル未満で生活する人の割合は世界人口の10%未満です。世界銀行が貧困に関するデータを新たに分析したところ、これら15カ国は比較可能なデータのある114カ国の中で貧困削減率が最大であり、内7カ国はサブサハラ・アフリカ地域の国でした。また、アフリカの2カ国は脆弱国に分類されており、特に厳しい状況下にあっても貧困削減は可能であるとの希望をもたらしました。



2. 世界の貧困層の85%は南アジア地域とサブサハラ・アフリカ地域に分布

入手可能な最新の総合的データによると、この5カ国は、インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュです。よって、世界全体で極度の貧困層を削減するには、これら5カ国における取組みとともに、極度の貧困層のうち85%(6億2,900万人)が暮らす南アジア地域とサブサハラ・アフリカ地域の貧困削減に取り組むことが不可欠です。



3. 気候変動対策を求めるデモ行進

9月、ニューヨークで開かれた国連気候行動サミットを前に、世界150カ国以上で数百万人が早急な気候変動対策を求めてデモに参加しました。そして国連気候変動枠組条約第25回締約国会議(COP25)の期間中にはマドリッドで推定50万人が、地球温暖化対策の強化を求めてデモ行進を行いました。この他、エネルギー、輸送、食糧など主要産品の価格変動に抗議するデモが世界各地で相次ぎました。

具体的には、低炭素型開発の促進や、「汚染者負担」の原則の徹底に加え、脆弱層を不利にすることなく費用と便益が公平に配分される仕組みの確立が挙げられます。自国が決定する貢献(NDCs)を達成するために炭素価格設定を計画中または検討中であるとする国は、世界全体195カ国中、半数以上の96カ国です。現在、世界の温室効果ガス排出量の20%を対象に57件の炭素価格設定イニシアティブが実施中または実施の予定です。こうしたイニシアティブの設計・実施の成功に向けて、炭素価格収入(2018年は約450億ドル)の最も効果的な使い方を見極めることが重要です。例えば、環境と経済・社会的側面での持続的成長の同時達成をめざす「公正な移行」の達成支援、労働所得税の軽減、公益の観点での重要な優先課題への支出拡大などが挙げられます。



4. 世界人口の89%が電力アクセスを確保

2019年のSDG7進捗状況報告書によると、電力へのアクセスを持たない人の数は2010年の12億人から2017年は8億4,000万人まで減少しました。特に、電力へのアクセスに関して世界で最も遅れていた20カ国のうち、バングラデシュ、ケニア、ミャンマーが最も大きく改善しました。

農村部やサブサハラ・アフリカ地域では今もなお5億7,300万人が電気のない生活をしています。こうした中、ミニグリッドや家庭用太陽光発電システムなど、送電網につながっていない「オフグリッド」電力が、最貧困層や、電力供給の難しい世帯にとっての解決策となります。実際、世界で約1億2,000万人が太陽光発電により基本的な電力を確保していますし、オフグリッドの小型発電・送電システムであるミニグリッドには4,700万人が接続しています。太陽光や風力等の再生可能エネルギーを電力供給網に統合するには、エネルギー・ストレージの技術が不可欠です。近代的で大規模な再生可能エネルギーの普及に向けて、世界銀行が率いる国際パートナーシップがそうした技術の研究開発を進めており、2025年までに17.5ギガワット時(GWh)の電池貯蔵を目指して資金を提供する予定です。これは、途上国すべてを合わせた現在の蓄電量4-5GWhの3倍以上に当たります。



5. 100万種が絶滅の危機に

生物多様性は、人類の歴史において過去に例がないほど急速に失われつつあります。「生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム(IPBES)」が実施した世界規模のアセスメントによると、にあり、しかもその多くが数十年のうちに絶滅すると見られています。現在、絶滅の割合は過去1,000万年と比べ数千倍も高く、その大半は人間の営みが原因です。具体的には、土地や海の使い方の変化、生物資源の直接的な搾取、気候変動、公害、外来種の侵入が挙げられます。人間の利益になる機能の多くは生物多様性に支えられており、生物多様性が失われると、人間の暮らし、水の供給、食糧安全保障、異常気象への強靭性に影響が及びます。自然を保護し持続可能な形で活用していくための行動をとらなければ、貧困、飢餓、保健、水、都市、気候、大洋、土地に関する世界規模の目標は達成できない恐れがあります。



6. 5歳未満児の4人に1人は出生届が未提出

出生届により、法的に身元が保証され、保健医療、教育、社会サービスへのアクセスが確保され、成長後は仕事に就くことが可能となります。、2億3,700万人の5歳未満児が出生証明書を持っていません。統計を分析したところ、出生届未提出なのは農村部の最貧困家庭の子供たちで、母親が正規の教育を全くまたはほとんど受けていません。世界全体で見ると、出生届の提出は、農村部の子供と比べ都市部の子供の方が約30%高い傾向にあります。

喜ばしいことに、過去20年間、特に過去10年間に一定の改善が見られました。出生届が提出された5歳未満児の割合が2000年の10人に6人から、現在は4人に3人にまで増えているのです。こうした改善がなければ、出生届未提出の子供の数は2億6,600万人に達していたはずです。とはいえ、進捗がさらに加速することがなければ、サブサハラ・アフリカ地域の出生届未提出の子供の数は今後も増え続け、2030年には1億人を超えるとUNICEFは推定しています。



7. 簡単な物語さえ読めない10歳児が数百万人

そのため、成長して仕事に就く際に必要なスキルやノウハウを習得させようという各国の取組みも効果が上がらない恐れがあります。この問題を重く見た世界銀行は、簡単な物語を理解することができない10歳児の比率を示す「学習貧困」というコンセプトを導入しました。最新のデータでは、低・中所得国の子供全体の53%と、貧困国の子供の89%が学習貧困の状態にあります。識字率改善の現在のペースのままでは、2030年の時点でも低・中所得国の子供の43%がなお学習貧困から脱け出せないことになります。世界銀行は、改善ペースを加速させるため、2030年までに「学習貧困」を半減させるという目標を設定しました。いくつかの国は、世界全体の進捗率の平均で3倍近い大幅な改善を示してきましたが、学習貧困半減の目標を達成するには、すべての国が、2000~15年の間に、こうした国々同様のペースで学習の状況を改善する必要があります。



8. 雇用全体でサービス業の占める比率が高まる傾向に

将来の雇用はどういった業界で生まれることになるのでしょう?現在の傾向から判断すると、その答えはサービス業のようです。サービス業は2000年代初頭に世界で最も多くの雇用を生み出すようになり、現在は世界全体の雇用の内49%を占めています。国際労働機関(ILO)のデータによると、サービス業で働く人が労働者全体に占める割合は、低所得国が26%、高所得国が75%です。市場(民間セクター)サービスでの雇用は、1997年以降、高位中所得国において倍増しています。卸売り販売および小売り販売に加え修理業が2017~25年、途上国において全体的な雇用拡大を推進すると見られます。一方で、中所得国と先進国のいずれにおいても、不動産および事業サービスにおける雇用が拡大する見込みです。ILOによると、宿泊業と食品サービスの雇用は、程度の差はあるものの、国を問わず拡大するでしょう。





9. 2010年以降、新興国・途上国の債務が急増

最初の3回は、数多くの新興国・途上国における金融危機に発展しました。世界銀行グループの新報告書「増え続ける世界債務(Global Waves of Debt)」は、2010年に始まった今回の債務拡大はすでに、新興国・途上国において、これまでにないペースで、かつ最も広範囲に、最大規模まで達したと指摘しています。2018年、債務残高の対GDP比は、54%ポイント上昇して過去最高の170%近くとなっています。債務拡大に伴うリスクの一部は、現在、低金利が続いていることによって抑えられてはいますが、新興国・途上国はこのほかにも、成長鈍化の見通し、脆弱性の拡大、世界規模のリスクの高まりにも直面しています。現在の債務拡大が危機に発展するリスクを抑え、仮に危機が発生しても、その影響を緩和するために、いくつかの政策オプションが考えられます。



10. 難民の数が過去最大に

2018年、世界の難民・避難民の数は7,080万人にまで増えました。内訳は、難民が過去最高の2,590万人、国内避難民が4,130万人、亡命申請者が350万人などです。出身国以外で国際的な保護を求めている人の数は2011年以降70%増加しています。難民の約85%は途上国が受け入れています。2018年、難民の内67%を、シリア・アラブ共和国、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアの5カ国の出身者が占めました。そして2016年から2019年11月までの間にベネズエラから、主にコロンビア、ペルー、エクアドルに逃れた人は460万人以上となりました。世界銀行グループは、脆弱性・紛争・暴力の影響下にある国々への融資(例えば、難民・受入国向けの融資)を200億ドル以上へと大幅に増やしつつあり、長引く危機や危機後の状況に対処するため、国連と協力しています。



11. 出稼ぎ労働者による仕送りがグローバル経済でますます重要に

2019年、低・中所得国への仕送り総額は、2018年の4.7%増に当たる5,510億ドルに達する見込みです。仕送りは1990年代中盤以降、公的援助の3倍に上っており、今年は、低・中所得国への外国直接投資(FDI)を上回る勢いです。トンガ、キルギス共和国、タジキスタン、ハイチ、ネパールの5カ国では、仕送りがGDPの25%またはそれ以上となっています。



12. 携帯電話の普及は進むも、インターネットへのアクセスはなおも限定的

デジタル革命はわずか20~30年の間に世界の隅々まで行き渡りました。現在、途上国では携帯電話を保有する人の数が、電力や整備された衛生設備へのアクセスを持つ人の数を上回っています。デジタル・プラットフォームが構築されたことにより、情報アクセスがかつてないレベルにまで増え、モバイル・バンキングをはじめとするビジネスが台頭してきました。さらに、世界中で財やサービスを生み出す「グローバル・バリュー・チェーン」を促進し、その過程で多くの途上国のGDPを押し上げています固定ブロードバンドへのアクセスはサブサハラ・アフリカ地域が最も遅れており、人口のわずか31%にとどまっています。新戦略「ブロードバンドでアフリカを結ぶ」が2021年までの接続数倍増と、2030年までにアフリカ大陸でのアクセスの完全普及を目指しています。



13. はしかの大流行により、予防接種の不備が露呈

世界保健機関(WHO)の暫定データによると、2019年11月5日、はしかの報告数は前年の300%増となり、いくつかの国では大流行が見られました。2018年の報告数は33万3,445件でしたが、2019年11月5日現在、世界全体で41万3,308件が報告されたのに加え、コンゴ民主共和国で25万件が報告されました。2019年12月、世界銀行はサモアで拡大中のはしか大流行に対し、政府による緊急対策を支援するため350万ドルを提供しました。サモアでは、はしかの予防接種率が2017年の58%から2018年はわずか31%に大きく落ち込んだため、保健システムを強化する必要が生じ、930万ドルのグラントが提供されました。今回の緊急支援は、これに追加する形で行われました。

世界全体で、生後12~23カ月の幼児に対するはしかの予防接種率は、1993年の70%から2018年は86%に増えました。にもかかわらず、2010~17年にはしかワクチンの第1回目の投与を受けなかった子供は世界で1億6,900万人(平均すると年間2,110万人)に上りました。WHOによると、2018年にはしかの影響が特に深刻だった国はコンゴ民主共和国、リベリア、マダガスカル、ソマリア、ウクライナで、合わせて推定14万人が命を落としました



14. 過去20年間に世界の最貧国で大きな進歩

世界の最貧国は過去20年間にめざましい進歩を見せました。顕著な例としては、極度の貧困率は50%以上から約30%に、子供の死亡率は約14%から7%に、それぞれ低下しましたし、電力アクセスは57%増えました。さらに、少なくとも基本的な飲料水と衛生設備を使える人の割合は、それぞれ22%と41%増えました。

1960年以降、IDAは113カ国に3,910億ドル以上を提供してきました。2019年12月13日に行われた最新の増資においては、国際社会が76の最貧困国の人々のニーズを満たし、経済成長を促進し、気候変動や自然災害への強靭性を強化するため、820億ドルの支援を誓約しました。




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