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プレスリリース2025年4月23日

ヨーロッパ・中央アジア地域:起業家精神、技術導入、イノベーションを通じた成長加速を

ワシントン、2025年4月23日—世界銀行は本日発表した「ヨーロッパ・中央アジア地域経済報告」で、域内の途上国の経済成長は減速の可能性が高いと指摘している。2025-26年の地域成長率は現在、外需の低迷とロシアの景気減速により、2.5%になるとみられている。

2024年、域内全体としては3.6%と安定して成長した。個人消費の伸びに加え、実質賃金の堅調な上昇、送金の増加、消費者の借入増加がいずれも、欧州連合(EU)の低成長による外需の低迷を相殺したからだ。

食料とサービスの価格が上昇したことで、インフレ率は2024年半ばの前年比3.6%から2025年2月には5%に上昇した。最近のインフレ率上昇を受け、いくつかの国の中央銀行は政策金利の引き上げや追加緩和の延期を余儀なくされた。

「ヨーロッパ・中央アジア地域の国々は昨年、安定的成長を維持できたものの、世界的な不確実性、地政学的な分断、主要な貿易相手国の成長低迷により、この成長の維持はより困難になっている」と、アントネラ・バッサーニ世界銀行ヨーロッパ・中央アジア地域総局副総裁は述べた。「長期的により大幅な経済成長を実現するには、域内各国が、ダイナミックで革新的な民間セクター、起業家精神、技術導入に向けた国内構造改革を加速させることが重要になる」

中央アジア地域は、2025-26年の成長率が4.7%に鈍化するとみられるものの、今年と来年は引き続き最も急成長する域内地域となる可能性が高い。鈍化の背景には、カザフスタンの石油セクターの成長減速に加え、輸出の減少と送金流入の正常化がある。

南コーカサスでは、仲介貿易や労働力と資本流入からの波及効果が引き続き減少し、2025-26年の成長率は平均3.5%になるとみられる。

貿易政策の不確実性、貿易障壁の増加、ユーロ圏のサプライチェーンからの間接的な波及効果が、域内の他の域内地域の回復を阻むとみられる。西バルカン諸国の成長率は2025-26年に3.4%に減速し、中央ヨーロッパは2.7%へとわずかに改善する見通しである。

ロシアでは、2025-26年に成長率が1.3%に低下するとみられる。トルコの2025-26年の成長率は、外需が依然として弱く、経済のリバランスが続く中、長期的トレンドは下回るものの3.3%へと緩やかに改善する可能性がある。ウクライナの成長率は2025年に2%に低下する可能性が高い。

報告書は特集を組み、現在の厳しい世界情勢における成長加速の方法について、活力のある民間セクターの重要性を強調している。各国は、イノベーションへの投資を増やし、若い企業を支援するための改革に着手し、金融市場を深化させ、研究開発(R&D)への投資を増やす一方で、技術、専門知識、資本の世界的統合に引き続き注力すべきである。

域内の中所得国が高所得国となるためには、経済をよりダイナミックにする必要がある。高所得国に移行した国々は、起業ダイナミズムとイノベーションを通じて移行を成功させており、テクノロジー、専門知識、資本を活用して企業内の生産性の向上を促進することにより、そうした成長を維持すべきである。

「ビジネスにおけるイノベーションと試行は、生産性向上に不可欠であり、高所得国となり維持するための前提条件でもある」と、イヴァイロ・イズボルスキー世界銀行ヨーロッパ・中央アジア地域総局チーフ・エコノミストは述べた。「域内の中所得国は、企業が成長してイノベーションを起こし、競争力をつけていけば、高所得国になることは可能である。改めて成長軌道に乗るためには、国によって独自のアプローチが必要になるが、イノベーションとビジネスダイナミズムを促進することが不可欠である」

報告書は、中小企業(SME)セクター全般にではなく、若く革新的な企業への投資が必要だとしている。こうした企業が雇用を創出しているからだ。このアプローチには、長期的なリスク資本を中心に、金融アクセスの改善が必要となる。域内ではベンチャーキャピタルとエクイティファイナンスが依然として未発達であるため、十分な資金が確保されていない。

こうした活力のある企業の出現を可能にするには、競争の強化が不可欠となる。域内には、生産性の低い小規模企業が多すぎる一方、国有企業(SOE)を除くと大企業がほとんど存在しないため、市場が支配されやすく、起業ダイナミズムは阻害されがちである。

また、企業の生産性と革新性を高めるためには、大規模で的を絞った研究開発(R&D)へのインセンティブなど、ビジネス・イノベーションとテクノロジーの採用を奨励する政策もまた必要である。現在、域内の多くの企業が資源の再配分に依存しており、独自の技術を開発するのではなく外国企業の生産施設として運営されている。

最後に、人的資本への投資は、高度熟練労働者や起業家を引付け維持するため、さらにはトレーニングを通じたスキル向上の機会を創出するために不可欠である。

ヨーロッパ・中央アジア地域の見通し

(別途断りのない限り、市場価格での実質GDP成長率)

2021

2022

2023

2024年e

2025年f

2026年f

アルバニア

9.0

4.8

3.9

3.9

3.2

3.1

アルメニア

5.8

12.6

8.3

5.9

4.0

4.2

アゼルバイジャン

5.6

4.6

1.1

4.1

2.6

2.4

ベラルーシ

2.4

-4.7

3.9

4.0

2.2

1.2

ボスニア・ヘルツェゴビナ

7.3

3.7

1.9

2.6

2.7

3.1

ブルガリア

7.8

4.0

1.9

2.8

1.6

2.1

クロアチア

12.6

7.3

3.3

3.8

3.1

3.0

ジョージア

10.6

11.0

7.8

9.4

5.5

5.0

カザフスタン

4.3

3.2

5.1

4.8

4.5

3.6

コソボ

10.7

4.3

4.1

4.4

3.8

3.8

キルギス共和国

5.5

9.0

9.0

9.0

6.8

5.5

モルドバ

13.9

-4.6

1.2

0.1

0.9

2.4

モンテネグロ

13.0

6.4

6.3

3.0

3.0

2.9

北マケドニア

4.5

2.8

2.1

2.8

2.6

2.7

ポーランド

6.9

5.3

0.1

2.9

3.2

3.0

ルーマニア

5.5

4.0

2.4

0.9

1.3

1.9

ロシア連邦

5.9

-1.4

4.1

4.1

1.4

1.2

セルビア

7.9

2.6

3.8

3.9

3.5

3.9

タジキスタン

9.4

8.0

8.3

8.4

6.5

4.9

トルコ

11.4

5.5

5.1

3.2

3.1

3.6

ウクライナ

3.4

-28.8

5.5

2.9

2.0

5.2

ウズベキスタン

8.0

6.0

6.3

6.5

5.9

5.9

出所:世界銀行
注:推定値と予測は、2025年4月10日までに入手可能だったデータを反映。e = 推定値; f = 予測値; GDP = 国内総生産

プレスリリース番号: 2025/ECA/093

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