ワシントン、2017年10月31日 – 世界銀行グループが本日新たに発表した報告書「ビジネス環境の現状2018:雇用創出のための改革(Doing Business 2018: Reforming to Create Jobs)」は、雇用創出、投資誘致、競争力強化のためにビジネス改革を実施した国がこの1年間で119カ国、改革の件数は264件に上ったとしている。
中小の国内企業のビジネス環境をモニタリングする同報告書は今年で発行15周年を迎えるが、その間に3,188件のビジネス改革が実施されている。
「民間セクターが繁栄できる環境が整っている国やコミュニティは、雇用の創出をバネに状況を大きく改善することが可能だ。公平で効率的、かつ透明性の高い規則は、ガバナンスを向上させ、不正への対応策になる、と報告書は呼びかけている」と、世界銀行のクリスタリナ・ゲオルギエヴァ最高経営責任者(CEO)は述べる。
この1年に実施されたすべての改革の内、78%に当たる206件の改革は途上国が占めた。特に、サブサハラ・アフリカ地域は83件と2年連続で記録を更新し、南アジア地域も過去最多の20件を記録した。改革の多くは、金融アクセスと新規事業の登記に重点を置いたもので(共に38件)、貿易促進に重点を置いた改革も33件と多数を占めた。
中小企業の設立・経営を容易にするビジネス環境の年間総合ランキングは、昨年同様1位ニュージーランド、2位シンガポール、3位デンマークで、これに韓国、香港特別行政区、米国、英国、ノルウェー、ジョージア、スウェーデンが続いた。
改革により改善が見られた今年の上位10カ国は、ブルネイ・ダルサラーム国(2年連続)、タイ、マラウイ、コソボ、インド、ウズベキスタン、ザンビア、ナイジェリア、ジブチ、エルサルバドルであった。上位10カ国に、あらゆる所得水準と規模の国が揃ったのは今年初めてである。また、半数(エルサルバドル、インド、マラウイ、ナイジェリア、タイ)が、初のランク入りであった。
「公共政策は、中小企業の設立・経営・事業拡大に大きな役割を果たす。各国政府は、自国の取り組みの根拠となる客観的データを、これまで以上に『ビジネス環境の現状』から得ようとしている。同報告書のデータは透明性が高く、一般市民もアクセス可能な事から、市民は企業・家庭・社会に恩恵をもたらす改革を実施するよう政府に求めることが可能である」と、世界銀行のシャンタ・デバラジャン開発経済担当シニア・ディレクターは述べる。
「ビジネス環境の現状」は、発行以来、モニタリング対象の190カ国の内186カ国におけるビジネス改革を記録してきた。この15年間で最も多くのビジネス改革を実施した国はルワンダ(52件)で、これに今年初めてトップ10にランキング入りしたジョージア(47件)が続き、更にカザフスタン、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国(共に41件)となっている。
この15年間に最も多かった改革分野は「事業設立」の要件緩和で626件に上った。その結果、中小の新規事業設立の所要日数は、世界全体で2003年の52日から半分以下の平均20日にまで短縮された。また、起業家が少なくとも1件の事業設立手続きをオンラインで完了できる国は、2003年当時のわずか9カ国から、65カ国にまで増えている。同様の進歩は、報告書が取り上げるその他の分野でも見られる。
「『ビジネス環境の現状』は今年15周年を迎えるが、特に歓迎すべきは、改革の多くが、それを必要とする国、またはセクターで実施されているという点だ。報告書はこれからも、起業家が性別にかかわらず直面する様々な障壁を浮き彫りにすると共に、効果的な政策転換に向けて貢献していく」と、同報告書を作成した世界銀行のリタ・ラマーリョ グローバル指標・分析担当局長代理は述べた。
報告書はまた、「事業設立」「不動産登記」「契約執行」の3つの指標について、特に女性にとっての障壁をモニタリングしている。コンゴ民主共和国では今年、女性による会社登記の際に夫の許可を必要とする要件が撤廃されたが、同報告書はこれを歓迎すべき改革事例として取り上げている。しかし、女性起業家に制約を課している国は今なお36カ国に上り、既婚女性の事業設立に男性よりも多くの手続きを義務付ける国は22カ国、女性による不動産の所有・使用・譲渡に制限を設けている国は14カ国を数える。
同報告書が紹介する2つのケーススタディはいずれも透明性に関するもので、事業登記と土地管理のデータを分析し、情報の透明性と入手可能性が高い国ほど、腐敗や贈収賄の度合いが低い事を明らかにしている。建築基準策定への民間セクターによる関与を分析した3件目のケーススタディは、こうした基準がコスト増と利害対立をもたらす傾向にあると指摘している。4件目のケーススタディは、フランス、スロベニア、タイの3カ国で実施された倒産処理制度改革の成功例を示し、他国の参考になるような経験を紹介している。
地域別に見ると、東アジア・太平洋地域では、この1年間に45件の改革が実施された。同地域には、総合ランキング上位10カ国の内2カ国(シンガポールと香港特別行政区)と、改善の大きく進んだ今年の上位10カ国の内2カ国(ブルネイ・ダルサラーム国とタイ)が含まれている。この15年間に同地域で実施された改革は371件に上る。
その結果、新規事業設立の所要日数は、2003年の50日から現在は半分以下の24日まで短縮された。
ヨーロッパ・中央アジア地域では、この1年間に44件の改革が実施された。同地域には、総合ランキングで上位10カ国に入ったジョージア(9位)と、改善の大きく進んだ今年の上位10カ国の内2カ国(コソボとウズベキスタン)が含まれる。改革に積極的な同地域ではこの15年間、計673件の改革が実施された。同地域での新規事業設立の所要日数は、2003年の43日から、現在は10.5日まで短縮されている。
ラテンアメリカ・カリブ海地域では、計26件の改革が行われ、エルサルバドルが初めて、改善の大きく進んだ上位国にランク入りした。この15年間に、同地域で実施された改革は398件に上る。同地域の事業設立所要日数は、15年前の平均78日から、現在は38日と短縮した。
中東・北アフリカ地域の国々は、この1年間に29件の改革を実施した。同地域では、この15年間に292件の改革が実施された。その結果、事業設立所要日数は2003年の平均43日から17日に短縮された。しかし、同地域はジェンダー関連の問題で後れを取っており、女性起業家に追加的な制約を設けている国は14カ国に上る。
南アジア地域では、域内全8カ国のうち6カ国が20件の改革を実施した。中でもインドは、同国による改革の年間実施件数として最も多い8件を占めた。同地域では、この15年間に127件の改革が実施された。15年前、50日以上かかった同地域の事業設立所要日数は、今では17日にまで短縮されている。
サブサハラ・アフリカ地域では改革が加速しており、この1年間に36カ国が83件のビジネス改革を実施した。同地域からは、改善の大きく進んだ今年の上位10カ国に3カ国(マラウイ、ナイジェリア、ザンビア)が入った。同地域では、この15年間に798件の改革が実施された。2003年の平均61日であった事業設立所要日数は、現在は22.5日にまで短縮されている。
報告書全文および関連データは以下のリンクをご参照ください:www.doingbusiness.org