海藻養殖新市場、2030年までに118億ドル規模に成長の可能性

海藻養殖は炭素を隔離し、女性を中心に脆弱な沿岸コミュニティの収入源になり得る

ワシントンDC、2023年8月16日 – 世界銀行はこのほど発表した報告書「海藻養殖の新しい世界市場2023年版」の中で、世界的に成長中の海藻養殖市場が2030年までに最大118億ドル規模の成長余地があるとしている。この試算には、海藻の植物組織に取り込んだ二酸化炭素の海底貯蔵、海洋の生物多様性保全、女性のための雇用創出、効果的なバリューチェーンの構築による効果が含まれる。

同報告書は、急成長が見込まれる海藻の新たな用途についてそのビジネス・チャンスを分析しており、海藻セクターが現在および将来にわたり潜在性を発揮できるよう、起業家、投資家、政策担当者に様々な視点から理解を促すものとなっている。

現在、海藻養殖の大半は、食用または養殖魚類の餌料として使われているが、将来的には、海藻を原料とする製品が繊維やプラスチックなどのセクターで化石燃料にとって代わり、炭素を隔離し、脆弱な沿岸コミュニティの収入源となる可能性がある。現在、市場は、養殖海藻の98％を生産するアジアの数カ国が独占しているが、大きな成長の機会は多くの地域に開かれている。

「世界全体で海藻養殖の成長は、政策担当者、融資機関、科学者、民間セクター、生産者、加工業者の間で技術と知識が誰も取り残すことなく共有されるか否かにかかっている。海藻養殖では女性が重要な役割を果たしていることから、女性の経済参加に向けた真にグローバルな革命を促進する舞台が整ったと言える」と、ヴァレリー・ヒッキー世界銀行環境天然資源・ブルーエコノミー・グローバル・プラクティスのグローバル・ダイレクターは述べる。

同報告書は、海藻を既存のセクター以外に活用する比較的新しい取組みの内、最も市場機会が大きい10件を取り上げている。短期的に最も有望な新市場には、バイオスティミュラント、動物飼料、ペットフード、メタン削減飼料添加物などが含まれ、2030年までに市場規模44億ドルに達するとみられる。中期的には、栄養補助食品、代替蛋白質、バイオプラスチック、繊維などが有望とみられ、潜在的に60億ドル規模に達する可能性がある。長期的には、医薬品と建設資材への活用で14億ドルに達すると予測されるが、規制上の課題が山積しており、製品開発のコストも高い。

「海藻養殖は、開発、気候、自然がいかに連携すれば価値の創出とコミュニティの向上に貢献できるかの道筋を示している。海藻養殖は、栄養の安定した補給源になると同時に合成肥料の代替にもなる」と、マーティエン・ファン・ニューコープ世界銀行農業・食料グローバル・プラクティス・グローバル・ダイレクターは指摘する。「世界銀行は、各国による食料システムの転換が人々、地球、そして経済により良い成果をもたらすよう、全力で支援を続けていく」

海藻市場の可能性をフルに発揮するためには、いくつかの重要な課題の克服が求められる。最大の課題は、限られた植生ゆえに海藻の入手自体が困難であることや、安定供給、品質の問題にある。海藻の活用が広がるのに伴い、価格設定や規制上の障壁が浮上することも考えられる。

こうした課題はあるものの、海藻養殖による気候や環境上の利点が、潜在的な新市場の成長の追い風になるだろう。「環境に優しい」製品への関心が高まり続ける中、持続可能性という特長を売りにして利益創出を図りたいとする製品開発者は多い。

世界的に資源の枯渇が進む今、海藻のように、短期間に再生が可能で潜在的に生態系の再生に貢献し得る資源を最大限に有効活用することは特に重要である。

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