バンコク、2019年4月24日 –東アジア・太平洋地域(EAP)の途上国経済の成長は、世界的な逆風と中国で続く政策主導による緩やかな景気減速を主な要因とし、2018年の6.3%から2019年と2020年は6.0%まで軟化する見通しである。とは言え、域内各国は、効果的な政策フレームワークに加え、経済の多様化、柔軟な為替レート、確かな政策バッファーなどの強いファンダメンタルズが大きく貢献し、2018年の金融市場変動を比較的首尾よく切り抜けた。
世界銀行は本日発表した「東アジア・太平洋地域 半期経済報告」の2019年4月版「逆風に立ち向かう」の中で、貿易政策をめぐる不透明感は幾分和らいだものの、世界全体でみた貿易の伸びは一段と減速する可能性が高いと指摘している。内需については、域内諸国の大半で底堅さが続いていることから、輸出減速の影響を一部和らげていると見られる。
「域内の貧困は既に歴史的低レベルにあるが、各国の強靭な成長によって貧困削減が更に進むだろう。事実、極度の貧困率は、2021年までに3%を下回る見込みだ。」と、世界銀行のビクトリア・クワクワ副総裁(東アジア・太平洋地域総局)は述べる。「しかしその一方で、域内では5億人が今なお経済的に不安定な状態にあり、再び貧困状態に陥る危険に瀕している。これは政策担当者が直面する課題の大きさを知る重要な事実である。」
中国では、政策主導によりなおも減速が続く結果、2018年には6.6%だった成長率が2019年と2020年は6.2%へと低下するだろう。2019年、インドネシアとマレーシアの成長率は横ばいに、タイとベトナムはわずかに低下すると見られる。フィリピンでは、2019年の国家予算承認の遅れにより成長率が抑えられるが、2020年には好転する見込みである。
域内の小国の成長見通しは引き続き明るい。ラオス人民民主共和国とモンゴルでは、大型のインフラ・プロジェクトにより成長加速が見込まれる。カンボジアでは引き続き大幅な成長が見込まれるが、予測より鈍い外需が主な要因となり、成長のペースは2018年を下回るだろう。ミャンマーでは、短期的には拡張的財政政策が成長を刺激し、中期的には近年の構造改革が成長を支える見込みである。パプアニューギニアは、2018年の壊滅的な地震被害から経済が持ち直しており、2019年の成長率は上昇するだろう。フィジーは成長率が引き続き上昇すると見られるが、サイクロン被害の復興作業が終わりつつあることから上昇ペースは鈍化するだろう。
「域内経済見通しは依然として明るいが、同地域は引き続き2018年以降顕著になった脅威の高まりに直面しており、なおも悪影響を被りかねない。不透明感は、先進国経済の更なる減速、中国経済の予想を上回るペースでの景気減速の可能性、決着のつかない貿易摩擦等、いくつかの要因により続いている。」と、世界銀行のアンドリュー・メーソン東アジア・太平洋地域総局チーフ・エコノミストは述べる。「一向に止まないこうした逆風に積極的に立ち向かって行く必要がある。」
こうした執拗なリスクには、短期的対応と中期的対応が必要であると、同報告書は詳細に論じている。短期的には、2018年の為替レート変動の際に活用された外貨準備の再構築等、薄くなったバッファーの強化が求められる。資本流出のリスクが和らいだ中、金融政策をより中立なものに調整することもまた必要になるかもしれない。そして中期的には、生産性向上、競争力強化、民間セクターのためのより良い機会の創出、各国の人的資本強化等、構造改革続行の重要性を強調している。
また、いくつかのリスクが高まった結果、最脆弱層を保護するための社会的扶助及び保険プログラムへの投資継続の必要性が浮き彫りになっている、と同報告書は指摘する。現在、域内の途上国は、人口の最貧困層20%に対する社会的扶助の普及率で見ると、他のどの途上地域よりも低い水準にある。
同報告書はまた、太平洋の島嶼国が、債務管理の改善、歳出の質向上、借入余地の創出を通じ、債務の持続可能性を確保することの重要性を強調している。太平洋島嶼国は、公的債務は比較的少ないものの、鈍い長期的経済成長の見通し、自然災害に対する大きな脆弱性、行政サービスとインフラの高いコスト等、構造的な要因が各国の過剰債務のリスクを高めている。
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