食料価格は過去最高水準が続き、食料不安が深刻化
ワシントン、2023年4月27日 - 世界銀行は報告書「一次産品市場の見通し」最新版を発表し、世界の一次産品価格は今年、コロナ危機発生以来最大のペースで下落し、一次産品の輸出に依存する途上国のほぼ3分の2で成長見通しに陰りが出る、と分析する。
しかし、価格下落によって、食糧不足に直面している世界全体で3億5,000万人近い人々が救われることにはならないだろう。2023年の食料価格は、8%の下落が見込まれるものの、1975年以来で2番目に高い水準となる。さらに、食料価格インフレ率は今年2月現在、世界全体で年間20%と過去20年間で最も高い水準を記録している。
「ロシアによるウクライナ侵略後の食料・エネルギー価格の高騰は、経済成長の鈍化、穏やかだった冬、一次産品貿易における再配分によりほぼ落ち着いた。しかし、多くの国の消費者にとって大きな慰めにはならない。実質的に食料価格は、過去50年間で有数の高水準にとどまるだろう。各国政府は貿易制限措置を控え、価格統制ではなく対象を絞った所得支援プログラムを実施することで国内の最貧困層を保護するべきである。」と、インダーミット・ギル世界銀行チーフ・エコノミスト兼開発経済総局担当上級副総裁は述べた。
2023年の一次産品価格は全体として昨年から21%下落するとみられる。エネルギー価格は今年、26%の下落が予測され、米ドル建てのブレント原油価格は今年、1バレルあたり平均84ドルと、2022年平均から16%低下するとみられる。ヨーロッパと米国の天然ガス価格は2022~23年にかけて半減し、石炭価格は2023年に42%下落すると見込まれる。肥料価格も2023年に37%下落すると予測されており、これは1974年以来最大の年間下落幅となる。しかし、肥料価格は依然として、2008~09年の食糧危機の際に記録した近年で最も高い水準に近い。
「過去1年間における一次産品価格の下落は、世界の消費者物価指数の抑制に貢献した。しかし、各国の中央銀行は、予想を下回る石油供給、中国の商品市況中心の経済回復、地政学的緊張の激化、または厳しい気象状況など、様々な要因が価格を一段と押し上げ、インフレ圧力を再燃させかねないため、引き続き警戒する必要がある。」とアイハン・コーゼ世界銀行チーフ・エコノミスト代行兼開発見通し局長は指摘した。
今年は大幅な下落が見込まれるとはいえ、すべての主要一次産品の価格は依然として、2015~19年の平均を大きく上回る水準が続くであろう。ヨーロッパの天然ガス価格は、2015~19年の平均のほぼ3倍で推移し、エネルギーと石炭の価格も、パンデミック前の平均を上回る水準にとどまるとみられる。
「年初にわずかに上昇した金属価格は、主に世界需要の低迷と供給改善により、昨年から8%下落するとみられる。ただし、長期的には、エネルギー移行により、一部の金属、特にリチウム、銅、ニッケルの需要が大幅に上昇する可能性がある。」と、ヴァレリエ・マーサー=ブラックマン世界銀行開発見通し局リード・エコノミストは述べた。
同報告書は特集を組み、7つの工業用原材料(石油と6つの工業用金属)の価格予測に用いた各種アプローチの有用性を評価している。その結果、価格予測に広く使われている先物価格は大きな予測誤差につながることが多いと判明した。複数の独立変数に基づく計量経済学モデルは、先物価格など他のアプローチより正確な傾向がある。今回の分析から、一次産品価格の長期的推移の反映や他の経済的要因のコントロールにより、モデル・ベースの予測アプローチを強化することで、予測精度の向上が期待できる。
報告書本体をダウンロードする:https://bit.ly/CMO042023FullEN
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