インドでは地震、洪水、干ばつ、サイクロン、地滑りなど、さまざまな天災が頻繁に発生します。インドの国土の約6割でさまざまな震度の地震が発生しており、洪水と地滑り多発地域は12%にのぼります。インド政府は災害発生後の緊急事態対応から事前対応型への移行を目指し、災害対応準備とリスク低減のイニシアティブ導入に取り組んできました。しかし、政府職員、専門職員、災害対応部隊などの関係者の対応能力が低いため、対処メカニズムに限界があります。
10年以上にわたり、世界銀行は災害に対する効果的対応に関してインド政府を支援してきました。これをさらに促進する動きとして、国際的な経験から学び、インドにベストプラクティスを導入したいというインド諸州と中央政府からの強い要望があります。そこで日本-世界銀行防災共同プログラムは、「インドにおける防災サービス向上 技術協力プロジェクト」の一環として、インド諸州での防災能力強化を支援しています。
この技術協力の下で、世界銀行東京防災ハブは消防庁、兵庫県、神戸市と共同で、6日間の緊急事態準備・対応訓練プログラムを実施しました。研修と知見交換を兼ねたこのプログラムは、オディッサ、アンドラ・プラデシュ、ウッタラカンド、タミル・ナードゥ、ポンディシェリ、グジャラト州の防災当局職員代表団の18名に対し、以下の研修を実施しました。
i) 捜索救助専門職員の技能改善
ii) 捜索救助専門職員に対する最先端機材の紹介
iii) 捜索救助指導者養成訓練
神戸市消防局および兵庫県の協力のもと、2017年3月21日から3日間に亘って兵庫県広域防災センターにて実地捜索救助訓練を開催しました。3月24日には兵庫県危機管理室および神戸市役所にて消防庁、兵庫県、神戸市消防局から国や自治体における緊急事態準備・対応に関する制度や取組みに関する講義を受けました。また、神戸市消防局の管制室、危機管理室、および防災展示室を見学しました。代表団は兵庫県の『人と防災未来センター』を3月25日に訪問し、1995年の阪神淡路大震災以降に日本で導入された防災と復旧・復興への取組みについて学びました。
講義最終日には、研修を通して学んだ日本の防災に関する教訓や取組みを基に、州ごとのアクション計画を策定し、兵庫県防災監から貴重なコメントと閉会の挨拶を頂きました。視察団は本研修を通して、日本の危機管理に関する国と自治体の役割、特に神戸市や兵庫県が阪神淡路大震災から得た教訓をもとに改善された防災への取組みについて多くを学ぶことができました。
「この訓練は大変貴重な学習経験になり、基礎的な救助作業に触れることができました。消防士を訓練するための能力が向上できたと感じています。今後も能力向上に向けて、世界銀行の支援を求めたいと思います」-アンドラ・プラデシュ州災害対応・消防局K・サティアナラヤナ局長
東京防災ハブでは危機管理に関する知見共有プログラムを通じ、今後も継続してインドなど途上国の災害対応部隊の能力開発に関する取り組みを強化してゆきます。この知見共有プログラムでは、効果的で高度な機能を発揮する能力を備えた緊急事態準備・対応体制の理解と運用を向上するために、危機管理に関する日本の知識と専門技術を活用します。