整合性のない報告が最貧国にとってさらなるリスクに
ワシントン、2021年11月10日—最貧国の公的債務が危機的なレベルにまで上昇しているが、世界全体と国別での追跡システムが不十分であることが露呈しつつある。このため、債務の持続可能性を評価し、過剰債務を抱える国が迅速に債務を再編して十分な経済回復を実現することがより困難である、と世界銀行は新報告書「途上国における債務の透明性」の中で指摘している。
報告書は、公的債務モニタリグのための世界および国別のシステムを総合的に評価する初の試みである。債務水準の監視は現在、様々に異なる組織がまとめ上げたために基準と定義に一貫性がなく、信頼性にもばらつきのあるデータベースに依存している。そのため、低所得国の債務に関して公になっている数値には大きな開きがあり、その国のGDPの30%に相当するほどの開きが見られるケースもある。
「新型コロナウイルス感染症危機が収束しても、回復を目指す最貧困国は過去数十年間で最大の債務負担に直面することになる。債務突合と債務再編が極めて重要になるが、債務の透明性が十分でないために遅れが生じるだろう。」と、デイビッド・マルパス世界銀行グループ総裁は述べた。「債務の透明性向上には、公的債務管理のための健全な法的枠組み、総合的な債務記録・管理システム、世界的な債務モニタリングの向上が必要である。国際的な金融機関、債務国、債権者に加え、信用格付け機関や市民社会などのステークホルダーがいずれも、債務の透明性向上に向けて重要な役割を担っている。」
報告書執筆に当たって実施された調査の結果、公的債務に関するデータを2年以上にわたり一切公表していない低所得国は全体の40%に上り、公表している国もその多くが、中央政府による債務の情報公開にとどまりがちだ。途上国の多くは、将来的な収益源を担保に資金を確保する資源担保型融資への依存を高めるようになっている。資源担保型融資は2004~18年にアフリカ諸国による新規借り入れの10%近くを占めた。15カ国以上がそうした債務を抱えるが、どの国も、担保についての取り決めの詳細を開示していない。
各国の中央銀行はまた、レポやスワップなどの金融政策ツールを活用して、外国債権者からの政府借入を促進している。だが、そうした借入は、中央銀行の貸借対照表に明記されておらず、国際金融機関のデータベースで網羅されてもいない。最貧国の国内債務市場もまた実態が明らかではなく、報告書はこのような国々の内、市場ベースの入札を内国債発行の主たるチャンネルとして活用している国はわずか41%にすぎないとしている。しかも、入札を導入している国も、投資家に不十分な情報しか開示していない。
世界銀行グループは、長年にわたり、透明性が新規投資を促進し、説明責任を向上させ、腐敗の抑制に役立つという観点から、債務の透明性を各国の開発プロセスにおける極めて重要なステップであるとみている。世界銀行のグローバルな債務国報告システムは、低・中所得国の対外債務に関する検証可能な単独の情報源として今も最も重要である。世界銀行から借り入れを行っている国は100カ国を超えるが、いずれも公的機関による対外債務がある場合はその詳細を報告することが義務付けられている。また、世界銀行の持続可能な開発金融政策(SDFP)はIDAの支援対象国が債務の透明性、財務の持続可能性、債務管理を強化できるよう、その国の債務状況に合わせた政策措置(PPA)を具体的に実施するよう奨励している。
効果的な債務監視を実現することは簡単ではないが、可能ではある。報告書は、緊急性の高い順に、一連の詳細な勧告を行っている。特に重要な勧告としては、公共及び公的債務データの毎年の公表、協調的なデータ収集と報告の奨励、国際基準に準拠した総合的な債務記録・管理システムの設置が挙げられる。
ウェブサイト: Debt Transparency in Developing Economies
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