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特集 2019年12月2日

都市の低所得層が住む地域のインフラやサービスの改善、生計向上に向けて~途上国の政府関係者らが福岡の屋台やアメ横を訪問

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ハイライト

  • 今後数十年で、都市におけるインフォーマルな居住地域*の拡大が予測されています。東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、この課題に対処するため、都市開発実務者向け対話型研修(テクニカル・ディープ・ダイブ:TDDs)を開催しました。*訳注:インフォーマルな居住地域とは、「個人が自分名義で登録されていない土地や建物、公共の土地、または他の個人の土地に住んでいる地域」を指します。(国連ハビタットによる定義)
  • 日本の都市改善プロジェクトの事例が共有され、世界の専門家たちはインフォーマルなコミュニティと積極的に関わり、権限を与えていく必要性を強調しました。
  • 途上国からの参加者たちは自国の経験を共有し合い、住居や雇用へのアクセスを改善し、都市との関わりを高めていく方法について議論しました。

2019年12月2日~6日

インフォーマルなコミュニティには、何百万人もの都市住民が生活しています

世界的に見ると、インフォーマルな居住地域に住む人口は推定10億人に上り、2050年までにその数は3倍の30億人以上に膨れ上がると予測されています。このような地域では、人々は、低品質の住宅に、大人数が密集するような形で生活しています。

こうした地域に住む人たちの多くは、いわゆるインフォーマルセクターに属し、物売りや低技能・低賃金の職に就き、社会保険や社会的な保護を受けていません。都市住民の誰もが住みやすく、排除されない社会をつくるためには、都市部の貧困層の住環境を改善していくことが不可欠です。

コミュニティへの働きかけ:都市の貧困層の暮らしを改善するために

TDLCは2019年12月2日~6日に、日本や各国の専門家や実務家を迎え、低所得者層が住む地域のインフラやサービス、生計の改善をテーマとしたTDD研修を開催しました。このTDD研修には、世界から11カ国(コンゴ民主共和国、ウガンダ、インドネシア、ミャンマー、ボリビア、ブラジル、コロンビア、メキシコ、エジプト、ジブチ、パキスタン)の政府関係者や実務者が参加者として来日しました。

TDD研修では、都市改善プロジェクトを実施する際には、技術的知識、関心、意欲など、コミュニティに住む人々の視点を取り入れる必要性が繰り返し言及されました。ソムスーク・ブーンヤバンチャ居住権のためのアジア連合(ACHR) 議長は、急速な都市化の結果インフォーマルな地域は立ち退きが頻繁に発生し、コミュニティの弱体化につながっていると指摘しました。こうした問題に取り組むためには、自治体が積極的に都市の貧困層を巻き込みながら、都市の課題を理解していく必要があります。人々の参加がコミュニティに権限を与え、地域のインフラやサービスを向上させるきっかけになります。


"都市機能を向上させていくには、市民の健康促進、生計手段の創出、住居改善のための民間投資の誘導、交通機関や雇用へのアクセスの向上、犯罪や暴力の撲滅等に取り組むことが不可欠です。 "
ジュディ・ ベーカー
都市の貧困・住宅供給、グローバルリード、世界銀行

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都市のインフォーマルなビジネスを支援する重要性について語るハーバード大学ケネディスクールのマーサ・チェン博士。写真:世界銀行グループ
ハーバード大学ケネディスクールの公共政策学のマーサ・チェン博士は、インフォーマルな労働者が世界の労働人口の60%以上を占めていることを認識し、支援の重要性を強調しました。インフォーマルな居住地域の問題に取り組む際、都市がまずすべきことは、貧困層の法的権利や代表権、公共財へのアクセスの確保を支援しながら、自宅が職場になりがちな彼ら特有の課題を理解するよう努めることです。

日本の事例報告:都市のストリートマーケットと屋台のフォーマル化

TDD研修では、日本の代表者が地方都市における整備プロジェクトの事例を発表しました。福岡市の屋台選定委員会のメンバーで、同市に拠点を置くシンクタンクの最高経営責任者(CEO)八尋 和郎氏は、市内の屋台がフォーマル化された流れを説明。その上で、インフォーマルなビジネスを守るため、都市が新たなガイドラインを提供する必要があると強調しました。また、スタートアップ企業の育成も重要で、福岡市では現在、若手シェフを招いて移動式の屋台を立ち上げるなど、地域の屋台文化の向上と多様化に取り組んでいます。

また、参加者たちは、第二次世界大戦後にインフォーマルな市場として始まり、今日では日本で最も人気がある商店街の一つである東京のアメヤ横丁(アメ横) を訪れました。アメ横商店街連合会の星野勲会長によると、仮設店舗のための代替地を確保することで、再開発を加速させたと語りました。アメ横の視察を通じ、参加者は、土地の登記や歩行者の流れを考慮した開発の重要性について活発な意見を交わしました。

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TDD研修の参加者に商店街の歴史を紹介するアメ横商店街連合会の星野勲会長。写真:世界銀行グループ

TDD研修を通じて、参加者たちは自国の経験を共有しました。それらの議論から得た重要な教訓として、開発途上国では中間層が手頃な価格の住宅をほとんど買い占めていることから、低所得層と中間層のための住宅計画を合わせて検討していく必要性が挙げられました。また、こうした住宅問題の解決には、雇用創出も重要になります。

TDD 研修は、TDLCの代表的な実践的知識共有プログラムです。約1週間のセッションでは、専門家によるパネルディスカッション 、現地視察、参加者同士のつながりを通じて都市に関連する課題に向き合い、世界と日本の成功事例を活用して、途上国における世界銀行のプロジェクトに適用できる行動計画の策定につなげます。



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