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プレスリリース2022年10月6日

前例のない衝撃に揺れる南アジア地域、課題の悪化により成長が減速

ワシントン、2022年10月6日—コロナ危機の長引く傷跡に、スリランカの経済危機、パキスタンの壊滅的洪水、グローバル経済の失速、ウクライナでの戦争の影響などいくつもの衝撃が加わり、南アジア地域は現在これまでになく厳しい状況に置かれている。域内の成長率が低迷する中、各国にとって強靱性強化の必要性が高まっている、と世界銀行は半期ごとに発行する「南アジア経済報告(SAEF)」の最新版で指摘している。

本日発表された同報告書「衝撃への対応:出稼ぎ労働者と強靭化への道筋」は、地域の2022年の平均成長率を6月時点から1%ポイント下方修正し、5.8%と予測した。域内諸国の大半がコロナによる低迷から回復しつつあった2021年の成長率は7.8%だった。

景気低迷は南アジア地域のすべての国を圧迫しているものの、比較的対応が進んでいる国もある。域内第一の経済大国であるインドでは、潤沢な外貨準備高が外的衝撃を和らげる中、輸出とサービス・セクターの回復が世界平均を上回るペースで進んでいる。観光業の回復はモルディブの成長を牽引し、ネパールも規模は小さいが恩恵を受けている。両国ともサービス・セクターには活力がみられる。コロナに加え、ウクライナでの戦争のために一次産品価格が過去最高水準に達したことで、スリランカは特に大きな打撃を受けており、債務負担が悪化し、外貨準備が枯渇しつつある。過去最悪の経済危機に陥ったスリランカの実質GDPは2022年にマイナス9.2%、2023年はさらにマイナス4.2%になるとみられる。一次産品価格高騰はまたパキスタンの対外不均衡を悪化させ、外貨準備高を減少させている。パキスタンでは気候変動の影響による壊滅的な洪水で国土の3分の1が水没し、今後の見通しは著しく不透明な状況が続いている。

「パンデミック、世界的な流動性と一次産品価格の急激な変動、異常気象による自然災害はかつて、発生の可能性は低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらすリスクであった。ところが、3つともこの2年間に間髪を入れず発生し、南アジア諸国に大きな試練となっている。」と、世界銀行のマーティン・レイザー南アジア地域担当副総裁は述べた。「こうした衝撃を受け、各国は財政・金融面の選択肢を広げ、乏しい資源を人々を守るための強靭性強化に再配分する必要がある。」

南アジア地域のインフレは、世界的な食料・エネルギー価格の高騰と貿易制限が域内の食料安全保障を悪化させたことによるもので、今年9.2%に上昇した後、徐々に低下するとみられる。その結果、実質所得が大きく減少し、所得に占める食料支出の割合が大きい貧困層に特に深刻な打撃となる。

南アジア地域の出稼ぎ労働者は、多くがインフォーマル・セクターで働いており、コロナにより移動制限が課せられた際には特に大きな影響を受けた。しかし、パンデミックの後半には、回復の過程で出稼ぎ労働者の果たし得る決定的役割が浮き彫りになった。今回の報告書は、2021年終盤と2022年初頭に出稼ぎ労働者の流れが、パンデミックの影響が大きかった地域からそうでなかった地域への移行に連動したことで、コロナ後の労働力の需給均衡に役立ったとする調査結果を示している。

「国の内外の労働移動は、経済発展を促す。より高い生産性を発揮できる場所へ労働者が移動できるようになるからだ。また、異常気象など、南アジア地域の農村部に暮らす貧困層が特に影響を受けやすいショックへの適応にも役立つ」と、世界銀行のハンス・ティマー南アジア地域担当チーフエコノミストは述べた。「労働移動の制限撤廃が、地域の強靱性と長期的発展にとって不可欠だ。」

そのために報告書は2つの提言をしている。まず、出稼ぎ労働者が直面するコストを引き下げることを政策アジェンダとして優先すべきである。2つ目に、政策担当者は、より柔軟性の高いビザ政策、ショックの際に出稼ぎ労働者を支援するメカニズム、そして社会的保護プログラムなど、複数の手段を通じて出稼ぎ労働者にとってのリスクを軽減することができる。

世界銀行がモルディブネパールパキスタンスリランカの開発の最新情報をまとめた報告書も本日発表された。

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出所:World Bank Macro Poverty Outlook、職員による算出
注:(e)=推定値;(f)=予測値。GDPは2015年の物価と市場為替レートを使用。バングラデシュ、ブータン、ネパール、パキスタンについては、四半期ごとのDGPデータが確認できないため、暦年別の地域総計の推定値を出すため、2015年の実質ベースでの連続する2年度の平均を割り出すことで年度別データを暦年別データに転換。パキスタンの数値は要素費用表示。アフガニスタンは2021年8月以降、統計を取っていないので、この表に含まれていない。

 

 

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