10年前の2006年度には140億ドルだったIBRDの貸出は、金融危機の起きた2010年度には中所得国からの需要が増し過去最高の440億ドルを記録した。危機の最中の2010年度にIBRD幹部が財務状況を分析した結果、貸出水準は、2013年度までには危機以前の10年間の実質平均レベルである150億ドル程度まで戻ると見込まれていた。確かにIBRDの2013年度の貸出は約150億ドルであったが、2016年度の需要はこれよりさらに100億ドル以上増え、250億ドルを上回ると予想されている。加えて、最貧困国を支援する世界銀行グループの基金である国際開発協会(IDA)は、前回の増資交渉でかつてない水準の資金を得、今年度は過去最高に近い支援が行われると期待されている。また、援助受入国が重要な政策の改革を実施する際の助言サービスといった、融資以外の支援に対する需要も拡大している。
現在の融資に重要な位置を占める開発政策融資(DPF)は、援助受入国の主要な改革を支援することで、成長源を多様化し、将来的な衝撃に備えるものだが、改革の内容は、各国ののニーズや直面する課題によって様々に異なる。
「途上国の政府は現在、景気低迷の中で、成長加速に向けた新たな方法を見出さねばならないというプレッシャーを受けている。長期的な成長傾向を確かなものにするには、法務、規制、組織・制度の広範な改革に加え、輸送分野の改革により、投資を呼び込む事が必要だ。構造改革に注力する事、これこそが、世界の名だたるエコノミストやG20各国からの提言である。」と、ヤン・ワリザー副総裁(公正な成長・金融・組織)と述べた。
世界銀行グループは、途上国自身が主導する改革実施への助言と支援に関して、長年にわたる経験を擁している。国別の深い知識、セクター別の専門知識、そして世界中で培った経験などは、他に類を見ない。
「DPFのような融資は重要な意味を持つ。世界銀行から金融市場に向けて、その国の改革が信頼に足り、最後まで遂行され、貧困層・脆弱層に恩恵をもたらすものである、というメッセージを発信することになるからだ。これは、IMFによる経済安定化の支援を大いに補完するものだ。」とキム総裁は述べた。
世界銀行が途上国の改革を支援するのは、そうした支援が多くの場合、成長加速に結びつく上、過去半世紀の間に実現された貧困撲滅の約3分の2が経済成長によるという事実に基づく。こうした改革を支援する世界銀行グループの助言と融資に対し、需要は循環的な動きを示してきた。現在、成長率が伸び悩む中で、高位中所得国から低所得国に至る世界銀行の援助受入国全体において、DPFに対する需要が急増しており、一次産品の輸出国か輸入国を問わず各種の改革が進められている。
「世界銀行グループは加盟国の協力の上に成り立っている組織であり、援助受入国がその開発目標を最大限実現できるよう協力して取り組む事が使命である。しかし、加盟国との協力の下、感染症の大流行、気候変動、強制移動といったグローバルな危機に立ち向わなければ、極度の貧困撲滅も繁栄の共有促進も決して実現しない事は明らかである。地域、国、市民の各レベルで、一つ一つ課題を解決していく事が求められる。」とキム総裁は述べた。