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知見の連携を築く:日本の災害リスクファイナンス・保険および公共資産管理システムを学ぶためにベトナム代表団が訪日

2017年9月13日


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ベトナムは洪水、台風、干ばつ、土砂崩れなど、数々の自然災害に見舞われる深刻なリスクに直面しています。国土面積の約60%、人口の71%が台風と洪水のリスクにさらされています。洪水と台風による直接的な経済的損害額は年平均で 国内総生産の0.8% と推定され、これは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国間で3番目に高い比率です。

ベトナム政府のこれらの課題への取り組み、および自然・気候災害に対する公共資産財政リスク管理強化を支援する世界銀行の活動の一部として、災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)は、日本での知見共有と視察を行いました。2017年7月31日~8月4日の日程でベトナムの財務省、政府事務局、国会の幹部職員・実務者が訪日し、日本政府高官・実務者との間で知見と経験を議論しました。当視察は、スイス経済省経済事務局(SECO)支援による中所得国災害リスクファイナンス・保険プログラムと、途上国における防災の主流化を目的とする日本-世界銀行防災共同プログラムが資金支援を行いました。    

ベトナムにおける災害リスクファイナンス・保険

ベトナム政府は同国が直面する高い災害リスクを以前から認識し、災害対応に対するその場限りの事後の取り組みから、先を見越して災害・気候リスクを管理する事前の取り組みへの移行を目指してきました。その努力の一環として、ベトナムは自然災害による政府の財政負担を軽減するための長期リスクファイナンスメカニズムの強化を計画しています。自然災害が公共資産に与える影響は、同国の財政が抱える脆弱性の主な原因のひとつです。ベトナムは2017年6月の公共資産管理に関する法律改正により、保険を含む様々な財源・ファイナンスを組み合わせ、自然災害の被害を受けやすい公共資産を財政リスク管理手段に統合することを義務づけました。この改正法を踏まえ、財務省公共資産管理局は現在、現行公共資産管理データベースの改善・更新を実施中です。

災害リスクファイナンス・保険に関するベトナムと日本の知見共有

ベトナムと日本の間で行われたこの知見共有は、ベトナムの改正法下での財政リスク管理に関する法令・規則・組織整備に活用することを目的にしました。参加した日本とベトナムの代表団には以下の機会をもたらしました。

  •  災害リスクファイナンス・保険政策および自然災害に対する公共資産財政リスク管理の経験とグッドプラクティスを共有する
  • 道路、河川、鉄道、官公庁建物などの公共資産のデータベース管理を含め、災害リスクファイナンスと管理に関する課題と解決策について議論する
  • 被災地の公共資産の再建に関する経験から学ぶ

ベトナム代表団は、財務省および同省の関東財務局と東北財務局、国土交通省および同省の近畿地方整備局、石巻市、日本損害保険協会、東京メトロなど、日本のさまざまな政府・自治体、民間セクターとの間で意見交換を行いました。

日本の財務省は公共資産に関する災害リスクファイナンス・保険政策の概要を紹介し、事前の災害ファイナンスメカニズムに加え、自然災害に対して強靭な質の高いインフラの重要性を強調しました。さらに、国有財産管理のための法律と制度の枠組み、および国有財産管理システムについて説明しました。加えて、2017年5月5日に横浜で開催された第20回ASEAN+3財務大臣・中央銀行総裁会議の共同声明で歓迎された東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF)をはじめ、地域内のリスク・プーリング構想も紹介しました。日本の財務省はベトナム財務省に対し、ベトナムの既存の災害リスクファイナンス手段を補い、財政の強靭性を強化するための選択肢として、SEADRIF加盟の可能性を検討するよう提案しました。

国土交通省はデータベース管理を含む重要なインフラ資産管理を取り上げました。代表団は、日本の財務省財務局および国土交通省地方整備局との会合で、公共資産管理において地方支分部局が果たす役割を学びました。日本損害保険協会はインフラ資産への保険における経験を紹介し、ベトナムでの公共資産保険メカニズムの構築方法について代表団に助言をしました。東京メトロからは、東京やハノイのような都市部における効率的で強靭な交通システムの役割を説明しました。


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現地視察は、日本の災害から身をもって得た知見・経験を共有する大変有益な学習の場となりました。代表団は東京臨海防災公園と京都市防災センターで、災害リスクの予防と低減に関する日本政府と地方自治体の啓発活動に関する説明を受けました。2011年の東日本大震災と津波で被災した地方の1つである宮城県石巻市では、代表団は「よりよい復興」というコンセプトを実現しようとする現地を訪問し、津波発生時に避難場所の役割も果たす自治体の施設、移転後の住宅、買い物客や観光客と地域産業を結びつける水産物市場、復興計画を支え、地震と津波に関する石巻市の経験を将来の世代に伝えるコミュニティセンターを見学しました。


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訪問の最後に、ベトナム財務省公共資産管理局局長のグエン・タン・ティン代表団団長は次のように感想を述べました。


" 今回の視察により、防災のための財政リスク管理の促進と実施、および公共資産データベースシステムのアップグレードの進め方に関する考え方を見直し、確認することができました。私を含む代表団のメンバー全員が、多数の有用な知識を得ると同時に、印象的な経験をし、感銘を受けました。これらは、私たちが公共資産の災害リスク管理に関する政策と戦略を整備する上で、大いに役立つと思います。 "

中尾泰久財務省副財務官は次のように述べました。


" ベトナム代表団の皆さんとの長時間に渡る活発な議論に感銘を受けました。効果的な財政メカニズムを通じた防災は、ベトナムと日本の両国にとり、喫緊かつ優先度の高い政策課題です。世界銀行の助けを借り、二国間およびAPECやASEAN+3などの多国間の両面で、今後も連絡を取り合い協力していくことを期待しています。 "

代表団のメンバーは、さらなる企画と活動のためのさまざまな考えをベトナムに持ち帰り、改正法体系下でそれらを応用し、規則の整備、公共資産管理の強化、公共資産データベースのアップグレードを行うことに意欲を燃やしています。さらに10月には、ベトナム財務省主催のベトナム財政会議で、災害に対する財政リスク管理を含む公共資産管理システムの強化策が協議されます。ベトナム財務省はこの会議で、ベトナム国内のより広範な関係者を対象として、日本の経験から学んだことを含め、このアジェンダに関する意識を高めることを目指しています。

世界銀行グループの災害リスクファイナンス・保険プログラムについて

災害リスクファイナンス・保険プログラム(DRFIP)は、災害・気候問題の打撃により生じるおそれがある膨大なコストとの途上国の取り組みを支援します。DRFIPは気候問題と災害によるリスクに対する包括的財政保護戦略の策定と実施を支援するために、世界の50カ国以上に分析・助言サービス、会議開催サービス、金融サービスを提供します。災害リスクファイナンスについて紹介する動画はこちらでご覧いただけます。

詳しい情報はhttps://www.worldbank.org/drfiでご覧いただけます。

世界銀行-SECO中所得国災害リスクファイナンス・保険プログラムについて

スイスの経済省経済事務局(SECO)と世界銀行の災害リスクファイナンス・保険プログラムは、2012年以来、中所得国における災害に対する財政の強靭性の向上を支援する共同プログラムを進めています。このプログラムは複数の中所得国に対し、自然災害に対する公共財政管理についてそれぞれの事情に応じた助言サービスと組織・制度面での能力整備を提供します。このプログラムは、世界銀行災害リスクファイナンス・保険プログラムが管理・実施しています。

日本-世界銀行防災共同プログラムと東京防災ハブについて

日本政府と世界銀行は、2014年2月に「日本-世界銀行防災共同プログラム」を立ち上げ、世界銀行東京防災ハブを通じて、日本の知見、技術、経験と途上国のニーズとのマッチングの推進を行っています。世界銀行東京防災ハブは、防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)の管理のもと、仙台レポートに記されたDRM枠組みの4つの重点項目に従い、技術援助、パイロット事業、テーマ別のイニシアティブ、知見の普及、能力整備の支援を行っています。

Japan-World Bank Program for Mainstreaming Disaster Risk Management in Developing Countries







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