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Statement2024年12月5日

IDA21についての公開書簡 出資国、支援対象国、パートナー、世界の開発コミュニティの皆さまへ

我々はこの1年間、不安定な経済、債務水準の上昇、気候ショック、かつてなく差し迫った人間開発の必要性など、とてつもなく困難な世界情勢の中を進んできました。ただ、こうした課題が山積する中にあっても、ある目覚ましい展開がみられます。世界で最も脆弱な立場にある人々のために、我々はもっと成果を上げられるし、上げなければならないという共通の信念に突き動かされた集団的な取組みです。

本日、その取組みの成果をお伝えできることを光栄に思います。数カ月にわたる交渉、パートナーシップ、そしてドナーコミュニティの揺るぎないコミットメントの結果、国際開発協会(IDA)の第21次増資(IDA21)として、ドナーからの拠出金240億ドルを調達することができました。

IDA独自のレバレッジ・モデルにより、この240億ドルは、緩やかな条件による融資としてIDA史上最大規模となる総額1,000億ドルを生み出すことになります。これを可能にしたのは、ドナーの寛大さはもちろんのこと、バランスシートの最適化、さらなるリスクテイク、レバレッジ力強化に向けた我々の取組でもあります。

今回の資金は、支援を最も必要とする78カ国が保健、教育、インフラ、気候への強靭性に投資するための資金として、また経済の安定化、雇用創出、より良い未来のための基盤構築のほか、各国が不確実な時代を乗り切り潜在性をフルに発揮するためにも役立てられます。

より迅速でインパクトのある成果の実現

今回の増資で重要なのは資金の規模だけでなく、資金をいかにして提供するかでもあります。IDAの業務枠組みは、長い時間を経て複雑化が進み、1,100以上の要件と指標を擁するに至っています。適切な意図にもとづいた結果とはいえ、この複雑さゆえに往々にして業務のスピードが落ち、支援対象国への過度の負担にもつながっていました。

今回の増資サイクルでは、パートナーと緊密に連携してIDAの業務を合理化し、求められる指標の数を半分の500に削減しました。これにより、IDAはよりシンプルでより迅速な組織として、支援対象国のニーズに速やかに対応することが可能になります。具体的には、形式的な作業のハードルが減り、現場で成果を上げるためにより多くの時間を使うことができるようになります。

IDAの重要性

IDAの設立から60年の歴史の中で、35カ国がIDAを卒業しました。その中には現在、ドナーの立場に立って他の国の繁栄のために大きく貢献している国も多くあります。

IDAは設立以来、世界の最貧国にとって極めて重要なパートナーであり続け、そうした国々のライフラインとして他の多くの機関にはできない支援を提供しています。

例えば、無利子または低金利のクレジットや、資金調達の選択肢が限定的な国へのグラントといった譲許的融資。

世界のほぼすべての国々で培われた数十年の活動から得られた類をみない開発知識。

ドナーからの1ドルにつき3.5〜4ドルの支援を提供するなど、ささやかな拠出金を人生を変えるほどのインパクトのある投資に変えるレバレッジ力。 

このレバレッジ・モデルにより、IDAは過去10年間だけで2,700億ドルを動員・配分し、うち1,790億ドルをアフリカ向けとすることができました。IDAは、気候変動対策資金のために最大規模の譲許的融資を提供しています。その額はこの10年間で世界全体で850億ドルにのぼり、その半分以上が気候変動への適応に充てられ、海面上昇からの地域社会の保護、暑さ対策を施した学校の建設、農業従事者による条件に適した種子の確保に役立てられています。

この間の具体的な成果は以下の通りです。

  • 9億人に保健サービスを提供
  • 1億1,700万人が安定供給される電力にアクセス
  • 9,400万人が清潔な水へのアクセスを確保
  • 1,800万人以上の農業従事者に基本的なテクノロジーを提供

IDAが「開発における最高のディール」と呼ばれることが多いのは、こうした理由によります。単に資金が提供されたことにとどまらず、実際に人々の生活を変えたからです。

本番はこれから

これまでの成果と本日の交渉妥結を祝いつつも、今後の課題にはこれまで以上に注意を払っていくことが求められます。IDAの支援対象国の多くでは、債務の増加と限られた財政余地により、政府に制約がかかっています。こうした国々にとって、IDAの譲許的融資は多くの場合、雇用を生み出すセクターへの唯一の実行可能な投資源となっています。

これは、12億人という膨大な数の若者世代が労働力に加わろうとしている現在、特に重要です。現在の予測では、創出見込みの雇用は4億2,000万人分にとどまり、8億人近い若者が失業のリスクに直面することになり、社会の安定と経済成長に対する脅威となっています。

世界銀行グループは、この課題の深刻さを認識し、正面から取り組む用意があります。雇用創出をプロジェクトの副産物ではなく、明確な目標と位置づけているのはそのためです。

これまでの歴史を振り返ると、雇用は常に最も確実で永続的な貧困対策となってきました。雇用は尊厳をもたらし、女性に力を与え、若い世代に希望を植え付け、より強力な地域社会を構築します。

その意味で、IDAは単なる金融手段ではなく、雇用創出を促進する役割を担っています。インフラの建設、教育・保健システムの改善、民間セクターの成長促進のための資金を各国に提供していますが、いずれも雇用と経済機会の創出に不可欠な分野です。

我々の雇用分野の取組みを支えているのは、世界銀行グループの公共セクターでの経験と民間セクターとのつながりや資金調達を通じ、官民の枠を超えて世界規模で深くて幅広い成果を上げてきた実績です。この取組みは包括的なものであり、世界銀行グループにとってのパラダイムシフトです。 

集合的な成果

資金調達や効率性などはいずれも、ドナー国の揺るぎない支援、市民社会からの支持、そして支援対象国の創造性なしには、実現し得なかったでしょう。皆様一人ひとりの信頼、パートナーシップ、そしてIDAの使命に価値を見出してくださっていることに感謝申し上げます。

今日はひとつの節目であると同時に、ある意味での始まりでもあります。我々は連携して、集団行動が並はずれた結果を導く可能性のあることを証明してみせました。しかし、取組みはまだ終わったわけではありません。

今後も引き続き協力を重ね、各種のソリューションへの投資、各国へのエンパワーメント、どこで生まれた人でも誰もが成功し繁栄できるような世界の構築を進めてまいりましょう。

感謝の気持ちを込めて、

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アジェイ・バンガ
世界銀行グループ総裁

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