ワシントン、2019年12月19日—新興国・途上国(EMDEs)における債務残高は2018年、8年連続で拡大を続けて過去最大の55兆ドルに達し、約50年間で最も速いペースで、かつ最も広範囲に、最大規模まで達したことになる-世界銀行グループは新報告書「増え続ける世界債務(Global Waves of Debt)」でこう指摘し、経済政策を強化し、金融面のショックの影響を受けにくくするため早急に行動を起こすよう各国の政策担当者に強く促している。
同報告書は、1970年以降に100カ国以上で発生した累積債務として特に大きな4つの事案について総合的に検証している。途上国における債務残高の対GDP比は、2010年に債務拡大が始まって以降、54%ポイント上昇して168%となっている。平均すると、対GDP比は、年間約7%ポイントの上昇となり、これは、1970年代のラテンアメリカ債務危機の3倍近いペースである。更に、今回の債務拡大は極めて広範囲に及び、公的部門と民間部門の両方で見られる他、事実上、世界中の全地域で確認されている。
「この債務拡大の規模、速度、範囲は誰にとっても他人ごとではないはずだ。」と世界銀行グループのデビッド・マルパス総裁は指摘する。「債務管理と透明性確保を各国の政策担当者が最優先課題とすべき理由もそこにある。成長と投資を促進し、背負った債務が国民のためのよりよい開発成果に確実につながるようにする必要がある。」
同報告書によると、世界的に過去最低水準の金利が広がっているため、今のところリスクは軽減されている。とは言え、過去50年間の記録から、その危険性は明らかである。1970年以降、途上国における急激な債務拡大521件の内、約半数に金融危機が重なり、国民一人当たり所得と投資を著しく減少させたのである。
「過去を見ると、途上国では大幅な債務拡大と金融危機が重なることが多く、国民が大きな代償を支払うことになる。」と、世界銀行グループのジェイラ・パザルバシオル 公正な成長・金融・制度(EFI) 担当副総裁は述べた。「政策担当者は、債務の持続可能性を高め、経済の混乱を防ぐために、早急に行動をとるべきだ。」
同報告書は、今回の債務拡大は過去3回といくつかの点で異なるとしている。まず、官民両セクターで同時に拡大が見られること、新しいタイプの債権者が関係していること、そして1つか2つの地域に限定されているわけではないことだ。中国は債務の対GDP比が2010年から72%ポイント上昇し255%となっており、世界全体の債務拡大を引き上げている。ただし、中国を除いた場合も途上国の債務残高は著しく高くなっており、EMDEsにおいては2007年の名目GDP比 の2倍となっている。
このような特徴は、政策担当者がこれまでに対応を迫られたことのない課題を突き付けている。例えば、現在、EMDEsの政府債の50%は非居住者投資家が占めているが、この割合は2010年と比較して相当に大きい。低所得国の場合は、こうした債務の大半が、非譲許的条件で提供されており、パリ・クラブによる債務処理枠組みに沿ったものではない。
こうした状況の中、政策担当者は必要に応じて債務処理を円滑に進めるためのメカニズムを構築する必要がある、と同報告書は指摘し、また債務の透明性強化も効果的だとしている。
更新日: 12/19/2019