経済成長は安定するが、ペースは緩やかに

世界経済の見通しは、短期的には改善しているものの歴史的水準からすると依然として低調である。2024~25年には、世界人口の80%以上を占める60%近くの国で、成長率が2010年代の平均を下回る見込みだ。地政学的緊張、貿易の断片化、金利の長期高止まり、気候関連災害など、下振れリスクが優勢となっている。貿易の保護、経済のグリーン化とデジタル化への転換の支援、債務救済、食糧安全保障の改善には、世界的な協力が必要だ。新興国及び途上国では、公共投資が生産性を高め、民間投資を刺激して長期的な成長を促進することができる。小国家は以前にも増して外的ショックにさらされており、そうした高まりから生じるものを含めた小国が抱える進行中の財政課題に対処するには、包括的な財政改革が不可欠である。

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世界経済予測

今年の世界経済成長率は2.6%で安定すると予測される。インフレ圧力が続くことから、中央銀行は政策緩和に慎重な姿勢を維持する可能性が高い。その結果、政策金利のベンチマークは新型コロナ禍以前よりも大幅に高くなると見込まれる。来年以降の世界経済成長率の予測は低迷が続き、2010~19年の平均を0.5ポイント近く下回ると予想される。債務高と債務返済費用の上昇を受けて、新興国及び途上国の政策担当者は多額な投資の必要性と財政の持続可能性のバランスを取る必要がある。長期的成長を促進するには、生産性向上、公共投資の効率化、人的資本の構築、労働市場における男女格差の解消に向けた政策措置が不可欠である。

  実質GDP成長率 (%)   改定*
  2021 2022 2023e 2024f 2025f 2026f   2024f 2025f
世界 6.3 3.0 2.6 2.6 2.7 2.7   0.2 0.0
先進国 5.5 2.6 1.5 1.5 1.7 1.8   0.3 0.1
新興国・途上国 7.3 3.7 4.2 4.0 4.0 3.9   0.1 0.0
   東アジア・大洋州地域 7.6 3.4 5.1 4.8 4.2 4.1   0.3 -0.2
   ヨーロッパ・中央アジア地域 7.2 1.6 3.2 3.0 2.9 2.8   0.6 0.2
   ラテンアメリカ・カリブ海地域 7.2 3.9 2.2 1.8 2.7 2.6   -0.5 0.2
   中東・北アフリカ地域 6.2 5.9 1.5 2.8 4.2 3.6   -0.7 0.7
   南アジア地域 8.6 5.8 6.6 6.2 6.2 6.2   0.6 0.3
   サブサハラ・アフリカ地域 4.4 3.8 3.0 3.5 3.9 4.0   -0.3 -0.2
* 2024年1月予測からの%㌽変化
すべてのデータはExcelファイルとしてダウンロードできます。

地域別予測

経済見通しは新興国及び途上国・地域により異なるが、2024年はほとんどの地域で成長が鈍化すると予測される。東アジア・太平洋、ヨーロッパ・中央アジア、ラテンアメリカ・カリブ海、そして南アジアの各地域における減速は、これらの地域の主要国の活動減速が一因である。その他地域では、従前の予測ほど力強くはないものの、成長の加速が見込まれる。来年は、金融政策の引き締め度合が緩み、世界貿易が活発化するため、ほとんどの地域で成長が堅調になると予測される。すべての地域の見通しに対する下振れリスクは、地政学的緊張、貿易のさらなる分断、想定より厳しい世界的な金融引き締めなどがある。気候変動関連の自然災害や、予想よりも弱い中国の成長も下振れリスクだ。

東アジア・太平洋地域:経済成長率は2024年に4.8%、2025年に4.2%に減速。詳細は地域別概要 を参照。

ヨーロッパ・中央アジア地域:経済成長率は2024年に3.0%にやや低下、2025年は2.9%。詳細は地域別概要(英語) を参照。

ラテンアメリカ・カリブ海地域:経済成長率は2024年に1.8%に減速後、2025年に2.7%に上昇。詳細は地域別概要(英語)を参照。

中東・北アフリカ地域:経済成長率は2024年に2.8%、2025年に4.2%へとそれぞれ上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

南アジア地域:経済成長率は2024年に6.2%に減速後、2025年は6.2%に横ばい。詳細は地域別概要(英語) を参照。

サブサハラ・アフリカ: 経済成長率は2024年に3.5%、2025年に3.9%へとそれぞれ上昇。詳細は地域別概要(英語) を参照。

プレスリリース

発行日 プレスリリース 東アジア・大洋州地域
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