ワシントン、2014年3月19日 ― 気象予測が難度を増し、自然災害の頻度が高まる中、災害に強い社会を構築するプロジェクトのために、正確かつ実用的なデータのニーズが高まっている。こうした状況を受け、世界銀行はこのほど、各国政府・機関が活用できる実務マニュアル「強靭性イニシアティブのためのオープンデータ(OpenDRI)フィールド・ガイド」を策定し、災害・気候変動データのオープンソース作成・普及の土台となる基準の設定を目指す。
本ガイドは、世界銀行の幅広いオープンデータ・イニシアティブの下、災害・気候変動に対する強靭性構築を目指すOpenDRI枠組みの中心的役割を担う。策定は、世界銀行が運営するパートナーシップ「防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)」が担当した。本ガイドにより、政府機関、民間セクター、研究者、市民社会など様々な関係者の間でデータの共有と協力の円滑化が図られる。
「自然災害がもたらす経済的損失は、1980年代には年間500億ドルであったが、この10年間に年間2000億ドル近くまで増えている。このうち約4分の3は異常気象によるものだ。本フィールドガイドにより、世界銀行の数多くのパートナーは、気候変動や災害に強い社会の構築における透明性と協調性を高めることができ、データへのアクセスが容易になる」とレイチェル・カイト世界銀行副総裁兼気候変動特使は述べた。
OpenDRIフィールドガイドは、気候変動がもたらすリスクを効果的に削減することを可能にするだけでなく、人道支援の取組みと強靭性構築の取組みの間でデータを通じた協力を促すことになる。
「これまで、開発のデータと人道支援のデータは隔てられていた。このフィールドガイドはそうした情報を一つにプールし、既存のデータを国連人道問題調整部(OCHA)のプロジェクトに効果的に取り入れる事に役立つだろう」と、OpenDRIフィールドガイド作成に携わったサラ・テルフォードOCHAプロジェクト・マネージャーは述べた。
本ガイドは、地理空間データの管理・視覚化のためのオープンソース・ツールであるジオノード(Geonode)など、OpenDRIプラットフォームの下で進められているいくつかのプロジェクトを基にしている。また、オーストラリアおよびインドネシア政府とのパートナーシップの下で開発された姉妹プロジェクト「インドネシア緊急時シナリオ(InaSAFE)」は、コミュニティから出されたデータのマッピング・プロジェクトに自然災害のデータを取り込み、災害の影響を迅速に評価できるようにする。
こうしたオープンデータ・ツールは、激しさを増す暴風雨や洪水、干ばつなどの自然災害の影響緩和に向け、対象を絞り込んだ戦略を策定するに当たり、政府と住民双方のエンパワメントとなっている。
OpenDRIフィールドガイドは、ホワイトハウスで行われた気候データ・イニシアティブに関するイベントの場で発表された。世界銀行は、気候変動の影響に対処するためにデータ公開を進める米国航空宇宙局(NASA)、米商務省などの米国政府機関と共にその活動が認められた。
世界銀行は、ホワイトハウス主導の気候データ・イニシアティブの目標に沿い、2016年までに少なくとも24か国と本フィールドガイドを共有することを約束した。本ガイドはまた、今月世界銀行で開催されるワークショップ「オープンデータとイノベーションを通じた気候変動・災害に強い社会の構築」や、リスク理解ネットワークによるフォーラムなど、今後様々な場で紹介される。リスク理解ネットワークによるフォーラムは、災害・気候変動リスクに対する理解やリスク定量化を目指す様々な組織の代表1,000名以上が2年に1度一堂に会する会議で、次回は2014年6月に開催予定である。
世界銀行とGFDRRは、災害に強い社会の構築を世界各地の開発に取り入れるOpenDRI枠組みについて、画期的ともいえる本フィールドガイドを広く発信することで、枠組み実施が促進されるものと期待している。
防災グローバル・ファシリティについて
防災グローバルファシリティ(GFDRR)は、災害リスクが高い低所得国の自然災害への脆弱性理解と低減、そして気候変動への適応の支援を行っている。各国の政府機関、市民社会団体、専門機関を中心に300以上のパートナーと協力し、災害緩和政策を国レベルの戦略や様々な研修・知識共有活動に主流化するため、グラント基金や現地での技術協力を提供している。GFDRRは世界銀行が運営し、41のドナー・パートナーが資金を提供している。