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世界食糧危機対応プログラム(GFRP)

2013年4月12日


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Ray Witlin/World Bank

世界銀行は2008年初頭に起きた食糧価格の急騰に対処するために、世界食糧危機対応プログラム(GFRP) を設立しました。これは国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA)による緊急融資に信託基金グラントを組み合わせたもので、途上国が目の前の食糧危機に対処できるよう支援すると共に、将来に備えて、危機対応力の強化につながるような農業政策を奨励しています。GFRPは合計16億ドルを超えるプロジェクトに資金を提供し、49か国(そのほとんどはアフリカ諸国)で6600万人の脆弱な人々を支援しました。

課題

2008年半ば、世界の主要食糧価格が急騰しました。世銀の食糧価格指数は、わずか数か月のうちに60%上昇し、トウモロコシ、コメ、小麦の国際価格は2007年半ばと比べて、それぞれ70%、180%、120%上昇しました。この突然の値上がりは予想外であり、途上国に与えた影響は甚大でした。世銀の試算によれば、この価格急騰によって低所得国では1億500万人が貧困から抜け出せなくなったか、新たに貧困に陥ったとみられています。

2008年以降、世界の食糧価格は2度にわたって急騰しました。世銀の食糧価格指数は2008年半ばから2010年半ばにかけて30%下がった後、2011年初頭に急騰し、2011年2月には再び2008年の最高値に達しました。さらに2012年半ば、世界の食糧価格はふたたび上昇を始めました。世銀の食糧価格指数は2012年1月から8月にかけて14%上昇し、2012年7月にはトウモロコシの世界価格が史上最高値を更新しました。これは2008年と2011年の最高値を上回るもので、わずかひと月の間に45%も値上がりしたことになります。

この2度目の価格上昇も途上国に悪影響を与えましたが、2008年の危機と比べると、その影響は概して小さなものにとどまりました。その大きな理由としては、多くの途上国が2008年以降に穀物の生産を増やし、輸入手形を減らしていたこと、燃料価格と肥料価格が2008年よりも低い水準にあったことなどが挙げられます。各国の対応も機敏でした。2011年に起きた食糧価格の急騰は、低・中所得国の4000-4400万人に影響を及ぼしたと推定されています。

幅広い農産物の価格が長期にわたって高止まりしていることは、世界の食糧供給システムに構造的問題があることをはっきりと示しています。2011年春の開発委員会報告書、G20に提出された国際機関の共同報告書、そして世銀のグローバル・モニタリング・レポート (GMR)2012が示唆しているように、食糧価格の高騰と変動は今や長期的な現象となっています。

需要の増大が見込まれているにもかかわらず、穀物の備蓄率が依然として低い水準にあること、世界の食糧システムそのものが突然の変化に弱い構造になっていることなど、供給面で不安要素が残ることから、価格の高騰と変動はしばらくの間続くものと見られています。この長期的な現象には、対処方法もまた長期的なものでなければなりません。

解決策

2008年は、1960-70年代の食糧危機の時代をほうふつとさせる年でした。将来的に新たな問題を生み出すことなく食糧価格危機に対処していくために、途上国は速やかな財政支援と迅速な政策助言を求めていました。これを受けて、世銀が設立したのが世界食糧危機対応プログラム(GFRP) です。

GFRPは各国に1970年代の食糧危機とは違う解決策を提供しました。1970年代の危機では、国境の封鎖、食糧・投入市場への政府介入といった政策が実行された結果、小自作農による小規模な農業投資と市場主導の大規模な農業投資の両方が長期にわたって妨げられました。

2008年には、GFRPの下で社会的保護の促進、危機の影響を受けた国々の財政強化、短・中期的な食糧生産量の維持といった緊急支援活動が展開され、最も貧しく脆弱な国々にグラント資金が提供されました。時と共に、各国の関心は社会的保護や食糧生産システムを強化し、変化に柔軟に対処できる体制をつくることへと移り、GFRPグラントのあり方もまた、これらの需要に応えるものへと進化しました。

GFRPは、世銀が有する広範な専門知識を活かしながら、4つの分野で独立した技術協力、開発政策融資、投資プロジェクトに資金を提供しました。4つの分野とは、食糧価格政策と市場安定化、食糧へのアクセスを確保し、危機が貧しく脆弱な人々の栄養状態に与える影響を最小化するための社会的保護活動、食糧の国内生産・マーケティング対応の拡大、および実施支援、情報伝達、モニタリング・評価です。

2008年5月の段階では、世銀資金による支援は12億ドルまでと定められていたため(上限は2009年4月に20億ドルに引き上げ)、GFRPは複数の資金源から資金を調達しました。具体的には、IBRDの剰余金勘定から移転された2億ドルのシングル・ドナー信託基金(食糧価格危機対応信託基金)、各国がすでに受け取っているIDA・IBRD融資からの緊急融資向け資金が18億ドル、そしてGFRPの多種多様な活動を支えている複数の外部信託基金です。


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The World Bank Food Price Index, 2000-2012, weighs export prices of a variety of food commodities around the world in nominal U.S. dollar prices, 2005=100.

World Bank/DECPG

成果

世界食糧危機対応プログラム(GFRP)の支援は、49か国の6590万人に恩恵をもたらしました。このうち世銀資金による支援の受益者は5730万人に上ります。たとえば社会的保護プログラムに対する支援は1390万人に、短・中期的な農業介入に対する支援は870万戸の農家に利益をもたらしたと推定されています。開発政策プロジェクトは13か国で国レベルの政策を支援しました。一方、外部信託基金を使って実施されたGFRPプロジェクトは860万人に恩恵をもたらしたと推定されています。

いくつかのIDA適格国では、以下の通り具体的な成果が現れ始めています。

ベナン:肥料の提供により、トウモロコシの生産量が5万3897トン、コメの生産量が1万860トン増えました。穀類の増産は食糧価格の抑制につながりました。1袋(100キロ)当たりの平均価格は、2008年はトウモロコシが3万5000CFAフラン、コメが4万4000CFAフランだったのに対し、2009年はトウモロコシが1万5000CFAフラン、コメが2万5000CFAフランでした。

キルギス共和国:GFRPの資金を基に、147の食用作物のコミュニティ・シード・ファンド(CSF)が実行され、6,000人を超える農民が利益を得ました。CSFのメンバーである農民の収穫高と、非メンバーの収穫高および国家統計委員会が発表している全国平均を比べると、2011年のCSFが目覚ましい効果を上げたことがわかります。メンバーと非メンバーの小麦とじゃがいもの収穫高の差は47-62%に達しました。これは種子の改良、肥料の使用、プログラムの一環として実施された基礎的な農学研修の成果です。

ニカラグア:ニカラグアではGFRPプロジェクトを通じて、幼稚園と小学校に通う60万9000人の子どもたちに学校給食が提供されました。すべての効果をこのプロジェクトに帰することはできませんが、たとえば対象地域の公立小学校では生徒の在籍率が84.8%(2008年)から98.6%(2010年)に上昇し、出席率も78.8%(2008年)から83%(2009年)、80.8%(2010年)に改善されました。

イエメン:8つの行政区域で、地域密着型の労働集約的プロジェクト98件が実施され、2009年には3万6000人が臨時の職を得ました。恩恵を受けた世帯の大多数は、得た賃金を食糧消費を維持するために使ったことから、これらの地域では食糧価格の高騰がもたらす影響が緩和されました。

シエラレオネ:2008年に5つの主要商品の関税が引き下げられました。この決定は、国民にとって700万ドルの食費削減効果をもたらしたと推定されています。下がった関税率がプロジェクト期間中に再度引き上げられることはなく、税収の減少分の一部はGFRPグラントによって補填されました。また、優先度の高い4つの公共サービスが継続的に提供され、2万4800人が恩恵を受けました。

IBRD適格国のうち、フィリピンでは政府がコメの個人輸入に対する40%の関税を一時的に解除した結果、民間セクターの輸入量が増え、ベトナムおよびタイとの二国間取引が促進されました。こうした政策決定に加え、備蓄米を速やかに放出したことにより、フィリピンではコメの国内小売価格が2008年6月から10月にかけて13%低下しました。それに加えて、2008年には簿外の援助を含め、社会的援助プログラムに対する財政援助が増額され、さらに条件付現金給付(CCT)プログラム の対象が33万3000世帯に拡大されました。 

IDA適格国における主な成果

  • 92万2750人の子どもたちが学校給食プログラムによる恩恵を享受。
  • 29万2856人の妊婦および授乳中の母親に栄養補助食品と教育を提供。
  • 69万6000人の子どもたちに栄養介入を実施。
  • 174万3534人が労働プログラムを通じて雇用され、労働の対価として現金または食糧を確保。
  • 8万6382世帯が現金給付プログラムによる恩恵を享受。
  • 24万3491人に食糧を配給。
  • 846万8422戸の農家に種子と肥料を配布。
  • 20万4183戸の農家が技術研修、技術導入、収穫後管理による恩恵を享受。
  • 1万4663人の農民が農具の導入による恩恵を享受。 



世銀の貢献

2013年3月現在、世銀は35か国の56件のプロジェクトに資金を提供しました。承認済みのプロジェクトを地域別に見ると、2012年10月現在で58%はアフリカ地域、18%は南アジア地域、17%は東アジア・大洋州地域、3.4%はラテンアメリカ・カリブ海地域、2.1%はヨーロッパ・中央アジア地域、2%は中東・北アフリカ地域でした。プロジェクトの内容別では、44%が農業供給面の対応、34%が食糧危機に対処するための政府方針や機関活動を支援する開発政策、20%が社会的保護活動、2%がプロジェクト管理、モニタリング・評価活動、およびコミュニケーション支援でした。

世銀は40を超える国々と政策対話を行い、各国が食糧危機に対処できるよう支援しています。

パートナー

GFRPの下で展開される多種多様な活動を支援するために、世銀の資金に加えて、3つの外部信託基金からグラント資金が提供されました。このうちマルチドナー信託基金は、オーストラリア政府から5000万オーストラリア・ドル、スペイン政府から8000万ユーロ、大韓民国から114億6000万韓国ウォン、カナダ政府から3000万カナダドル、国際金融公社から15万米ドルの拠出を受けています。ロシア食糧価格危機緊急対応信託基金 には、ロシア連邦がキルギス共和国とタジキスタン向けの資金として1500万米ドルを拠出しました。欧州連合は10か国でのプロジェクトを支援するために1億1200万ユーロを拠出しました。

効果的なパートナーシップのおかげでGFRPプロジェクトは円滑に進み、多くの途上国で組織・制度面の能力が向上しました。世銀は世界食糧計画(WFP)国連児童基金(UNICEF)、国際農業開発基金(IFAD) 、食糧農業機関(FAO) などの国連機関と協力しながら、11か国でGFRPプロジェクトを進めています。18か国の少なくとも20のGFRPプロジェクトでは、シビルソサエティ組織がプロジェクトの設計、モニタリング、実施に深く関わっています。世銀は、国連世界食糧安全保障危機ハイレベル・タスクフォース にも積極的に関与しており、世界銀行開発グラント・ファシリティを通じて財政援助を行ったり、国連の包括的行動枠組みのアップデートに参加しています。

今後の見通し

GFRP緊急融資制度は、2012年6月30日に満了となったため、今後の世銀資金によるプロジェクトにはGFRPの緊急融資手続きは適用されないことになります。

世界の食糧価格の変動は長期化しており、GFRPにとどまらない、協調的な対応が求められるようになっています。世銀は将来の緊急事態にそなえて、GFRPの経験を活かしたものも含め、いくつかの新しい対応手段を開発しました。たとえばIDAの危機対応融資制度(CRW) や即時対応メカニズム(IRM) 、IBRDのエクスポージャー管理フレームワーク(EMF) により世銀は、緊急事態が発生した際にすばやく対処できるようになります。GFRPに関しては、世銀は現在進められているGFRPプロジェクトの実施に専心していく予定です。

世銀グループの農業行動計画 (2013-15年度)には、GFRPの教訓が反映されています。この行動計画は、年間70-90億ドルという多額の融資を継続することを約束しています。重点分野のひとつは、「リスクと脆弱性の軽減」を通じて、途上国が将来の緊急事態に備え、危機に効果的に対処できるようにすることです。世銀は今後も世界規模のプログラムやパートナーシップを強化していく考えであり、その一環として世界農業食糧安全保障プログラム(GAFSP) の公的セクター枠に追加資金を投入する予定です。また、食糧安全保障の分野では、国連世界食料安全保障危機ハイレベル・タスクフォース国連食糧安全保障委員会、G8、G20といった国際会合を通じて、引き続き国際舞台で重要な役割を果たしてく予定です。


マルチメディア

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6600万人
世界食糧危機対応プログラム(GFRP)が49か国(主にアフリカ諸国)で支援した脆弱な人々の数





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