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プレスリリース

南アジアが世界一の急成長地域に 成長持続には民間投資の喚起が必要

2016年10月3日


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Amit Dave/Reuters

経済成長率、2016年の7.1%から2017年は7.3%へと徐々に加速の見込み

2016年10月3日、ワシントン – 世界銀行が半期に一度発表する「南アジア経済報告(South Asia Economic Focus)」の最新版は、南アジア地域が2016年、低迷する世界経済にもかかわらずインドの堅調なパフォーマンスに牽引され、世界で最も急成長を遂げている地域としての地位を揺るぎないものにしたと指摘する。同地域の成長率は、2016年の7.1%から2017年は7.3%へと徐々に加速する見込みである。

本日発表された同報告は、南アジア地域が引き続き世界経済の中心として、中国の景気減速や先進国の景気刺激策を巡る不安定性、送金の落込みといった外的不安要因に対する強靭性を示したとしている。同地域の最大の課題は引き続き国内の要因であり、政情不安や、財政・金融面の脆弱性などが挙げられる。

「実態を調べると、南アジア全域において、経済成長を持続・加速させる将来の成長の重要な原動力である民間投資が未だ十分活用されていない事が分かる。域内各国は、民間投資と輸出の潜在性をフルに開花させる事で、経済活動の更なる加速、貧困削減と繁栄の共有の促進を図らなければならない」と、世界銀行のアネット・ディクソン副総裁(南アジア地域総局)は述べた。

同地域で大きな比重を占めるインドは、南アジア全体の成長のペースを決定づけている。インドの経済成長率は、2016年は堅実に7.6%を維持し、2017年には7.7%まで加速すると見られる。その背景には、モンスーンがもたらす降雨量の順調な推移、及び公務員給与の引上げにより消費が拡大され、成長に大きく貢献した事がある。中期的には、インフラ支出の拡大と投資環境の改善が、民間投資や輸出の拡大を後押しするだろう。

南アジアの民間投資は、実態を検証すると、期待される水準を満たしていない事が明らかとなった。全体としては、国内の貯蓄動員が依然としてカギを握っている。ただし、送金と外国直接投資がドル建てベースにすると極めて有効であることが証明されており、同地域はこの点を最大限活用すべきだろう。インドは、公共インフラを中心により一層の民間投資を呼び込むことが可能だが、パキスタンは財政状況が足かせとなり投資は限定的となるだろう。南アジア全域では循環的な景気変動が期待でき、GDPの成長に伴い投資拡大が加速する可能性がある。最終的には、投資環境が経済のより幅広い状況を決める事になる。しかしながら、域内のほとんどの国は厳しいビジネス環境に晒されており、その中でもより深刻な不確実性や不安定性に直面する国は投資家の信頼を損ねている。

「南アジアでは政治・経済面のリスクが蔓延しており、国内外両方からの投資を惹きつける魅力的な環境を構築すること、さらに不安定性を解消していく事が重要だ。エネルギーやインフラを整備し、規制を改善する事は、民間投資拡大、ひいては雇用創出と貧困削減にとって極めて重要である。」と、マーティン・ラマ世界銀行南アジア地域総局チーフ・エコノミストは述べた。

 

ファクトシート:多くの南アジア諸国にみられる成長加速の潜在性
域内諸国の多くが、短・中期的な成長加速の潜在性を示している。ただし、その実現のためには、成長の柱としての内需を維持しつつ、輸出を活性化し、民間投資の潜在性を解き放つ必要がある。

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アフガニスタン:経済は、今後3年間で徐々に回復すると見られ、そのペースは、2016年に0.5%まで落ち込んだ後、2017年には1.8%へと緩やかに上昇するだろう。今後3年間で期待されるこうした小幅な回復の実現には、政治的安定と強力な改革の実施が条件となる。財政状況は安定しているものの、同国の中期的な基本的開発ニーズを満たすにはドナーからの多額のグラントが必要とされるなど、リスクは依然として大きい。

バングラデシュ:内外の不安要因にもかかわらず、堅調な成長率を維持し、2016年は7.1%、2017年はやや減速するも6.8%となり、大半の景気指標は安定した水準を維持すると見られる。確実な雇用創出を伴う、持続可能で包摂的なGDP成長率を確保するためには、エネルギーやインフラを整備し、規制を改善する事が引き続き極めて重要である。

ブータン:経済活動は堅調で、成長率は2016年に7.1%、2017年は9.8%に達する見込みである。成長と貧困削減に貢献したのは、水力発電プロジェクトや、支えとなる財政・金融政策、低いインフレ率、安定した為替レートと外貨準備高の蓄積である。ただし同国は、大幅な経常赤字、未開発の民間セクター、若年層の高い失業率に対応していく必要がある。

インド:GDP成長率は引き続き力強く、2016年は7.6%、2017年は7.7%となるだろう。いずれも、農業の回復、公務員給与の引上げがもたらした消費、輸出による貢献拡大、中期的な民間投資の回復が見込まれるためだ。ただしインドは、成長に向けた貧困削減の加速や、包摂性の促進といった課題に直面している上、各分野の進捗を保健、栄養、教育、ジェンダー分野などの幅広い人間開発の成果につなげる必要性にも迫られている。

モルディブ:GDP成長率は、2016年の3.5%から2017年も3.9%と小幅な伸びが続くと見られるが、ロシアと中国を中心に外国からの観光客減少が足かせとなろう。観光業が依然として単独では最大のセクターであるが、建設業が成長の最も重要な原動力として観光業に取って代わった。高い債務レベルと若者のための経済的機会の欠如が依然として課題となっている。

ネパール:この一年は、地震、国境をめぐるインドとの問題、送金の減少など、ネパールにとって厳しい年であった。経済活動も回復し、わずか0.6%であった2016年の成長率は、2017年には5.0%まで上昇する見込みである。ほどよい降雨量をもたらしたモンスーンにより、農業と建設業の改善が見込まれると共に、住宅再建のためのグラントの実行拡大も助けになるだろう。

パキスタン:成長率は2016年の4.7%(要素費用表示。市場価格表示では5.7%)から、2017年は5.0%、2018年は5.4%へと中期的に徐々に加速するであろう。政府消費と個人消費の両方が経済成長の一番の推進力となっているが、投資拡大により、成長コンポーネントに若干のリバランスがあるだろう。その主たる原動力となるのは、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)計画の下でのインフラ・プロジェクトならびに関連する公共投資である。これらのプロジェクトは、国内の建設業の成長加速に貢献し、発電を拡大するであろう。ただし、持続可能かつ包摂的な成長と貧困削減のためには、民間セクター投資の拡大と、中期的なインフラ整備と共に、財政再建と構造改革への注力を継続する事が求められる。

スリランカ:経済成長は、個人消費の伸びと2015年に保留されていた投資が始まり、2016年に4.8%、2017年は5.0%になると見られる。スリランカは、持続的な成長と開発を確実なものとするため、優先度の高い構造改革を早急に進めることで、競争力向上、ガバナンス改善、財政バランスの実現を図らなければならない。

メディア連絡先
ワシントン
Joe Qian
電話: +1 (202) 473-5633
jqian@worldbank.org
東京
平井 智子
電話: +81 (3) 3597-6650
thirai@worldbankgroup.org


プレスリリース番号:
2017/058/SAR

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