プレスリリース 2021年10月6日

ジョージアが迅速に回復－ヨーロッパ・中央アジア地域の新興国で力強い回復が景気を刺激

競争力のある事業環境が強靭で持続可能な長期的成長の鍵

ワシントン、2021年10月5日 – ヨーロッパ・中央アジア地域では、今年前半の驚くほど力強い回復が域内の新興国・途上国の経済活動を高めた結果、域内経済は現在のところ、2021年に予想を上回る5.5％の成長が見込まれる、と世界銀行は本日発表した同地域の経済報告最新版「新型コロナウイルス感染症後の競争と確実な回復」で分析している。

好転は主に、ユーロ圏の経済活動が立直り、一次産品価格が大幅に上昇して今年前半における輸出の大幅な回復が牽引したことに加え、ワクチン接種の広がりと支援パッケージにより内需が強化されたことによる。ただし、輸出への追い風は今後、感染力が高めの新型コロナウイルス変異株が今や世界各地や域内に広がっているために弱まる可能性がある。変異株はまた、域内の内需の回復を抑え込んでもいる。

ヨーロッパ・中央アジア地域の中でも、南コーカサス亜地域は2020年にGDPが5％以上と特に大きく落ち込んだ。南コーカサスのGDPは、消費の回復と輸出の大幅な好転により弾みがつき、2021年には5.8％へと急反発が見込まれる。その牽引役となっているジョージアでは、今年8％の成長が見込まれている。ジョージアの回復は、マクロ経済の支援が引き続き行われないため、2022年には5.5％へとわずかに減速し、2023年は5％となるとみられる。

「南コーカサス諸国、特にジョージアは、内需の好転と外部パートナーの回復に支えられ、2020年のショックから力強く回復している。」と、世界銀行南コーカサス地域局長のセバスチャン・モリネウスは述べた。「ただし、インフレが上昇し労働市場の回復が遅れる中、ワクチン接種の加速が引き続き重要な優先課題である。さらに、持続可能な回復とは、環境に配慮した、強靭で包摂的なものである。国営企業の改革、人的資本の拡充、イノベーションとデジタル・トランスフォーメーションの促進が、生産性を向上させ得る一方、経済のバッファーを再構築し、気候変動の影響に備えることが、強靭な成長を実現することになる。」

2022年、ヨーロッパ・中央アジア地域の成長率は、外需と内需が安定し、感染症対策としての給付金が打ち切りとなるため、3.4％へと減速するとみられる。この見通しは、感染症の流行が続き、特にワクチンへのアクセスが均等でなく、接種に対する躊躇もみられるため、依然として極めて不確定である。同地域の回復にはインフレの急上昇が伴っており、引き続き財政的圧迫の影響を受けやすいが、外部の融資条件の突然の引締めや政策の不確実性と地政学的緊張の高まりが財政的圧迫のきっかけとなりかねない。

同報告書は、世界銀行組織調査とビジネスの動向調査のデータを用いた特集を組み、今回の感染症危機は企業に対し様々に異なる深刻な影響を与えたと分析している。域内の企業では平均して、月間売上高と常勤従業員の人数が大きく減少した。今後6カ月間に債務残高の滞納に陥るだろうと回答した企業は、今年5月までに4社に1社に上った。創業後の年数が短く、女性が経営する小規模事業では、当初に減少した売り上げが好転するに至っていなかった。

危機は多くの企業にとって壊滅的となり得るが、生産性の低めの企業から高めの企業に資源を再配分するという肯定的な面を伴うことも多い。これについては、ヨーロッパ・中央アジア地域でも、より複雑な市場を備えた国を中心にエビデンスが確認されている。実際、危機以前に労働生産性の高かった企業は、低かった企業と比べ、売り上げと雇用者数の減少が極めて小幅にとどまっていた。また、生産性の高い企業の方が、オンラインでの事業活動とリモートワークを増やすことで危機に適応できる可能性が高かった。

「競争が果たす役割は重要だ。競争はダイナミズムと結びついており、企業にイノベーションの動機を与え、効率性が高めの企業の参入と成長を推し進める一方、効率性が低めの企業のスムーズな退場を可能にするからだ。」と、アスリ・デミルギュ-クント世界銀行ヨーロッパ・中央アジア地域総局チーフ・エコノミストは述べた。「より競争力のある市場と競争保護のためのより強力な政策を備えた国においては、生産性が高めの企業への再配分がさらに大規模にみられた。」

どの国も経済回復の段階に入ると、政策担当者が適切な範囲で極力早い時期に、広範な政策支援措置を段階的に廃止し、競争力のあるビジネス環境の強化に集中することが重要になる。そうした環境こそが、強力な回復、将来の危機に対する強靭性、持続可能で長期的な経済成長の鍵となるからだ。