2014年6月30日、ワシントン DC –世界銀行(国際復興開発銀行、格付Aaa/AAA)は本日、世界銀行初のキャット・ボンド(大災害債券)の条件決定を行いました。期間3年、総額3000万米ドルのキャット・ボンドは、世界銀行が新たに設立した「新型世銀債発行プログラム」の最初の発行にもなりました。
本件により、今後世界銀行は「カリブ海諸国災害リスク保険機構」(以下CCRIF)の再保険機能を果たすことが可能となりました。CCRIFは、カリブ海諸国16カ国政府に対して、大型地震やハリケーンの発生時に迅速に保険金を支払い、加盟各国の災害への対処を支援するための機構です。2007年に日本政府からの拠出金を得て、世界銀行が中心となって設立。その後、カナダ・英国・フランス・アイルランド・バミューダーの各国政府・欧州連合(EU)・世界銀行・カリブ開発銀行による寄付金と、受益国からの保険料を活用して運営されています。最近では、カナダ・米国・メキシコの各国政府等の支援により、中央アメリカの国々の加盟も拡大しています。
キャット・ボンドの利払い並びに元本償還は、世界銀行とCCRIFが保険スワップ取引契約を結ぶことで手当てされています。予め設定した規模を超える自然災害が発生すると、キャット・ボンドの元本は、災害規模に応じてCCRIFへ支払われ、その分だけ償還元本が減少する仕組みとなっています。
本キャット・ボンドの投資家への販売は、ガイ・カーペンター証券会社が行い、組成は同じくガイ・カーペンター証券、並びにミュンヘン再保険会社が共同で行いました。また、スイス・リー社は世界銀行へのアドバイザーを務めました。
2009年にマルチキャット・プログラムを設立して以降、世界銀行はキャット・ボンド市場で積極的に活動して参りました。同プログラムでは加盟開発途上国が共通の契約書類雛形を利用することで、キャット・ボンドの発行手続きの大幅な簡素化が実現されました。2009年と2012年には、メキシコ政府が同プログラムを活用してキャット・ボンドを発行し、地震とハリケーンの「災害リスクを資本市場に移転」するという画期的な取引を実現しました。このように、世界銀行はキャット・ボンド業務に深く関与して参りましたが、これまで自らがキャット・ボンドの発行体となったことはありませんでした。
「新型世銀債発行プログラムは、開発途上国並びに投資家双方にとって画期的なもので、世界銀行の災害リスク関連業務を一段と拡大させることができます。具体的には、災害や天候リスクのスワップの組成や仲介、不測の災害に備えるローンの提供、そしてマルチキャット・プログラムの業務にも寄与することができます。本件により、CCRIFは効率的に新プログラムを活用して、より有利な条件で災害のための保険業務を行うことが可能となります。一方、キャット・ボンドの投資家は、新たなリスクを選択することで運用ポートフォリオのリスクを分散し機会利益を向上させることができます。」と世界銀行 副総裁兼トレジャラーのマデリン・アントンシックは述べています。
「世界銀行の新型世銀債発行プログラムの発効を歓迎したい。今回のキャット・ボンドの発行により再保険市場に新たな機関投資家層の参加と資金の流入が期待されます。加盟国全てのためにCCRIFは最適な条件で災害リスクを軽減できるよう努力して参りました。今回のキャット・ボンドにより、これから災害保険市場への資金流入額が拡大し、より大規模な災害にも対応できるようになり、さらに保険金の水準もより安定的に推移していくと考えます。世銀初のキャット・ボンドの受益者となり、キャット・ボンド市場の拡大に寄与できたことを光栄に思います。」とCCRIF CEOのイザック・アンソニー氏は述べています。
2007年以降、世界銀行は再保険市場を活用してCCRIFの業務を支援しています。新型世銀債発行プログラムを使った、初の世銀自身によるキャット・ボンドの発行は、今後の世銀とCCRIFの更なるパートナーシップの発展に取って非常に重要な一歩となりました。
「この画期的なプログラムを応用することで、信用リスクをはじめとする様々な市場リスクの軽減が可能であり、その結果世界銀行自身の途上国への貸出余力も生まれます。」とマデリン・アントンシックは述べています。
「新たな世銀債発行プログラムの設立によって、公的セクターの資本市場の活用が一段と容易となり、同市場を活用した様々なリスクの軽減が活発になるでしょう。この意味において同プログラムは大変意義深いものとなりました。CCRIFのために世界銀行と共にこの記念すべきキャット・ボンドの発行に携わったことを大変光栄に思います。」とガイ・カーペンター証券のデイビット・プリベ氏は述べています。
「世銀初のキャット・ボンドの組成に携われたことを大変嬉しく思います。同時に、当社が引き続きCCRIFの主要再保険会社の一つであることを大変誇りに思っています。私どもは2007年のCCRIFの設立にも関わっており、カリブ海諸国の災害リスクを分散し、保険を活用して軽減するというこの画期的な構想が、様々な災害リスク軽減において引き続き重要な役割を果たしていることを非常に嬉しく思います。」とミュンヘン再保険会社のジョージ・ダッシュナー氏は述べています。
「自然災害及び気候変動に対処するための国家予算は益々増加しています。新型世銀債発行プログラムによって各国が抱える災害リスクを機関投資家にも負担頂く新たな金融手法が実現し、当社がその組成の一助となったことを大変光栄に思います。CCRIFが本プログラムの初の受益者となったことで、自然災害などによる不測の国家予算の出費に備えるためには、災害リスク管理が非常に重要ということが明らかになったと言えるでしょう。」 とスイス・リー社のマーチン・パーカー会長は述べています。
発行概要:
発行体: | 世界銀行(国際復興開発銀行:IBRD) |
発行額: | 3000万米ドル |
償還額: | カリブ諸国で発生したサイクロン及び地震が予め設定した規模を超えた場合、元本が災害規模に応じた保険金支払に充てられ、その分を差し引いた分が償還額となる。(債券の要項に準じる) |
発行日: | 2014年6月30日 |
金利: | 6ヶ月LIBOR + 6.30% (ただし最低金利 は6.50%) |
利払い: | 3ヶ月毎 |
償還日: | 2017年6月7日 |
世界銀行について
世界銀行(通称 IBRD:International Bank for Reconstruction and Development) は、1944年に設立が合意された国際開発金融機関で、現在188の加盟国が出資し運営しています。IBRDは加盟国への貸出・保証に加え、リスク管理サービスおよび分析・助言サービスも提供し、加盟国の公平で持続可能な経済成長と環境保全を両立しつつ、世界の貧困を削減することを目指しています。最終的な目標は、貧困を撲滅し世界中の人々の生活水準を改善することです。貸出資金を調達する(借入れる)ために、世界銀行は60年以上にわたり国際資本市場で債券を発行しています。詳しくは世界銀行財務局のウェブサイトをご覧ください。