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プレスリリース 2021年9月27日

東アジア・太平洋地域の景気回復に停滞感

ワシントン、2021年9月27日、と世界銀行は本日発表した「東アジア・太平洋地域 半期経済報告書2021年10月版 」の中で指摘している。

同報告書によると、経済活動のペースは2021年第2四半期に入って落ち始め、域内の大半の国で成長見通しが下方修正された。中国経済に8.5%の成長が見込まれる一方、域内のその他の国々の成長率は、2021年4月の予測を2%ポイント近く下回る2.5%にとどまる見通しだ。就業率と労働人口は落ち込み、2021年は危機の前と比べ最大で貧困層の数が2,400万人が貧困から抜け出せないと予測される。

「東アジア・太平洋地域の途上国では、経済回復の歩みが反転している。」と、世界銀行のマヌエラ・フェッロ東アジア・太平洋地域総局副総裁は述べた。「2020年、世界のほかの地域が苦戦する中、東アジア・太平洋地域は新型コロナウイルス感染症の封じ込めに成功していたが、2021年に入り感染者数が増加したことで2021年の成長見通しが悪化している。一方で、同地域はこれまでも危機以前より強靭になっており、今回もまた適切な政策があればそれは可能なはずだ。」

新型コロナウイルス感染症の感染が再拡大し一向に衰えないことによる打撃で、長期的に成長が妨げられ格差が拡大する懸念がある、と同報告書は指摘する。今回の危機がなければ成長が見込めた企業が破綻することで、貴重な無形資産が失われる一方、破綻を免れた企業も生産的な投資を控えている。特に大きな打撃を受けているのは、規模が小さめの企業だ。大半の企業が困難な状況にあるが、大企業は売上減少が小幅で済み、高度なテクノロジーを導入し、政府の支援を受ける可能性が高い。

家計への影響も甚大だが、特に貧困世帯の場合、所得を失い、より深刻な食料不足に直面し、子供が学びの機会を得られず、困窮の挙句に乏しい資産を手放す可能性が高い。結果として、発育阻害、人的資本の消耗、生産性資産の損失が発生し、そうした世帯の将来の所得が低下することになる。また、企業間の格差拡大も労働者間の格差を広げかねない。

「新型コロナウイルス感染症の拡大抑制のためにワクチン接種と検査を加速すれば、事態が深刻な国でも、早ければ2022年前半にも経済活動を再び活性化し、来年の成長率を2倍に高めることができるかもしれない。」と 世界銀行のアディテイヤ・マトゥー東アジア・太平洋地域総局チーフ・エコノミストは述べた。「ただし長期的には、同地域は成長鈍化と格差拡大という貧困化要因を今世紀初めて同時に経験する脅威に直面しており、これを防ぐには、より踏み込んだ改革しかない。」

同報告書は、インドネシアとフィリピンを含め、域内の大半の国々において、2022年前半までに人口の60%以上がワクチン接種を完了できるとみている。感染が終息しないまでも、死亡率が大幅に減り、経済活動の再開は可能になるだろう。

ただし、同地域が長期的に新型コロナウイルス感染症と向き合うためには、4つの分野で本格的な取組みが求められるだろう。ワクチン接種への躊躇とワクチン供給量の制約への対処による接種者数の頭打ち防止、検査・追跡・隔離の強化による感染の抑制、輸入品への依存緩和のための域内でのワクチン生産の拡大、新型コロナウイルス感染症の長期化に備えた保健システム強化、の4分野である。いずれの分野においても各国の取組みには、機能が限られた国を中心に、国際援助が必要である。

新型コロナウイルス感染症の封じ込め以降の成長加速と包摂性の確保には、総合的な戦略が必要となる。同報告書は、テクノロジー普及の加速が、今回の危機後の生産性向上、教育の民主化、国家組織の改革の実現に向けてプラスに働くとしている。ただし、同時に補完的な改革も必要となる。企業がテクノロジーを事業に組み込むスキルを習得できるようにするには、貿易と投資への開放性と、企業による新テクノロジー導入のインセンティブを強化する競争政策が求められる。教育分野では、授業の質とカリキュラムの妥当性を向上させる改革が大幅に遅れてきたが、これを実施することで、新たな学習テクノロジーの恩恵をより多くの人にもたらすことができるかもしれない。


プレスリリース番号: 2021/021/EAP

お問い合せ

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+1(202) 458-0152
ksmithies@worldbank.org
東京:
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(+81-3) 3597-6650
yhiraki@worldbankgroup.org
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