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特集 2019年10月25日

日本の知見を活用したダッカ旧市街における公共空間の活性化

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要点

  • 東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、中長期の技術協力を通じて、世界銀行の融資事業であるダッカの公共空間活性化プロジェクトを支援しています。
  • 本事業では、ダッカ旧市街の長期的な住みやすさ向上のために、20のコミュニティセンターの再生を支援し、エリア開発を行っています。
  • 本技術協力支援を通じて、TDLCのチームは、気候変動に対応可能な柔軟性のある建物、持続可能で包括的な開発、運営・維持管理の戦略などのガイドラインが含まれたデザインガイドを作成しました。

2019年10月25-29日

公共空間:見過ごされている資産

公共空間は、通常、都市の総面積の約3分の1を占めています。しかし、その規模にもかかわらず、これらの資産は十分な設計や管理がされずに、見過ごされていることが多いのが現状です。他方で、十分な設計のもと活用された公共空間は、価値を生み出し、住みやすさの向上など、都市にとって多大な便益をもたらします。——公共空間には、大きな可能性が秘められています。

2019年、ダッカ・サウス・シティ・コーポレーション(DSCC)は、ダッカにおける近隣コミュニティ改善事業(DCNUP)のために世界銀行から1億5,000万ドルの融資を受けました。本事業の目的は、ダッカ旧市街にある20のコミュニティセンターを再生することで公共空間の質を高め、都市サービスを改善することにあります。コミュニティセンターへの投資は、周辺地域に大きな社会的、経済的、環境的影響をもたらす貴重な機会といえます。

日本の経験を活かした公共空間の設計と運営

ここ数十年で人口動態の劇的な変化を経験した日本では、経済成長、社会的一体性や活性化を促進するため、公共資産の管理に関する実践的な知識が豊富に蓄積されてきました。

DSCCは以前、TDLCが主催する「公共交通指向型開発とエリア特化型の公共空間整備」をテーマとした都市開発実務者向け対話型研修 (TDD)に参加しました。この経験をもとに、DSCCはTDLCに新たな資金調達プロジェクト運営に関する技術協力を依頼しました。

これを受け、TDLCは、日本国内および世界銀行の専門家のネットワークを活用して、建築家チームを編成し、DSCCのグリーンビルディング設計、資産管理、質の高いインフラ投資の原則の適用、運用および保守点検を見据えた計画づくりについて助言を提供しました。

次世代型コミュニティセンターに向けたビジョンの設定

TDLCの専門家チームは、複数回の現地視察や打ち合わせを経て、ダッカ旧市街の価値観を尊重しつつも、持続可能で、強靭かつ社会的包摂性に富んだ開発に重点を置く方針をもとに、DSCCのためのガイドブックを作成しました。

TDLCのチームは、まず、地域文化や価値観を表すコミュニティセンターのビジョンを設定し、現在と将来のニーズの両方に目を向けることから作業を開始しました。ダッカ旧市街には独特の歴史と活気に満ちた雰囲気があり、プロジェクトの設計はこれらの資産を反映させるよう考慮されました。


"TDLCの専門家とのディスカッションやセッションを通じて、ダッカ旧市街の美しさを知ることができました。私たちは、活気に満ちた文化、忙しく混沌とした通り、そして魅力的な人々を愛しており、地域の多様性と寛大さを大切にしています。公立病院のように簡素ながら快適さを備えています。私たちは、歴史的な場所、既存の祭事、社会活動を維持したまま、ダッカ旧市街を再生したいと考えています。"
第2回目の技術協力ミッションにおけるワークショップ参加者

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近隣地域を考えるワークショップの立ち上げ会議の様子
写真:世界銀行グループ

次の段階では、包括的で未来志向のデザインを用いながら、多様で進化し続ける地域のニーズを確実に満たすための開発手法について話し合いました。ガイドブックの提案には、維持が簡単で、地域社会のニーズに応えられる気候対応型の建物が含まれていました。TDLCのチームは、適切な技術選定のための参考資料を提供しながら、洪水や地震のリスクを最小限に抑えつつエネルギー効率を向上させるための建設技術のガイドラインも作成しました。

最後に、コスト面での検討がされました。運用および保守点検のコストは、一般的に初期投資コストの3~4倍にもなり、建物の規模に応じて拡大していくとされています。人間工学に基づいた開発を追求しつつも、地域空間の特性にも合致した運用コストの検討が重要となります。今回は、専門家チームが新たな収益確保の方法を提案し、DSCCはコスト面でも配慮した構造物の利用計画を立案することができました。

TDLCの融資事業向け技術協力は、日本の専門家と世界銀行の知見を活用し、主に「都市開発実務者向け対話型研修(TDD)」のフォローアップとして、途上国の複雑な都市開発の課題に対応するための専門知識や技術支援を提供しています。



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