概要
「持続可能な生計プロジェクトII」(2008-2012)は、3段階から成るプログラムの第2段階に当たり、コミュニティの脆弱性を軽減する組織・制度のメカニズムを全国に拡大することにより、モンゴルの農民が持続可能で安定した生活を営めるようにすることを目指しています。
このプロジェクトは2008年のスタート以来、合計176万3432人、50万5745世帯に恩恵をもたらしてきました。受益者のうち、50%以上が女性、16%が最貧困層、19%が牧畜業でした。
課題
モンゴル経済は商品セクターの成長によって急成長を遂げましたが、突発的な変化に対する耐性は今も低いままです。2010年のゾド(厳冬)では家畜の20%以上が失われ、1999年と2001年にも異常気象によって家畜の30%が犠牲になりました。このため貧困削減は達成されたとはいえ、それに見合った恩恵は得られていません。貧困率は都市部が26.9%であるのに対し、農村部では46.6%に達しています。
社会サービスの提供も引き続き懸案事項です。アクセスがなく、教育の質が低く、貧しいがために、農村部の子どもたちが学校教育を受ける期間は短めです。近年、金融サービスは強化されましたが、農村住民の多くは依然として、脆弱性を軽減し、経済的資産を築く機会となり得る与信枠などのサービスを利用できないでいます。
このような問題は、都心部、とくに首都ウランバートルへの移住者の増加という事態を引き起こしています。ウランバートルでは、市街地の周縁部にスラム状のゲル(テント型の移動式住居)が立ち並ぶ地区が広がり、新たな開発課題となっています。
アプローチ
本プロジェクトは、(1)牧畜リスク管理、(2)コミュニティ・イニシアティブ、(3)マイクロファイナンス開発という大きく3つのコンポーネントで構成されています。
- 牧畜リスク管理:農家、とくに牧畜農家の能力強化に継続的に取り組むことで、彼らが自分たちの生計を脅かす可能性のある環境、金融、社会リスク等に対処できるようにします。
- コミュニティ・イニシアティブ:住民自身が小規模な公共施設の改善プロジェクトを全国で発掘・実施できるようにするための、効果的で、透明性が高く、社会的弱者に配慮したメカニズムを確立します。優先順位を定め、需要主導型のプロジェクトを実施するためには、地域住民の参加は欠かせません。地域住民はプロジェクトの監督、モニタリング、プロジェクト完了後の影響評価でも重要な役割を果たします。プロジェクトの審査と承認は中央ではなく、地域レベルで行われます。サブプロジェクにはすべて、コミュニティと自治体が共同で資金を提供します。
- マイクロファイナンス開発:財政的・制度的に持続可能なマイクロファイナンス・サービスを、農村部の貧しく脆弱な人々も利用できるようにします。
成果
本プロジェクトの活動は、農村コミュニティに影響を及ぼす数多くのセクターで進められれています。主な成果は以下の通りです。
牧畜管理
- 冬期の備えを行う農家が57%増加。
- 3万6000軒以上の牧畜農家で牧畜管理スキルが向上。
マイクロファイナンス
- 3万9389件の融資が実行され、18万1470人に直接的・間接的な恩恵。
- マイクロファイナンス開発基金からの転借人の96%が、融資によって生活が向上したと報告。
保健
- 農村部の1,088の病院が改修され、以前は州都の病院でしか利用できなかった医療機器の購入資金を獲得。定期健診や治療のために長距離を移動する必要がなくなり、時間も節約できるとして農村住民にも好評。
教育
- 学生寮(遊牧民社会では必須)に入る子どもの数が169%増加、中退率は82%減少、幼稚園入園率は69%上昇。
インフラ
- 人間の飲料水用に68の井戸を建設、13の井戸にろ過設備を設置、97の井戸を改修。
- 公共施設への電力供給のために、再生可能エネルギー・プロジェクトを実施。
- 34の主要ソム(村)の中心部にある学校、企業、インターネット・カフェで、インターネット・サービスが利用可能に。