ワシントン、2023年11月28日—世界銀行グループは本日、画期的な新報告書「エネルギー移行の加速:太陽光発電+蓄電池プロジェクト計画のためのガイドライン」を発表し、大規模な太陽光発電と電池エネルギー貯蔵を組み合わせたプロジェクトを計画、組成、実施する途上国のために、プロジェクトの全工程を網羅する枠組みの概要を示した。
この包括的な新ガイドラインは、新興国における、従来の化石燃料を使用した発電から、よりクリーンで安定的かつ安価な「太陽光発電+蓄電池」システムへの移行の加速を目ざしている。蓄電池システムと再生可能エネルギー発電の併用は、継続的なエネルギー供給を保証することから極めて重要である。蓄電池の導入により、再生可能エネルギー電力がある時に蓄電し、最も必要とされる時に放電することが可能になるからである。
報告書は、政策担当者やプロジェクト開発者を対象に、「太陽光発電+蓄電池」プロジェクトについて、最初の実行可能性評価の実施、適切なビジネス・モデルの選択、適切なリスク配分、競争入札による調達プロセスの進行に関する実践的な助言を提供している。関係者が「太陽光発電+蓄電池」システムの規模拡大を図れるよう、様々に異なる地域で実際にあった事例をケース・スタディとして検証し、そこから重要な教訓を導き出している。
報告書の要点:
- プロジェクトの特定、ビジネス・モデルの選択、リスク配分、競争入札による調達の4段階で構成される実践的フレームワークを提供。
- 「太陽光発電+蓄電池」システムでの電力購入契約について、状況に合わせて、二部料金契約、容量契約、混合契約の3つのビジネス・モデルを検証。
- 実例を用いたケース・スタディでは、様々に異なる地域における導入の成功事例を紹介。
- 決定木分析を通じ、実務者はトレードオフを評価し、現地の状況に応じて適切なモデルを選択可能。
- すぐに使うことができるツールキットとして、民間投資を呼び込むことで、「太陽光発電+蓄電池」システムの大規模導入の加速を図る。
「太陽光発電+蓄電池システムは、途上国において、化石燃料由来のエネルギー・システムへの依存を減らしつつ、クリーンで安価かつ安定的な電力アクセスの提供を可能にする。この画期的報告書は、各国政府が民間セクターの参加を得て、大規模な「太陽光発電+蓄電池」プロジェクトの競争入札による調達を可能にする政策を設計する際の包括的ガイドラインを示している」と、グアン・チェン世界銀行インフラストラクチャー担当副総裁は述べた。
世界銀行はこの3年間、気候変動対策資金として蓄電池プロジェクトに世界全体で約8億5,000万ドルを動員してきた。対象には、既に稼働中の5.5GWhの蓄電容量に加え、途上国全体で計画中の3.7GWhの蓄電容量が含まれる。世界銀行は昨年度、インド太陽エネルギー公社(SECI)が受注したインドで過去最大となる120MWhの蓄電池プロジェクトの資金調達を支援し、集団的な気候変動対策の力を示した。世界銀行はまた、モルディブ等の小島嶼途上国への蓄電ソリューション導入を優先的に進めている。モルディブは最近、分散した再生可能エネルギーの統合において独自の課題に直面している国内の離島全域で、40MWhの初の蓄電プロジェクトに調印した。「太陽光発電+蓄電池」プロジェクトは、将来を担う、強靭で持続可能なエネルギー・システムの構築に重要な役割を果たすであろう。
報告書は、12月初旬にアラブ首長国連邦のドバイで開催される気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で発表される。COP28は、途上国が「太陽光発電+蓄電池」システムの計画枠組みの採用に向けて、課題について議論し、知識を共有し、パートナーシップを構築する機会となるであろう。世界銀行は、新興国が複雑なエネルギー移行を乗り切れるよう支援するため、ニーズに合わせた助言サービスと資金調達手段を提供するよう尽力している。