ワシントン、2021年4月2日 — デイビッド・マルパス世界銀行グループ総裁は本日、世界銀行の新たな気候変動行動計画について以下の声明を発表した。
「世界銀行グループの新たな気候変動行動計画の要点を昨日、理事会で発表しましたのでご報告いたします。我々が今、気候変動、貧困、格差に対して協働し、どういった対応をするかが、この先の時代を決定づけることになるでしょう。世界銀行グループはこれまでも、途上国の気候変動対策に国際開発金融機関として最大規模の資金を提供しており、過去2年間には支援額を過去最高レベルに引き上げました。貧困削減と繁栄の共有促進という2大目標を達成するために、支援対象国による気候対策と開発の完全な融合に向けて世界銀行グループの支援が不可欠です。また、各国が気候対策資金の効果を最大限に高め、適応策を通じて生計を目に見える形で改善し、緩和策を通じて温室効果ガス排出量を大幅に引き下げられるよう、支援することも重要です。
そのために以下の施策を進めていきます。
- 気候対策資金の増大: 今後5年間の平均で世界銀行グループの支援総額の内35%をコベネフィット型気候対策に充て、世界銀行(国際復興開発銀行:IBRD、国際開発協会:IDA)の気候対策資金の内50%を適応策と強靭性強化に充てる。これは、2016~20年度に達成した平均26%を大きく上回り、世界銀行が支援総額を増やしたことから、金額にするとさらに大きな増加となる。
- 気候対策の成果とインパクトの重視: 新たな手法を用いることで温室効果ガス排出量の削減、適応、強靭性強化の各目標達成をこれまで以上に重視し、成果の測定とインパクトの達成に注力。
- 気候診断の向上と拡充:自国が決定する貢献(NDC)と長期戦略(LTSs)の策定と実施に向けて「国別気候・開発報告書」を新たに作成するなど、グローバル・レベルと国レベルで強力な分析基盤を構築。同報告書は世界銀行グループのすべての国別パートナーシップ枠組みの策定に活用。
- 基幹システムにおける排出量と気候脆弱性の削減:エネルギー、食料システム、運輸、製造など、排出量の大半を占め気候脆弱性が最も高い基幹システムの状況を大きく変容させる投資を支援。
- 石炭からの「公正な移行」の支援:援助が必要な支援対象国で石炭からの移行への支援を大幅に拡大。このための支援に向けさらに大規模な資金の動員を図ることが重要。石炭セクターの労働者のための雇用とスキルの移転がその一例。また、電力アクセスの拡大と共に、石炭から、安価で安定供給される環境負荷の少ないエネルギー源への移行支援も必要。
- パリ協定の理念と目標に沿った形での資金提供:世界銀行グループはパリ協定の目標と資金提供の整合性確保に注力。世界銀行のすべての新規プロジェクトにおいて2023年7月1日までに整合性を確保。国際金融公社(IFC)と多数国間投資保証機関(MIGA)については、2023年7月1日までに新規プロジェクトの85%、2025年7月1日までに全プロジェクトで整合性を確保。
世界銀行グループは、途上国による気候変動対策支援で効果を上げてきました。過去5年間の気候対策資金は830億ドル以上に上り、2020年は単年として過去最高の214億ドルを提供しました。気候変動行動計画を通じ、支援額と影響の両方をさらに高めてまいります。
今日、世界は今後を変更できる歴史的な機会を前にしています。飢餓、社会的分断、紛争、暴力、気候変動の高まる危険を乗り越えるための機会です。世界銀行グループは、すべてのステークホルダーと協力し、こうした課題に正面から向き合い、支援対象国が環境に配慮した強靭で包摂的な開発の恩恵に与れるよう支援していく所存です。」