―持続可能な投資の促進に向けた共同研究―
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)と世界銀行グループは昨年10月、持続可能な投資の促進に向けて提携することで合意しました。最初の取り組みとして、債券投資における環境・社会・ガバナンス(ESG)の考慮について共同研究を進めてまいりましたが、このたび世界銀行グループの春季会合において報告書が発表されましたのでお知らせします。
世界銀行グループとGPIFによる新たな報告書は、ESGの要素を債券投資の運用プロセスに統合することが、リスク管理の強化につながり、より安定した投資リターンに貢献し得ると指摘しています。
同報告書は、一部の投資家では、ESGを債券リスク分析の一部としてみるだけでなく、ESGと「インパクト」投資を統合させる動きもみられるとしています。その方法としては、例えば、債券などのポートフォリオが環境や社会にもたらすインパクトを測定し、さらに進んで国際連合の「持続可能な開発目標」(SDGs)と関連づける手法などが挙げられています。
債券市場におけるESGの考慮については、こうした前向きな動きがみられる一方で大きな制約もあり、一層の普及を妨げています。ESGの標準的な定義がまだ確立されておらず、特に「社会」(S)の分野に関しては様々な見解があります。データについては、精度が高まりつつあり、情報源も多様になっているものの、新興国市場を中心にまだ十分とはいえません。このほか、債券の発行体(特に国債の発行体である政府)とのエンゲージメント(建設的な対話)の推進が株式と比べて難しい、信用格付や債券指数においてESGが果たす役割が不明瞭、ESGに焦点を絞った債券投資商品の不足といった課題もあります。
本報告書は、世界銀行、及び世界銀行グループの機関で途上国の民間セクタ―支援を行う国際金融公社(IFC)と共に作成され、債券ポートフォリオ全般でESG投資を促進するための実務的な提言を行っています。例えば、ESGの要素が債券投資に与える影響についてのより一層の研究、投資家が自身の取り組みをカスタマイズする際の原則や基準についてのさらなる検討などです。また、グリーンボンドやその他、目的を特定した債券市場に関しては、供給より需要が多いという問題があります。債券による持続可能な投資に対する需要の高まりに見合う、より革新的な投資商品の開発が求められています。
報告書は先行研究を踏まえたうえで、世界の30以上の主要な投資家やESGデータ提供会社、格付け機関などにインタビューを実施し、2018年4月3日に世界銀行グループとGPIFがワシントンで共催したワークショップでのフィードバックをまとめたものです。
GPIFと世界銀行グループは、様々な資産クラスでの投資決定にESGを考慮する取り組みの推進で連携しており、本報告書の作成はその一環です。
GPIF 髙橋則広理事長コメント
「GPIFはこのたびの共同研究における世界銀行グループの知見と貢献に感謝します。GPIFは昨年10月に投資原則を改定し、すべての資産クラスにおいてESGを考慮することで、被保険者のために中長期的な投資収益の拡大を図ると表明しています。今回の共同研究の成果も踏まえ、GPIFは債券投資におけるESGの考慮について、引き続き取り組みを検討してまいります。この研究成果が、他の機関投資家や研究機関などに広く活用されることを願っております。」
世界銀行グループ ジム・ヨン・キム総裁コメント
「持続可能な開発目標(SDGs)の達成には年間約4兆ドルが必要と見込まれますが、政府開発援助(ODA)だけでは毎年1,400億ドルにしかなりません。目標達成には、民間セクター、特に機関投資家の力がぜひとも必要です。GPIFは独自の戦略を駆使して、環境・社会・ガバナンスを投資活動へ織り込む道を切り開いており、民間セクターによる途上国への投資を模索する我々の大変重要なパートナーです。ESGを投資活動へ織り込むことは、より高いリターンを確保しつつ、途上国に必要な資金を提供でき、世界の貧困削減を達成するための賢明な方法であるということを他の投資家に強く示しています。」
以上