「ピンク税」などの貿易障壁がよりよい雇用や賃金の平等を阻害
ワシントン、2020年7月30日 — 貿易は女性の賃金を上昇させ、男女間の賃金格差の解消に役立つと同時に、女性によりよい雇用を創出する、と世界銀行グループの新報告書「女性と貿易:女性のための平等促進に貿易が果たす役割(仮題)」は結論付けている。国際貿易に積極的な国々は高度成長、イノベーション、生産性向上の傾向が強く、国民の所得を高め、より多くの機会を提供している。さらに、GDPに対する貿易額で測定した結果、貿易に前向きとされる国は、ジェンダーの平等の水準がより高い。
世界貿易機関(WTO)と合同で作成された同報告書は、男女別の新たなデータセットを使って、女性がいかに貿易の影響を受けているかを数値化した初の本格的取り組みである。世界銀行グループが開発した同データセットを用いることで研究者たちは、女性の雇用状況、雇用先の産業、所得レベル、世界貿易との関与の有無を分析することができた。今回の分析結果は、貿易政策が性別によっていかに異なる影響を及ぼしているかを各国政府が把握するために役立つ。
「過去30年間、貿易は貧困削減の原動力の役割を果たしてきた。本報告書は、適切な政策が実施されれば、ジェンダー格差削減の原動力にもなり得ることを示している。」と、マリ・パンゲストゥ世界銀行専務理事は述べる。「貿易は、女性のためのより良い雇用機会拡大を通じて、経済における女性の役割を広げ、男性との格差を縮めることを可能にする。そうした機会をとらえることが、新型コロナウイルス後の世界ではより一層重要になるだろう。」
同報告書は、いくつかの重要な研究結果を示している。例えば、グローバル・バリュー・チェーン(GVC)の一員である企業はそうでない企業と比較して、女性従業員の割合が多い(それぞれ24%、33%)。また、貿易に積極的な国の場合、製造業の賃金に占める女性の割合が平均5.8%ポイント高い。さらに、輸出が盛んなセクターで働く女性は、正社員である確率が高く、正規雇用であれば、便益、研修、雇用確保のいずれにおいても有利になる。
同報告書はまた、貿易政策における女性差別への対応の重要性を強調している。性別により明確に課税する国こそないものの、暗黙の不公平な扱いが、女性を経済的に不利な立場に追い込む「ピンク税」となっているに等しい場合もある。同報告書は、女性向けの製品は男性向けの製品よりも価格が高いと指摘している。例えば繊維セクターを見ると、女性向け衣料品の関税は、男性向けよりも27億7,000万ドルも高くなっており、2006年から2016年の間に消費格差が実質ベースで約11%広がった。こうした格差は世界中で女性消費者を不利な立場に追いやっている。
的を絞った政策を実施すれば、女性が貿易から受ける恩恵を最大化するのに役立つ可能性がある。例えば、国際市場への女性のアクセスを妨げる貿易障壁の撤廃、教育や金融サービス、デジタル・テクノロジーへの女性のアクセス改善などが挙げられる。各国政府は、性別による貿易障壁を撤廃するための貿易振興施策を策定することで、手間のかかる関税要件や貿易金融への限定的アクセス、国境での強奪や身体的嫌がらせに対応できるかもしれない。
世界銀行グループによる新型コロナウイルス感染症対策
世界銀行グループは、途上国に資金や知識を提供する世界有数の機関であり、各国が新型コロナウイルス感染症の世界的流行への対応を強化できるよう、広範かつ迅速な措置を講じている。具体的には、公衆衛生面を支援すると共に、各国が至急必要とする医薬品や医療機器を確保できるよう働きかけ、民間セクターが事業を継続し雇用を維持できるよう支援している。100カ国以上が貧困・脆弱層を保護し、企業を支援し、経済の回復を促進できるよう、今後15カ月間に最大1,600億ドルを投入する予定である。ここには、国際開発協会(IDA)からの500憶ドルのグラントおよび譲許的融資が含まれる。
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