ニューヨーク、2015年6月12日—世界保健機関(WHO)と世界銀行グループは本日、4億人が基本的な保健医療サービスを利用できず、低・中所得国の人口の6%が医療費負担により極度の貧困に陥ったり、さらに貧困が深刻化する恐れがある、とする報告書「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成への軌跡」を発表した。
「本報告書は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成には程遠いという事に警鐘を鳴らしている。保健アクセスを拡大し、最貧困層が医療費負担のために経済的に困窮しないよう保護しなければならない」とティム・エバンス世銀保健担当グローバル・プラクティス・シニア・ダイレクターは述べている。
同報告書は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた進捗状況と経済面の保護の実態を把握するための初の共同政策評価である。
同報告書は、基本的な保健医療サービス(家族計画、妊産婦検診、熟練出産介助者の立ち会い、乳幼児への予防接種、抗レトロウィルス療法、結核治療、清潔な水や衛生設備へのアクセス)に対する2013年の世界のアクセス状況を検証した結果、少なくとも4億人がこれらのサービスの内少なくとも一つにアクセスがないとしている。
「世界で不利な立場に置かれている人々は、最も基本的な保健医療サービスでさえ受けられずにいる。公平性の実現こそが、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの要である。保健医療政策とプログラムは、最貧困層、女性と子供、農村部の住人、少数民族に対し質の高い保健医療サービスを提供することに焦点を絞るべきだ」と、世界保健機関(WHO)保健システム&イノベーション事務局長補佐マリー・ポール・キニー博士は述べた。
さらに同報告書は、37カ国において人口の6%が、医療費の自己負担により極度の貧困(1日1.25ドル未満の生活)に陥る、またはさらに深刻な貧困に陥る恐れがあるとしている。貧困ラインを1日2ドル未満にすると、この割合は17%に増えた。
「医療費の自己負担に伴いこれほど高い割合で貧困化が進むという今回の分析結果は、極度の貧困撲滅の目標達成に対する重大な脅威である。ポスト2015年の開発アジェンダへと移行するに当たり、今回の調査結果を踏まえて取り組みを進めなければならない。そうしなければ、世界の貧困層が取り残されてしまう恐れがある。」と、世界銀行グループのカウシィク・バス上級副総裁兼チーフエコノミストは述べた。
WHOと世界銀行グループは、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを目指す国は、基本的な保健医療サービスを人口の少なくとも80%に普及させ、医療費負担により貧困に陥る人がないよう保護するべきだとしている。
「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを目指す国が増える中、大きな課題の一つとなるのは、進捗状況をいかにして把握するかだ。本報告書は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを数値化し、保健医療サービスの普及と経済面の保護の両方について、主要な目標への達成状況を把握することが可能であると示している。」と、世界保健機関(WHO)の保健情報統計局長ティース・ブールマ博士は述べた。
WHOと世界銀行グループは、各国のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けた進捗状況について一連の年次報告を発表する予定であり、今回はその第1冊目となる。
「『測定できれば、実行できる。』と言われるが、世界各国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現に向けて歩みを進める中、足りない部分を特定し、進捗状況を効果的に測定することができれば、世界規模のこの取り組みにさらに弾みをつけることができる。各国がユニバーサル・ヘルス・カバレッジを実現し、より強靭な保健システムを構築するために、本報告書は重要なツールとなる」と、ロックフェラー財団のマネジング・ディレクター、マイケル・マイヤーズ氏は述べている。
同報告書は、ロックフェラー財団と日本の厚生労働省の支援により作成され、今年12月12日に開催される第2回「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デー」を半年後に控えて発表された。
報告書は2015年6月12日に国連にて発表されます。発表の模様は、ライブ・ストリームで配信されます。詳細は以下のウェブサイトでご覧いただけます。https://www.worldbank.org/en/events/2015/06/12/trackinguhc (#UHC, @WHO and @WBG_Health)