重慶都市部の環境保護プロジェクト
(2000-2008年)
課題
重慶は、中国南西部のふたつの大きな川の合流点にある、成長著しい巨大都市です。農村部といくつもの小さな町を合わせると、重慶自治体には約3200万人が暮らしています。1990年代終盤にこのプロジェクトが準備されたとき、給水は十分でしたが、都市中心部の廃水処理システムは大きく後れを取っていました。家庭排水および工業廃水が未処理のまま600以上の地点で直接揚子江に放出されており、給水の質を脅かしていました。 固形廃棄物は非衛生的な屋外の土地に廃棄されるか、非合法的かつ手当たり次第に捨てられていました。
アプローチ
- 当初、重慶自治体は流域の広い範囲に21の汚水処理施設を建設する予定でしたが、それはきわめて高くつくだけでなく、好景気に沸く都市で貴重な土地を占有することになり、悪臭を放つガスを排出して近隣住民の生活の質を低下させるスキムでした。
- 世銀プロジェクトは、マスター・プラン修正を提案し、河岸での汚水の放流を一切封じ、市の中心部から15キロ下流にある2つの大規模な汚水処理施設に汚水を流すというものでした。
- 同プロジェクトでは都市環境の定義が拡大され、史跡である湖広商工会の建物も含まれるようになり、急な変化のの中でも市の住みやすさが改善されました。
結果
急成長中の重慶市に近代的な汚水・廃棄物処理施設を建設
- 水質は2003年以降着実に改善してきています。2006年、市の環境保護局の収集したデータでは、重慶の川の水のうち90%が飲料水源として第II基準を満たしており、第III基準は100%が満たしています(IからVまでの5段階があり、IIIは処理後飲料として安全)。
- 嘉陵江と揚子江流域のさまざまな監視地点において有機性廃棄物の指標としてCODとBODの濃度を測定したところ、汚染度は、汚染物質流入が大幅に増え、揚子江の流れが減速したにもかかわらず、やや低下、または少なくとも横ばいとなっていました。
- 地区のゴミ捨て場や場当たり的で危険なごみ廃棄所が、国際基準を満たした近代的かつ衛生的な廃棄物処理場として生まれ変わり、多くの地区で都市環境が改善され、重慶を流れる川の清浄度が改善しました。新しい廃棄物処理場は、1日1,500-2,000トンの処理能力があります。
- 重慶では現在、家庭・工場からの汚水の大半を、4本の汚水遮集菅と2箇所の大規模下水処理場で集めて処理しています。これら新設の処理場では一日に90万立方メートルの汚水を処理していますが、こうした汚水は、この処理場がなければ川に直接放出されていたでしょう。世銀の資金を受けた処理場は、2008年のプロジェクト完了と共にフル操業が可能になり、重慶市の下水の90%を処理するようになる予定です。
- それまで川面に浮いていた屑が減るなど、川の外見も向上しました。
- みごとに修復された商工会の建物は、文化資産として観光名所となり、重慶市の貧困街における都市再生と開発の中心となっています。
世銀の貢献
- 修正されたマスター・プランにより、重要な貯蓄が生まれ、重慶市民の生活の質が向上しました。
- 世銀のグループ機関で信用力のある国々を支援するIBRDからの貸し出しは2億ドルに上りました。プロジェクトが承認された2000年当時、中国では大規模インフラへの投資が不足していたので、この貸し出しは大きな意味を持つものでした。建設コストが予想を下回ったことと、中央政府からの融資があったことで、7000万ドルが貯蓄に回されました。
- 2002年、貸し出しを原資とするこうした貯蓄は、広大な重慶自治体の中で農村部と都市部の格差を埋めるための資金に充てられました。この問題は現在、中国政府の最優先課題となっています。8つの小さな郡における生活環境(水道、道路、洪水管理)の向上が試行された後、2007年に1億8000万ドルのIBRD貸し出しが承認され、後続の重慶小都市インフラ改善プロジェクトに充てられました。
- 上下水道業務が公社から民間企業に移管され、料金戦略が改定されるのを支援しました。料金を値上げすることにより、公益事業が持続可能な軌道に乗り、稼動、保守、投資のための資源がもたらされました。
- 近代的な廃棄物処理施設と汚水処理場の稼動に関する専門的トレーニングなど、管理基準のトレーニングと更新を行いました。
- 重慶ならではの史跡に対する意識を高め、重慶が文化都市として注目を集めるのを支援しました。
- 日本政府の拠出するグラント(PHRD日本開発政策・人材育成基金)は、例えば揚子江に遮集菅を通すという困難な作業について技術協力を行うなど、プロジェクトの実施に充てられました。
- イタリア政府は、商工会の建物修復に向け技術協力と設計のためのグラントを提供しました。
次のステップ
- 重慶は内陸都市として中国最大となり、国が都市化と貧困脱却を図る中、めまぐるしいスピードで成長を続けています。重慶市内で増え続ける生ごみと廃水に対応するには、さらに汚水処理施設と廃棄物処理場が必要になるでしょう。
- 2007年、中国では中央政府が中国西部における農村部と都市部のギャップ解消を図るアプローチを試行するに当たり、重慶自治体を対象として選択しました。世界銀行は、後続の小都市インフラ改善プロジェクトを通じて、公益事業とサービスの対象範囲を貧しい小都市や町に拡大するのを支援しています。