世界銀行は2024年5月6日、新報告書「住みやすい地球の実現に向けて:食農システムにおけるネットゼロ・エミッションの達成」(Recipe for a Livable Planet: Achieving Net Zero Emissions in the Agrifood System)を発表しました。同報告書によると、世界の食農システムには、増加する人口への食料供給を続けながらも、割安かつ簡単な取組みを通じて、世界の温室効果ガス排出量の約3分の1を削減できる大きな可能性があります。同報告書は、食料供給の安定化、気候変動に対応可能な食料システムの実現、移行期間中の脆弱層保護に向けて、すべての国が講じることのできる措置を説明しています。同報告書は、食農システムでは、低コストでの気候変動対策が可能であるにもかかわらず、その大きな潜在性は未だ活用されていないと指摘しています。他のセクターと異なり、排出量を削減し、大気中の炭素を自然に除去することで、気候変動にとてつもない影響を与える可能性を見込めるからです。さらに同報告書は、気候目標の達成は国によって方法が異なることから、選択肢としていくつものソリューションを提示しています。
今回のセミナーでは、同報告書を執筆したウィリアム・サットン世界銀行気候スマート農業グローバルリードとアレクサンダー・ロッチ世界銀行上級気候変動専門官の来日の機会を捉え、同報告書の主なポイントをご紹介するセミナーを開催します。使用言語は英語(日本語への通訳なし)で、ハイブリッド形式(会場での対面参加またはオンライン参加)で実施します。
スピーカー
ウィリアム・サットン
世界銀行 気候スマート農業グローバルリード
25年以上にわたって、農業、環境、気候変動はじめ様々なセクターを統合し持続可能な開発を推進し、東アジア・太平洋地域、ヨーロッパ・中央アジア地域、サブサハラ・アフリカ地域、中東・北アフリカ地域における融資業務・分析業務に従事してきた。直近では、革新的な取り組みである湖北省スマート・持続可能な農業プロジェクトをはじめ中国における気候スマート・持続可能な農業プログラムを統括し、南東アジア5か国では農業・食料システムにおけるエルニーニョ南方振動に対する強靭性の構築のための取り組みを主導。Looking Beyond the Horizon: How Climate Change Impacts and Adaptation Responses Will Reshape Agriculture in Eastern Europe and Central Asiaはじめ、書籍、報告書、学術論文を多数発表している。気候変動と農業分野における革新的な取り組みに対し、2011年世界銀行グリーンアワードを受賞。カルフォルニア大学デイビス校で農業・資源経済学博士号を取得。
アレクサンダー・ロッチ
世界銀行 上級気候ファイナンス専門官
現職では農業・食料グローバルプラクティスにおいて気候ファイナンス、気候分析、食糧システムトランスフォメーションに関する戦略的関与を主導している。現職以前は、気候変動グループにおいて自然を基盤とした解決策(Nature-based Solutions)、森林、土地利用に関する業務を主導。また、ベトナムのハノイ駐在中は、環境・自然資源・ブルーエコノミーグローバルプラクティスによる森林伐採・森林破壊による排出の削減のための革新的管轄プログラム(innovative jurisdiction-wide programs)を主導。それ以前は、適応の経済分析、気候リスク管理、農業天候保険、気候不安定下における意思決定に関する業務に従事。2004年に世界銀行入行。それ以前は、アメリカ航空宇宙局、Esriに勤務。ボストン大学で地球システム科学博士号および地理学修士号、ベルリン大学で物理地理学学士号、フンボルト大学ベルリンで農業科学学士号を取得。