ワシントン、2021年8月9日—世界銀行グループ理事会は8月5日、2021年度(2020年7月1日~2021年6月30日)の監査済み財務諸表を承認した。同財務諸表は、世界銀行グループ各機関の健全な財務体質、新型コロナウイルス感染症や貧困拡大等への対応のための援助受入国からの大規模な資金需要、そして出資国および資本市場からの継続した支持を反映した内容となっている。
2021年度のコミットメント総額の大部分は、新型コロナウイルス感染症による保健・経済への影響に関連する施策に充てられた。今回の世界的な感染症流行に対し、世界銀行グループのコミットメント総額は、2020年度を15%上回る843億ドルに増えた。
世界銀行グループによる2021年度の支援には、54カ国を対象に新たに承認された47億ドルのワクチン用資金が含まれる。活発な業務活動を展開しているにもかかわらず、世界銀行グループは引き続き健全な財務状況を維持し、2021年度の管理費総額は2020年度より減少した。
「世界銀行グループは過去15カ月間に、貧困の拡大、格差、新型コロナウイルス感染症の悪影響に対処するため、途上国支援を1,570億ドルまで増やした。」と、デイビッド・マルパス世界銀行グループ総裁は述べた。「この過去に例のない規模のコミットメントは、各国による保健システムの強化、貧困・脆弱層の保護、雇用と事業活動の支援、経済成長の促進、環境に配慮した強靭で包摂的な回復の基盤構築に充てられた。」
世界銀行グループ4機関の財務諸表には、各機関のマネジメントの議論と分析も掲載されている。4機関とは、中所得国に融資と助言を提供する国際復興開発銀行(IBRD)、最貧国を支援する国際開発協会(IDA)、民間セクターへの支援を手がける国際金融公社(IFC)、途上国にインパクトの大きな外国直接投資を促進する多数国間投資保証機関(MIGA)である。
4機関の財務諸表の要点は次の通り。
国際復興開発銀行(IBRD)
- 2021年度のコミットメント純額は9%増の305億ドル、実行総額は17%増の237億ドルとなった。2021年度のコミットメントの内、低中所得国向けが全体の42%を占めた。
- 貸出返済額を考慮すると、途上国に対する2021年度の貸出実行純額は136億ドルであり、これによりIBRDの貸出ポートフォリオは前年度比8%増の2,188億ドルとなった。
- IBRDの2021年6月30日時点の純投資ポートフォリオは、1年前の825億ドルから858億ドルに増えた。これは主に、債券発行により調達した資金(一部は2021年度の貸出実行純額により相殺)による。
- IBRDは21年度、資本市場において、中・長期債を発行し674億ドル相当を調達した。これらの資金は開発融資に充てられ、流動性強化に貢献した他、満期を迎える債務の借換えに充てられた。
- IBRDの自己資本規制比率である対貸出資本比(E/L)率は、昨年度をわずかに下回る22.6%だった。エクスポージャー総額の増加が、払込資本金12億ドルをわずかに上回ったからである。
- IBRDは前年度4,200万ドルの純損失を計上したが、2021年度は20億ドルの純利益を計上した。これは主に、非トレーディング・ポートフォリオでの時価ベースでの評価の正味含み益による。
- IBRDが正味利益配分の基準としている「配分可能な利益」は、前年度比1億ドル減の12億ドルであった。これは主に、損失引当金の増額による。
国際開発協会(IDA)
- 2021年度は、IDA第19次増資(IDA19)の初年度だが、偶然にも新型コロナウイルス感染症危機の始まりと重なった。IDA資金に対して高まる需要にIDAが応え続けられるよう、2021年4月、IDA加盟国は、第20次増資(IDA20)の対象期間を1年前倒しの2023年度からとすることに合意した。
- 2021年度、IDAのコミットメント純額は、前年度比19%増に当たる360億ドルであった。2021年度の実行純額は、前年度比9%増の165億ドルで、これにより融資残高純額は2020年度比10%増の1,778億ドルとなった。
- IDAの2021年6月30日時点の純投資ポートフォリオは、1年前の356億ドルから379億ドルに拡大した。これは主に、出資国からの拠出金と新規債券発行により調達した資金(一部は2021年度の融資とグラントの実行純額により相殺)による。
- IDAは2021年度、資金調達の一環として、国際資本市場において中・長期債の発行により94億ドルを調達した。
- IDAの自己資本規制比率を評価する「展開可能な戦略的資本(DSC)比率」は、2021年6月30日の時点で、前年度を5.4%下回る30.4%であった。IDAの資本は引き続き、業務遂行に十分な水準にある。
- 2021年度に計上した純損失は4億ドルで、前年度の純損失11億ドルを大きく下回った。純損失減少の原因は主に、非トレーディング・ポートフォリオでの時価ベースでの評価の含み益増加(一部は2021年度の開発グラント支出の拡大により相殺)にある。
- IDAが業務の経済効果のモニタリングに用いる財務の持続可能性基準である調整済み純利益は、前年度比3億ドル減の4億ドルであった。この減少の背景には主に、純投資利益の減少に加え、融資やその他のエクスポージャーの損失引当金の増加(一部は融資の受取利息増加により相殺)がある。
国際金融公社(IFC)
- 2021年度のIFCコミットメント総額は、前年度比11%増となる315億ドルに達した。この内37%は、低所得国や脆弱・紛争国向けだった。長期的投融資コミットメントは過去最高の233億ドルに増え、この内125億ドルはIFCの自己勘定分、108億ドルは主なパートナーからの動員額だった。さらに、IFCの短期的投融資は、前年度比26%増に当たる過去最高の82億ドルに上った。
- IFCは2020年度に17億ドルの純損失を計上したが、2021年度は42億ドルの純利益を計上した。株式ポートフォリオは、2020年度の含み損16億ドルから、2021年度は総額26億ドルの含み益となった。これは主に、株式評価額の回復による。投融資ポートフォリオにおける損失引当金総額は、ポートフォリオの信用度が全般的に高まったことで、2020年度の6億3,800万ドルから2021年度は2億100万ドルとなった。
- IFCの自己資本規制比率である「展開可能な戦略的資本比率」は、2020年度末の17.9%から、2021年度末には5.5%増の23.4%に上昇した。これは主に、払込資本金による、業務遂行に必要な資本の増加、利益剰余金の増加、年金制度の積み立て減少によるものである。
- IFCは中長期資金として2021年度は127億ドルを調達した。
多数国間投資保証機関(MIGA)
- 2021年度のMIGAのコミットメント総額は、52億ドルだった。
- 2021年度のコミットメントには、新興国・途上国における新型コロナウイルス危機の影響への対処に向けて民間投資家や金融機関を支援するMIGAの新型コロナウイルス感染症対応のためのファストトラック・ファシリティの下での35億ドルの保証が含まれる。
- 2021年6月30日時点での保証総額は、3億6,400ドル増の230億ドルに達した。新規保証は52億ドルだったが、同レベルのポートフォリオ縮小がこれを相殺した。
- 2021年度の純利益は、2020年度の5,720万ドルを上回る8,150万ドルであった。この増加は、2020年度は3,740万ドル増えた支払準備金から2021年度は820万ドルの戻し入れがあったことと、事業利益の660万ドル増(一部は投資利益の3,460万ドル減少により相殺)を反映している。
- MIGAの自己資本規制比率である資本稼働率は2020年6月30日時点の47.5%から44.5%に下がった。これは主に、運転資本増加の影響による。
世界銀行グループ4機関の財務諸表および各機関のマネジメントの議論と分析の全文は、以下のウェブサイトをご覧ください。