課題
ルワンダは内陸の小国です。人口密度は高く、なだらかな丘陵が続く肥沃な大地に1,250万人が暮らしています(2018年現在)。 近年、 ルワンダは目覚ましい成長と貧困削減を達成しつつあります。20年前はサブサハラ・アフリカ地域で最も貧しい国の一つでしたが、現在はアフリカ大陸で2番目に高い経済成長率を誇ります。2018年の国民1人当たり所得は800ドル前後に達し、20を超えるサブサハラ・アフリカ諸国がルワンダの後塵を拝しています。国際貧困ライン(1日1.90ドル)に基づく貧困率は、2001年の77.2%から2017年は55.5%に低下しました。しかし、この高い成長率をもってしても、極度の貧困撲滅と繁栄の共有促進は容易な目標ではありません。アフリカ大陸の高成長国と比べると、ルワンダでは成長が貧困削減と効果的に結びついていません。ルワンダは人間開発、特に保健とジェンダー平等の分野で大きく前進しましたが、人的資本指標(HCI)は0.37にとどまり、同等の所得水準を持つ国々を下回っています。主な原因は、5歳未満の子供の発育阻害率の高さ(38%)、中退率の高さ、そして学習の質の低さです。ルワンダの最重要課題は、貧困層に利益をもたらす成長を成し遂げることです。
アプローチ
この10年間に、ルワンダが達成した加速度的な貧困削減は、世界銀行がルワンダで続けてきた社会的保護に対する支援と密接に結びついています。世界銀行はルワンダの社会的保護の柱となっている「Vision 2020 Umurengeプログラム(VUP)」を、2009年から支援してきました。この支援は三つの開発政策支援プログラム(DPO)を通じて提供され、これまでの支援額は累計約5億ドルに上ります。2017年12月に完了した一連のDPOは、経営情報システム(MIS)、サービス提供システムの整備、組織・制度面の機能強化など、ルワンダの社会的保護政策全体を支える強力な土台づくりに貢献しました。
一連のDPOが成功した今も、世界銀行は投資プロジェクト融資(IPF)という新たな融資手段を通じて、ルワンダの社会的保護セクターに対する支援を続けています。本プロジェクトは、主に栄養や乳幼児の発達支援に関する野心的な政府目標に関連した分野で、効率の向上、説明責任と透明性の強化、新たな社会的保護施策の導入を推進し、人的資本の強化を促進しています。これらの支援は分析活動や技術協力といった追加資源によって補完され、プログラムの主要分野(乳幼児の発達支援、栄養、生計向上、モニタリング・評価)において、エビデンス基盤や学習と組織・制度の強化を促進しています。本プロジェクトは、IPFの条件付き現金給付(CCT)コンポーネントを通じて、保健・栄養サービスの利用を促進する一方(需要側)、もう一つの補完的なプロジェクトである「発育阻害軽減プロジェクト」を通じて、サービスの利用可能性と質を確保しています(供給側)。
成果
世界銀行は、一連の社会的保護支援プログラムを通じて、ルワンダの社会的保護制度、具体的には「Vision 2020 Umurengeプログラム(VUP)」が、対象となる脆弱層を確実に資するものとなるよう支援してきました。
- VUPが誕生した2008年以降、公共事業では2,200件を超えるプロジェクトが実施され、これらのプロジェクトを通じて80万超の世帯に雇用が提供され、4,000万日を超える有給雇用が創出されました。
- 公共事業プログラムの対象世帯は、2008年は30地区の1万8,304世帯でしたが、現在は(全416地区中)244地区の13万3,102世帯に広がり、その半数以上が女性を世帯主とする世帯です。
- 2016~17年度は、ジェンダーや児童に配慮した拡大公共事業コンポーネントが導入され、労働力に制限のある世帯(特に幼児等の扶養家族がいる世帯)に年間を通じて柔軟な勤務スケジュールを提供しています。現在の対象世帯は150地区の2万2,583世帯であり、その72%は女性を世帯主とする世帯です。
- 直接支援(現金給付)の対象世帯は、2009年の6,850世帯から全国の10万7,106世帯に広がりました(2019年4月現在)。
- VUPを構成する多様なコンポーネントを通じて、合計100万人超が便益を享受しています。
世界銀行グループの支援
国際開発協会(IDA)は、ルワンダにとって最大の公的開発援助の供与機関です。2019年9月2日現在、世界銀行グループは16件の全国プロジェクトを支援しており、コミットメントの純額は12億4,977万ドルです。地域プロジェクトは5件、コミットメントは総額2億5,525万ドルです。これらのプロジェクトの目的は、基本的インフラへのアクセス拡大から、対象都市における都市開発の強化、社会的保護制度の強化、発育阻害の軽減、農村世帯への電力供給まで、多岐にわたります。世界銀行は2008年以降、開発政策融資と投資プロジェクト融資の両方を通じて、社会的保護セクターに5億ドル以上のIDA資金を提供してきました。また、人的資本の課題を支援する枠組みを利用して、教育や保健、人的資本に関するセクター横断的な開発政策融資に約5億ドルのIDA資金やグラントを新たに提供し、社会セクターに対する既存の投資を補完しています。
国際金融公社(IFC)もルワンダで複数のプログラムを展開しています。プログラムの対象分野は大きく4つあり、資本・金融市場の開発、インフラと天然資源、製造・アグリビジネス・サービス、そして投資環境改革です。2019年6月現在、IFCの対ルワンダ投資は合計7,000万ドル、アドバイザリー・サービスは1,400万ドルです。ルワンダへの投資を促進するため、IFCはアフリカCEOフォーラム(2019年3月25~26日)を共催するなど、アフリカ諸国や世界中の投資家への働きかけを続けています。先日は国別民間セクター診断を完了し、アグリビジネスと住宅を今後の優先分野として特定しました。多数国間投資保証機関(MIGA)は「KivuWatt」プロジェクトを実施しています。本プロジェクトのグロスエクスポージャー総額は9,540万ドルです。
パートナー
世界銀行は、開発パートナー協調グループ(DPCG)の枠組みを通じて、ルワンダで活動する他の開発パートナー(国連やその他の多国間、二国間機関)と連携しています。2013年にルワンダ政府が定めた開発パートナー間の役割分担は、開発パートナー間の調整、連携、調和の支援と円滑化に貢献しています。世界銀行は各支援セクターにおいて、セクター作業部会やセクター内の専門作業部会に参加しています。
S例えば社会的保護セクターと保健セクターでは、慢性的な栄養不良の解消を目指す包括的なプログラムを支援するために、IDAの資金と「栄養の潜在力(Power of Nutrition)」やグローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)のグラントが組み合わされています。本プログラムの重点分野は、発育阻害率の高い地区、脆弱層、そして発育阻害の解消に決定的な役割を果たす生後1,000日間です。
本プログラムでは、8,000万ドルのIDA資金に加えて、「栄養の潜在力」が3,500万ドル(民間セクター資金を含む)、GFFが1,800万ドルを提供しました。世界銀行は、主に米国国際開発庁(USAID)、国連児童基金(UNICEF)、国際開発省(DFID)と連携しながら、本プログラムを推進しています。
今後の展望
世界銀行グループの対ルワンダ国別パートナー戦略は2020年度に完了します。現在、2021~25年度を対象とする新しい国別パートナーシップ枠組みの策定が、2019年に実施された世界銀行グループの体系的国別診断(SCD)、将来の成長の原動力に関するルワンダと世界銀行グループの共同報告書、「変革のための国家戦略」を参照しながら進められています。これらの文書は、ルワンダが持続可能な経済成長、貧困削減、繁栄の共有を達成するために優先的に対処すべき分野として、人的資本への投資、市場と民間セクターの育成、持続可能性への投資、強靱性の強化を挙げています。新しい世界銀行の対ルワンダ国別パートナーシップ枠組みでは、世界銀行が関与を強化すべき分野が共同で特定される予定です。
受益者
- ガサボ郡ンドゥバ地区で暮らすムカガサナ・ゴダンス(49歳)は、極度の貧困世帯で生活する健康な成人に有給雇用を提供するVUPの公共事業プログラムの卒業生です。彼女は基本的な金融教育や事業開発、経営スキルに関する研修も受講しました。「この研修は、私がこのプログラムから得た最大の資産です。」と彼女は言います。「自信がついただけでなく、利用できるサービスや機会がたくさんあり、それを使えば生活を改善できることを知りました。」彼女はこう付け加えます。「今は経済的に自立していると確信できますし、安心感もあります。私には、自分と家族の生活を支える力があります。」 彼女の2人の子供たちは今、大学に通っています。
- 83歳のエデュアルド・ンクンディは、妻や孫とニャマガベ郡で暮らしています。彼は働くことができない最貧困世帯を対象とするVUPの県支援コンポーネントの受益者です。「最初に支給された6万ルワンダ・フランで子豚を1匹買いました。子豚は成長し、6匹の子豚を産みました。そこで豚を売り、1頭の雌牛を飼いました。この牛のおかげで、今は牛乳や野菜畑用の堆肥が手に入ります。」