2016年9月27日、ワシントン— 世界銀行理事会は本日、ジム・ヨン・キム世界銀行グループ総裁の2017年7月1日からの2期目再任を全会一致で決定した。
理事会は、キム総裁の1期目4年間における世界銀行グループ職員及び幹部の目覚ましい成果を称え、これらはいずれも同総裁の卓越したリーダーシップとビジョンによると確認した。理事達はまた、この期間に理事会の強力な支援の下で同グループが達成したいくつかの業績を挙げ、これを讃えた。
さらに理事会は、2012年7月にキム総裁が着任して最初の年に設定し出資国に支持された、2030年を期限とする極度の貧困撲滅と繁栄の共有促進という意欲的な2つの新目標が、途上国の下位40%の人々の所得を向上させていると指摘した。この2大目標達成のために理事会は、セクター、地域、そして世銀グループ内における知識の交流を促進する「グローバル・プラクティス」を設置するという世界銀行グループの新戦略を承認している。
新たな開発モデルが設定されると世界銀行グループは、出資国の支援を受け、新戦略を進めるための財務基盤の整備に動き出した。加盟国はこの改革プロセスを支持し、最貧国を支援する世界銀行の機関である国際開発協会(IDA)に、過去最高の520億ドルの増資を決めた。世界銀行幹部はまた、中所得国を支援する世界銀行の機関である国際復興開発銀行(IBRD)の貸出能力の強化を行った。2018年度、IBRDの貸出による収益がほぼ10年ぶりに管理費を上回る見通しとなっており、財務の持続可能性が大きく強化される事が期待される。
更に世界銀行グループは、支出の見直しを通じて4億ドルのコスト削減を行い、その一部を2大目標達成に向けた取組に投入した。理事達は、支出の見直しが順調に進んでおり、それによる援助受け入れ国への支援拡大とより短期間での成果達成の実現を歓迎した。キム総裁の1期目(2013~16年度)に世界銀行は、金融危機を除き過去最高水準となった貸出需要にも対応する事ができた。具体的には、2016年度、IBRD/IDAの支援は1,600億ドルを超え、IFCとMIGAもまた民間セクターに対して過去最大の資金提供を行った。
理事会はまた、キム総裁のリーダーシップの下で行われた、グローバル公共財としてのアジェンダへの取り組み強化と革新的資金調達を歓迎した。エボラ危機発生の際は、流行国3カ国における感染拡大を食い止めるための迅速な緊急資金確保が進められた。エボラ危機の教訓を活かし、世界銀行グループは、各部署から専門家を集めて次なる大規模な感染症流行に備えて、迅速な資金支援を可能にする初の仕組みである「パンデミック緊急ファシリティ」を考案した。2017年初頭より運用が開始される予定である。
革新的な資金調達としてはこの他、AAAの格付け取得を含むIDAによる世界の最貧国に対する支援の拡大や、難民危機を受けた、中所得国の受入国への必要な開発資金確保のための新たな取り組み「グローバル譲許的資金ファシリティ」がある。
理事達は、キム総裁が組織を挙げて、知識・資金面の両面で気候変動への対応強化を図っている事実を評価した。世界銀行は2015年秋、援助受け入れ国の需要次第で、気候変動対策資金を2020年までにコミットメント総額の28%にまで引き上げると発表している。
キム総裁は、民間セクターや他の国際機関とのパートナーシップを極めて重視している。例えば初の試みとして、国連の潘基文事務総長と共に、危機的状況にあるいくつかの地域を合同で訪問している。
キム総裁在任中に世界銀行グループは、グローバルかつ包摂的という機関の特性を反映し、職員の多様性拡大を大きく進めた。具体的には、国際金融機関(IFI)として初めて男女平等認証(EDGE)を取得した他、幹部のジェンダー平等の達成、アフリカ系副総裁を過去最高の8名に増員、さらにIBRDにおける技術系職員と管理職に占めるサブサハラ・アフリカ地域とカリブ海地域出身者の割合を12.5%にするとの目標を初めて達成した。
理事会との会合においてキム総裁は、組織の安定と職員による取り組みの深化を今後の最優先課題とすると述べ、献身的に業務に当たっている優秀な世界銀行職員に対する賛辞を送った。同総裁はまた、今年進められているIDA第18次増資に触れ、最貧国のために過去最高の増資を確保する必要があるとし、ドナー国と協力しながら、限りある開発資金の活用に革新的な新手法を開発する必要性を強調した。
キム総裁は長期的課題として、近年の勢いを力に、進捗が最も必要とされている以下の3分野に注力していくと述べた。
1つ目は、経済成長促進である。そのために、インフラ整備に対する民間セクター投資の動員、より大規模な開発資金の動員についての各国への呼びかけ、既存資金と新たな資金による最大限の成果達成に向けた革新的資金調達と助言サービスの手法開発を進めていく。2つ目は、教育と保健、そして将来的に経済競争力をつけるためのスキルを含めた人材への投資である。3つ目は、達成された成果を損ないかねないリスクからのグローバル経済の保護である。
キム総裁は、これら3つの優先課題のあくなき追及に向けて、世界でも有数な世界銀行職員の専門性、知識、資金面での卓越した才覚を駆使すれば、世界銀行の2大目標達成に大きく歩を進めることができると断言した。
総裁選出プロセス
2011年3月21日、世界銀行グループ理事会は、オープンかつ透明で能力重視の総裁選出プロセスの指針(Selection Principles)を承認。同指針は2012年の総裁選で適用され、本日完了した総裁選出プロセスにおいても一義的な指針として用いられた。
選出プロセスは通常、在任中の総裁が、留任または退任の意向を理事会に通知した時点で開始される。歴代の総裁は、任期満了の早くて14カ月前、遅くとも4カ月半前までに意向を表明している。
候補者受付期間は理事会が設定する。推薦期間が終わり、理事会が最終候補者リストを発表した後、最終決定は理事会により採択される。