民間投資の促進、生産性の向上、気候変動に対する強靭性強化に向けて
ワシントン、2024年10月23日 — 世界銀行グループは本日、アグリビジネス業界のための包括的エコシステム構築を目標に、アグリビジネスへのアプローチを戦略的に転換すると発表した。この転換により、アグリファイナンスとアグリビジネスへのコミットメントを2030年までに年間90億ドルへと倍増させ、これまでより高い水準の投資を生かしグループ内の協力により業務を進めていく。
新アプローチは、気候変動、金融イノベーション、デジタル化、細分化対策という4つのトレンドによりアグリビジネスの状況が抜本的に変化しつつある中で発表された。また、今後数十年の間に60%増加するとされる食料需要を活用して、新興市場での切実な雇用ニーズに応えることも目指す。
「我々は岐路に立っており、今どの道を選ぶかで将来が決まる」と、アジェイ・バンガ世界銀行グループ総裁は述べた。「世界銀行のエコシステム・アプローチは、個々の取組みにとどまるのではなく、倉庫保管から物流、生産まですべてを網羅しながらも、小規模農家や生産者組織を中心に据えた一連のソリューションを推進するものである」
このエコシステム・アプローチは、世界銀行グループが過去16カ月間、より効率的で一段とシンプルかつ協調的な機関を目指して進めてきた組織改革の結果、実現した。より総合的なアプローチにより、世界銀行グループのすべての資源を結集し、包括的な支援と状況に応じたソリューションを提供していく。
世界銀行は、IBRDとIDAが持つ公共セクターのキャパシティ・ビルディングとサービス強化の経験や、IFCとMIGAが持つ投融資機能と民間セクターとのパートナーシップを統合し、グループ機関で協力して取組みを進めている。最終的には、グループ内での協力による業務の進め方により、企業とパートナー国の両方に等しく効果をもたらし、2030年に動員額を50億ドルに拡大することを目指す。
以下に、アプローチの 3 つの例を挙げる。
- 世界銀行グループの公共セクター支援部門により、製品が輸出先市場の要件に準拠しているよう徹底するといった規制や基準の策定において、各国への支援が可能となる。また、土地保有に関するソリューションについて助言を提供したり、全国的な灌漑ネットワーク構築を支援する。さらに、気候ファイナンスの分野では、政府が1兆2,500億ドルの化石燃料、農業、漁業補助金の一部を、より環境に配慮した慣行の普及へと使途の転換を支援することで、農業セクターのための重要な資金源の確保に貢献できる。
- 世界銀行グループの民間セクター支援部門は、債券や株式資金調達から、保証によるリスク軽減、アクセス面の課題克服まで、あらゆることに力を注ぐことができる。世界銀行グループが新たに立ち上げたシンプルな保証プラットフォームは、今回の戦略転換における重要なステップであり、パートナーの多様な需要に応える状況に見合ったソリューションの提供を容易にする。
- 世界銀行グループが一丸となり、小規模農家によるサプライチェーンとの結びつきを支援できる。IBRDは、小規模農家や生産者組織と協力して生産性とともに気候変動に対する強靭性を向上させ、大企業が必要とする規模、一貫性、高い基準を満たすことができる有望なサプライヤーへの成長を図る。IFCは、民間投資の準備のさらに先の段階における支援として、設備をそろえるための資金を提供し、生産者組織を、安定した生産者を求める企業と結びつける。
農業生産性の向上、そして所得の拡大は、雇用創出、歳入増加、食料・栄養の質向上に貢献する。気候変動に適切に対応できる農業生産のあり方により、二酸化炭素排出量の削減と清潔な空気と水の確保につながり、全体として、生活の質の向上を見込めることになる。