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プレスリリース 2020年4月9日

危機への対応、成長への投資、政府への信頼拡大には透明性がカギ

(要約)

ワシントン、2020年4月9日 — 世界銀行は中東・北アフリカ地域(MENA)経済報告の最新版「透明性:中東・北アフリカ地域の成長に向けて」の中で、公的債務や雇用等、経済における重要課題についての透明性確保が域内の成長促進と政府への信頼拡大の鍵を握ると指摘している。

同地域は現在、新型コロナウイルスの感染拡大と石油価格下落という2つの危機に直面しており、過去に例のない状況の中で透明性強化の必要性が高まっている。2つの危機により、低迷傾向にあった域内の経済成長はさらに鈍化しているが、データが不透明であることも一因となっている。

同報告書は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、グローバル経済、各国の政策、社会がどのように変化するかを予測することは困難であるため、現在の危機がもたらす代償の推定規模は流動的であり、短期間で変わり得るとしている。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行と原油価格下落が民間セクターに影響を及ぼし、世界銀行グループによる2020年成長率の予測も変わっている。同地域の損失推定規模は、3月19日には2019年GDP(約1,160億ドル)の約2.1%だったが、4月1日の時点では約3.7%に増えている。

「新型コロナウイルス感染症の流行と原油価格下落という、別々だが相関関係のある2つのショックは、どの地域にとっても大きな脅威ではあるが、特に中東・北アフリカ地域にとっては大きな問題として立ちはだかっている。世界銀行は各国政府が誰も取りこぼすことなく2つのショックを乗り切っていけるよう支援を拡大する。」と、世界銀行のフェリード・ベルハジ中東・北アフリカ地域総局副総裁は述べた。「だが、人々に新たな希望をもたらすために、我々は学び変化を起こさなければならない。地域全体で、透明性を確保することにより、今後数年、数十年単位で政府への信頼を高めつつ成長していくことが可能になる。」

同報告書によると、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは域内諸国に4つの形で影響を及ぼしている。まず、公衆衛生のレベル低下である。次に、同地域の財とサービスに対する世界的な需要の落ち込みである。そして、社会的距離を維持する措置が講じられたために、各国内で需給が共に落ち込んでいる。最後に重要な点として原油価格が下落しているため、原油輸出国には直接的な損害となり、域内の送金、投資、資金フローが低迷しているため、原油輸入国には間接的打撃となっている。

同報告書は、各国が2つの段階を併用した政策で対応するよう提言している。1つめは、公衆衛生上の緊急事態とその結果としての経済縮小に対応することで、2つ目は、債務の透明性や国営企業の再編等、斬新で予算に大きな影響のない改革に着手することだ。

「今、透明性に投資すれば、域内の不信や政府の説明責任欠如といった悪循環を断ち切ることにつながる」と、ラバ・アレズキ世界銀行中東・北アフリカ地域総局チーフエコノミストは述べた。

同報告書は影響の大きさを予測するだけでなく、今回の危機以前から域内に存在する課題として、特に成長の鈍化について検証している。過去20年間に同地域の一人当たりGDPの伸びが他の地域同様であったと仮定すると、現在の一人当たり実質GDPは少なくとも20%は大きかったはずだと報告書は指摘する。

同地域の成長低迷は透明性の欠如によるところが大きい。中東・北アフリカ地域は2005年以降に入手可能なデータと透明性が落ち込んだ唯一の地域であり、特に以下の2つの分野が大きな問題となっている。

  • 債務の持続可能性の分析は危機後について検証するために重要となるが、データの透明性が十分でないために正確な分析が困難である。域内では国によって債務の報告基準が大きく異なるため、世界銀行のエコノミスト等、外部のアナリストが重要な情報にアクセスできないでいる。
  • 国によって雇用の定義が異なるため、失業者やインフォーマル・セクターの労働者の数が明確でない。

4月2日、世界銀行は同地域の国々を対象に第一弾となる支援を発表した。

状況は流動的だが、同報告書は2020年4月1日時点のデータに基づいている。


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