ワシントン、2014年10月29日—世界銀行グループが本日発表した報告書「ビジネス環境の現状」の最新版は、各国政府が、自国の起業家により良い規制環境を提供するためこの1年間、引き続き各種の改革を行なったと指摘している。また、規制プロセスの効率化と、企業、貿易、為替を支える法制度強化の双方を進めた国の方が、より成長と開発を促進できたとしている。
「ビジネス環境の現状2015:効率化のさらに上を目指して(Doing Business 2015: Going Beyond Efficiency)」と題した同報告書は、昨年1年間、123カ国で起業家が自国の規制環境の改善を確認したとしている。同報告書は、世界 189カ国において2013年6月から 2014年6月までに実施された230件のビジネス改革を取り上げている。この内145件は、ビジネス規制に伴う複雑な手続きやコストの削減を目指したもの、85件はより強固な法制度構築を目指したものであった。地域別に見ると、サブサハラ・アフリカ地域で最も多く改革が行なわれた。
「各国の成長の成否は多くの変数に左右されるが、特に見落とされがちなのは、企業やビジネスを円滑に回すための基本の部分だ」と、世界銀行のカウシック・バス上級副総裁兼チーフエコノミストは述べる。「具体的には、事業立ち上げの容易性、契約履行に要する時間や効率、貿易手続きに関する規制などだ。こうした規制の改善には、ほとんどコストはかからない上、成長と開発の状況を格段に引き上げることができる。」
「ビジネス環境の現状」シリーズは、最初に発表されて以降これまでに、ビジネス環境を改善する規制改革を2,400件以上検証してきた。こうした取り組みにより、世界各国の小規模事業が目に見える成果を見せている。例えば、コロンビアの起業家が海外から主原料を輸入するために要する日数は、10年前には48日間であったが、今ではわずか13日間となっている。ポルトガルの起業家の場合も同様だ。セネガルでは、10年前には新規事業の立ち上げに57日間を要したが、現在はわずか6日間となっている。これは、ノルウェーの5日間と比べても、わずか1日多くかかるに過ぎない。さらにインドでは、10年ほど前までは、起業家が事業拡大のための資金を確保をしようと思っても、金融機関が信用度を確認するための情報システムへのアクセスを持たなかったことから、融資を受ける事は難かしかった。しかし今では、一部の高所得国と肩を並べるほど高いレベルの信用情報機関が設置・普及したことから、零細企業でも信用履歴が良好であれば、融資を受け、より多くの従業員を雇うことができるようになった。
「ビジネス環境の現状」は毎年、総合ランキングに加え、前年と比較して規制改革の改善が大きく進んだ国を発表している。本年度の上位10カ国は、タジキスタン、ベナン、トーゴ、コートジボワール、セネガル、トリニダード・トバゴ、コンゴ民主共和国、アゼルバイジャン、アイルランド、アラブ首長国連邦であった。これら10カ国のうち、5カ国はサブサハラ・アフリカ地域である。
「グローバルな収斂プロセスが続いている」と、世界銀行グループ開発経済総局のアウグスト・ロぺス=クラロス・グローバル指標・分析担当局長は述べる。「報告書は、複数の低所得国が引き続き、高コストで複雑なプロセスの撤廃や法制度の強化といった、より良い規制環境を目指した努力を行なっていると指摘している。こうした取り組みにより、自国の起業家の負担が軽減されるだけでなく、より望ましく効率的なビジネス環境が生み出され、やがては経済が上向き、人々の暮らし向上につながる。」
「ビジネス環境の現状」は今回初めて、バングラデシュ、ブラジル、中国、インド、インドネシア、日本、メキシコ、ナイジェリア、パキスタン、ロシア連邦、米国の人口1億人以上の11カ国については、第二の都市のデータも収集している。そして、地方の役割が大きい国では、たとえ同一国内であっても、1番目の都市と2番の都市の間で、規制の手続き、所要時間、コストに差異が生じる場合があるとしている。
本年度版の報告書はまた、調査対象の10の指標の内3つの指標についてより掘り下げて検証しており、来年はさらに5つの指標について同様の改善を行なう予定である。また、ビジネス環境の規制緩和に関するランキングは、最高位との差に基づいて算出される。つまり、ビジネス規制の世界的ベスト・プラクティスとの差が小さいほどポイントが高くなり、ビジネス環境が効率的で法制度が強固であることを示す。
ビジネス環境の規制緩和総合ランキングでは、シンガポールがトップを維持している。その他に総合ランキングで10位にランクインした国は、ニュージーランド、香港特別行政区、デンマーク、韓国、ノルウェー、米国、英国、フィンランド、オーストラリアであった。
『ビジネス環境の現状』報告書シリーズ
世界銀行グループの主要報告書である『ビジネス環境の現状』は、事業設立および経営、貿易、納税、破産手続きといった、その国の企業のライフサイクルを通じて適用される規制を分析している。ビジネス環境の総合ランキングは、10の指標に基づき、各指標の最高位との差異により189の国と地域をランク付けしている。本報告書は、企業および投資家に関わるビジネス環境の全ての側面を評価するものではない。例えば、財務管理の質、マクロ経済の安定性の他の側面、労働者の技術レベル、金融システムの耐性などは評価の対象としない。本報告書の分析結果はこれまで、世界中で政策議論を促進し、企業レベルの規制と国全体の経済成果との関連の研究を普及させてきた。報告書の作成チームは毎年、検証手法、データ収集、分析、評価の向上に努力を払っている。本プロジェクトはこれまで、多くの関係者からの貴重な意見に支えられてきた。世界各国のビジネス環境の現状に関する正しい理解と規制緩和のために客観的ベースを提供するという目標に向けて本プロジェクトは、さらなる質と効率性を追求して繰り返し検証を行なっている。今年は、『ビジネス環境の現状』シリーズのシリーズの12冊目に当たる。同シリーズの詳細はdoingbusiness.orgにて閲覧可能。facebook.com/DoingBusiness.org
世界銀行グループについて
世界銀行グループは、極度の貧困撲滅と繁栄の共有促進に向けた世界的取り組みの主導的な役割を担う。国際復興開発銀行(IBRD)、国際開発協会(IDA)、国際金融公社(IFC)、多数国間投資保証機関(MIGA)、投資紛争解決国際センター(ICSID)の5機関で構成されており、IBRDとIDAを総称して世界銀行と言う。100カ国以上に活動拠点を置き、各国の喫緊の開発課題に対応できるよう、資金援助や助言をはじめ各種のソリューションを提供。詳細は3機関の各サイトを参照。
世界銀行:www.worldbank.org MIGA: www.miga.org IFC: www.ifc.org