民間債権者の撤退が貧困国の財政を圧迫
ワシントン、2024年12月3日—2023年の途上国の債務返済額は、金利コストが20年来の高水準となったことを受け、過去最高の1兆4,000億ドルに上った、と世界銀行は「国際債務報告書」の最新版で指摘している。利払いは前年から3分の1近く増えて4,060億ドルとなり、多くの国で保健医療、教育、環境など重要分野の予算を圧迫している。
財政圧迫が最も深刻だったのは、世界銀行グループの国際開発協会(IDA)からの借入適格である最貧国と最脆弱国で、2023年の返済額は過去最高の962億ドルにのぼった。元本返済額は前年比約8%減の616億ドルだったが、利払いは過去最高の346億ドルと10年前の4倍に膨れ上がった。IDA借入国の利払いは現在、平均でIDA適格国の輸出総額の6%近くに達し、1999年以来の高水準となった。なかには、輸出総額の38%に上った国もある。
与信条件が厳しくなる中、世界銀行をはじめとする国際機関は最貧国にとって主要な生命線となっている。2022年以来、IDA適格国の公的部門に融資した外国の民間債権者への返済額は、新規貸し付け額より約130億ドル多くなっている。一方、世界銀行をはじめとする国際機関による融資額は、2022年と2023年に債務返済額を約510億ドル近く上回った。世界銀行からの融資はその3分の1にあたる281億ドルだった。
「債務返済と、保健医療や教育などの重要な開発優先事項への支出の間でバランスを取るのが難しい貧困国にとって、国際機関は最後の生命線となっている」とインダーミット・ギル世界銀行グループ・チーフエコノミスト兼上級副総裁は述べた。「重債務貧困国では、国際開発金融機関が最後の貸し手の役割を果たしているが、これは国際開発金融機関の本来の役割ではない。その背景には、金融システムの機能不全がある。世界銀行など国際機関からの融資を除き、貧困国に向かうべき資金が逆に貧困国から流出しているのだ」
コロナ危機は、すべての途上国の債務負担を大きく高め、その後の世界的な金利急上昇の結果、多くの国々にとって立て直しが一層困難になっている。2023年末時点で、すべての低・中所得国の対外債務総額は過去最高の8兆8,000億ドルとなり、2020年比で8%増となった。増加率はIDA適格国では2倍以上にのぼり、対外債務総額は1兆1,000億ドルと18%近く増加した。
2023年、すべての途上国にとって対外借入コストは大幅に上昇した。公的債権者から借り入れる場合の融資金利は2倍の4%以上に達した一方、民間債権者から借り入れる場合の金利は1ポイント以上上昇して6%となり、15年ぶりの高水準となった。その後、金利は世界全体で低下し始めたが、コロナ危機以前の10年間の平均を上回る水準で推移するとみられる。
「国際債務報告書」の最新版は、途上国の対外債務データに関する最も包括的で透明性の高い情報源である世界銀行の国際債務統計データベースを分析して得られた主な洞察を取り上げている。報告書の作成にあたっては、各国が世界銀行の債務国報告システムに報告したデータを、G7およびパリクラブの債権者が保有するデータと照合するなど、IDA適格国の債務データの正確性を期するための方法を改善した。融資案件ごとの照合作業の結果、データの一致率は98%となり、誤差は10ポイントからわずか2ポイントに低下した。
「政府債務に関する包括的なデータは、新たな投資を促進し、不正を減らし、大きな損害をもたらす債務危機を未然に防ぐことができる」とハイシャン・フー世界銀行チーフ統計官兼開発データ・グループ長は述べた。「世界銀行は、IDA適格国を中心に世界各国の債務の透明性向上に主導的な役割を果たしてきた。2023年、これらの国のうち、政府のウェブサイト上で完全にアクセス可能な公的債務データを公開している割合は70%近くにのぼり、2020年から20ポイント増加している。これは将来に向け希望のもてる兆しである」