2019年9月16日〜17日
ブラジル、サンパウロ
背景
公共交通指向型開発(TOD)は、土地利用、公共交通計画、都市デザイン、都市再生、不動産開発、資金調達、土地開発利益還元およびインフラ整備の要素を一体化することにより、持続可能な都市開発が実現します。TODは複雑であるため、あらゆる都市システムに関連する力学、すなわち不動産経済、交通ルート、インフラ設計、土地利用計画およびゾーニング、都市再生による地元経済の発展、ならびに構想の可能性を最大限引き出す都市デザインを理解することが不可欠です。
世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)は、開発途上国における融資および技術支援プロジェクトや、日本で開催された分野別実務者研修会合(TDD)などの知識共有を通じて、総合的な都市・公共交通開発を支援しています。この支援の一環として、2019年9月16日~17日の2日間、ブラジルのサンパウロで開催された「ラテンアメリカの都市における総合的な都市開発および公共交通プロジェクトの実施」に関するシティ・アカデミー(ワークショップ)を開催し、東急株式会社からTODの専門家として太田雅文氏に発表していただきました。シティ・アカデミーのTODをテーマとしたセッションは、政府指導者、国際機関、国際的な専門家および民間セクターが一堂に会し、TODアプローチによる都市の持続可能な開発の道筋をどのように連携して評価、有効化、資金調達、計画、設計および実施できるかを探ることを目的として実施されました。
このシティ・アカデミーは、持続可能な都市のためのグローバル・プラットフォーム(GPSC)の第3回世界会議の一環として、サンパウロ市とブラジル国家持続可能都市プログラム が共同で開催し、世界40カ国以上から1,000人を超える参加者が一堂に会しています。
要旨
太田氏は東京におけるTODの事例を、田園調布、多摩、渋谷の各エリアを例に挙げて説明しました。これらのエリアは東急株式会社が運営する私鉄沿線に沿って大規模な住宅および商業スペースが開発されています。太田氏は発表の中で、(1)TODの成功は、鉄道、土地・都市開発および不動産開発に関わる公共事業体と民間セクターを含む、さまざまなステークホルダー間の調整にかかっている、(2)投資利益をあげられるように、交通機関の結節点周辺の都市および商業開発の規模と性質を慎重に決定する必要がある、と指摘しています。
日本は都市開発と統合したTODの先駆者であり、富山県や東京都の都市が成功例として挙げられます。TDLCは専門家を派遣することにより、世界中の実務者、特にラテンアメリカ・カリブ海地域諸国に関連する実務者に、日本の経験と専門知識を共有しています。今回は、TDLCのこれまでの取り組みと、これまでにTODに関するTDDを数回開催している経験から、民間セクターの専門家をを招聘することが可能となりました。東急株式会社は日本の大手民間鉄道会社であり、今回はその豊富な経験を学ぶまたとない機会となりました。
「渋谷における最近の公共交通指向型開発(TOD)プロジェクトは、TODプロジェクトの設計と実施において、複数のステークホルダー間の合意形成が不可欠であることを示す端的な事例です」−参加者
今後の計画
このワークショップは参加国に対し、TODにおける日本の経験を学び、自国で活用するための基礎を提供しました。この取り組みの成功を踏まえ、TDLCは今後も、積極的なアウトリーチ、運営支援、民間セクターの動員、専門家の派遣および知識共有を強化していく予定です。