今回のセミナーでは、世界銀行グループがは1月6日に発表した報告書『世界経済見通し(GEP):低成長の余波(Global Economic Prospects: Spillovers amid Weak Growth)』をご紹介しました。冒頭、塚越保祐・世界銀行グループ駐日特別代表の挨拶の後、コーゼ局長が『世界経済見通し(GEP)』の概要をご紹介しました。同報告書では、主要新興市場の低成長は2016年の世界経済の成長にとって足かせとなるが、先進国が成長を加速させることから、2016年の経済成長率は2015年の2.4%から小幅ながら2.9%のペースまで上昇すると予測しています。過去10年間、世界経済の成長に大きく貢献してきた主要新興市場が軒並み低調気味であることは、貧困削減と繁栄の共有を達成する上での懸念材料であり、このあおりで途上国の成長も抑えられ、ようやく進んだ貧困削減の歩みが損なわれかねないと警告しています。なお、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については、世界貿易が活発化する可能性があることも指摘しています。続いて、吉野直行アジア開発銀行研究所所長が、現況の世界経済と主要新興市場の低成長の状況において求められる政策などについてコメントを行いました。
コーゼ局長が統括する開発見通し局では、『世界経済見通し(GEP)』を毎年1月と6月に発行する他、46品目の市場価格のモニタリングと予測を行う『一次産品市場の見通し(Commodity Markets Outlook)』を毎年1月、4月、7月、10月に、また、世界経済の概況をまとめた『グローバル・マンスリー(Global Monthly)』などの定期レポートを発行しています。
なお世界銀行とアジア経済研究所は2015年7月6日、セミナー「世界経済見通し(GEP):移行期の世界経済」を共催しました。
スピーカー
アイハン・コーゼ 世界銀行 開発経済総局(DEC) 開発見通し局長 |
世界銀行グループの開発見通し局長として、マクロ経済見通し・予想、金融フロー、商品市場に関する分析業務をとりまとめ、貧困撲滅と繁栄の共有の促進という世界銀行グループの2つの目標のモニタリングも主導。世界銀行の旗艦報告書である『世界経済見通し』(Global Economic Prospects)、『グローバル・モニタリング・レポート』(Global Monitoring Report)などの経済モニタリング報告の作成を統括。2014年6月の世界銀行入行前は国際通貨基金(IMF)に所属しており、調査局次長兼多数国間サーベイランス部次長、2014年版スピルオーバー報告書タスクフォース共同議長、ニカラグア2007~11年IMFプログラム事後評価担当チーフ、西半球局米国・カナダ担当デスク。シカゴ大学経営学大学院とINSEADで教鞭をとり、ブランダイズ大学国際経営学大学院助教授を歴任。マクロ経済・国際金融に関する著作多数。アイオワ大学経営学大学院経済学博士号、ビルケント大学産業工学士号を取得。トルコ出身。
当日の資料:Global Economic Prospects: Spillovers amid Weak Growth (PDF)
コメンテイター
吉野直行 アジア開発銀行研究所(ADBI)所長 |
米国ジョンズホプキンス大学大学院PhD(Economics), ニューヨーク州立大学助教授、パリ政治学院訪問教授、スウェーデン・ヨーテボリ大学名誉博士、マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルク名誉博士、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学訪問教授、関税・外国為替審議会会長、財政投融資分科会部会長、金融審議会会長などを歴任。2013年福澤賞。現在、アジア開発銀行研究所(ADBI)所長、慶應義塾大学名誉教授、金融庁金融研究センター顧問、放送大学客員教授、政策研究大学院大学客員教授。主な編著書に、Postal Savings and Fiscal Investment in Japan (Oxford University Press)、Small Savings Mobilization and Asian Economic Development (M.E.Sharpe)、Hometown Investment Trust Funds (Springer)、『社会と銀行』(放送大学教育振興会)、『これから日本経済の真実を語ろう』(東京書籍)など多数。
当日の資料:Comments for Global Economic Prospects Spillovers amid Weak Growth (PDF)
関連
報告書「世界経済見通し(GEP)」(英語全文)
プレスリリース「2016年、新興市場の回復不調が世界的成長の大きな足かせに」(日本語)