東京、2014年2月3日- 自然災害による損失・被害が世界的に増える中、日本と世界銀行は本日、途上国の防災への取組みを後押しする新たなプログラムを立ち上げました。本プログラムは、リスクの特定、リスク軽減、事前準備、財政保護など、災害に強い社会の構築に向けて、日本の知識を世界各地の専門知識と結びつけ、開発計画の立案と投資を支援していくものです。
「日本は、世界の開発アジェンダにおける防災の主流化において、長く世界を牽引してきました。日本の経験は、防災が如何に効果的であるかを示すものです。」と、世界銀行のズビーダ・アラゥア副総裁代行(持続可能な開発ネットワーク総局)は述べました。さらに、「本プログラムは、日本をはじめとする世界各国の専門知識を世界中の途上国に役立てることにより、貧困層を中心に災害の影響を最も被る人々の生活の改善を支援する。」と、続けました。
「日本-世界銀行防災共同プログラム」の設立を記念して本日3日開催されたハイレベル・シンポジウムでは、日本の官民各分野の専門家のほか、災害が頻発し災害リスク管理を経験した国の政府高官、そして世界銀行の専門家が一堂に会しました。
愛知財務副大臣兼復興副大臣は、冒頭スピーチにおいて、「日本国内の行政機関、企業、研究者等が有する防災の知見や技術を活用した技術協力をサポートしていきたいと考えています。そして、世銀業務のみならず、あらゆる開発事業に防災の観点が取り入れられるようになることを期待しています。」と述べました。
本プログラムは、防災を開発計画や投資プログラムにおいて主流化するために日本の専門知識を活用し、技術協力、防災リスク管理のパイロット・プロジェクト、知識構築・キャパシティビルディングの活動、さらには自然災害に対する脆弱性削減のための各種取組みを支援していくものです。
プログラムの一環として設立される東京防災ハブは、日本国内及び世界各地域の防災研究拠点を結ぶネットワークを構築する他、日本の官民セクターと協力して、途上国による防災プロジェクトの実施を支援します。
2011年3月11日に起きた東日本大震災の後、日本と世界銀行は災害リスク管理の分野で協力関係を強化し、災害に強い社会の構築に向けた提言を「仙台レポート」としてまとめ発表しました。
こうした提言に基づき、日本と世界銀行は、日本のノウハウと専門知識の活用を含め、災害に脆弱な国に対する技術協力と財政支援を拡大することの重要性を強調しました。今回のプログラムは、こうした取り組みを受けて生まれたものです。
この取り組みの中心的役割を果たす防災グローバル・ファシリティ(GFDRR)は、世界銀行が運営し、日本を含む41か国と8つの国際機関が支援しており、パートナーの数は現在も拡大しつつあります。今回の新プログラムと東京防災ハブはGFDRRが運営します。
自然災害がもたらす災害の頻度と深刻さは、気候変動の影響も重なり、高まりつつあります。過去30年間に災害による損失・被害は、1980年代には年間平均約500億ドルでしたが、この10年間は年間2000億ドル近くまで増えています。
自然災害は先進国にも途上国にも同じように降りかかる一方、人口増加、急速な都市化、環境劣化、気候変動といった要因によりリスクが増幅される途上国の方がその影響を受けやすくなっています。脆弱な小国では、被害総額がGDPの100%以上に上ることもあり、公共財政の悪化を引き起こし、長年の開発の歩みを消し去ってしまいます。人的犠牲も深刻で、セーフティネットから外れていることが多い貧困層に被害が集中します。
ただし、必ずしも全ての自然災害が大参事をもたらすとは限りません。防災を政策、戦略、法律、建築基準において主流化すれば、人命や資産を救うことは可能です。事前対策の方が、被災後の救援や対応よりも安く済むことが多く、強靭性の構築、すなわち社会が衝撃に耐え、立ち向かい、回復する能力を強化することにより、災害リスクを軽減することは可能です。これはまさに、日本から得られる教訓の一つであり、今回の新プログラムのコンセプトとなっています。
東京防災ハブ及び「日本 - 世界銀行防災共同プログラム」の詳細: https://www.gfdrr.org/node/27950
GFDRRについて
防災グローバルファシリティ(GFDRR)は、災害リスクが高い低所得国の自然災害への脆弱性理解と低減、そして気候変動への適応の支援を行っている。各国の政府機関、市民社会団体、専門機関を中心に300以上のパートナーと協力し、災害緩和政策を国レベルの戦略や様々な研修・知識共有活動に主流化するため、グラント基金や現地での技術協力を提供している。GFDRRは世界銀行が運営し、41のドナー・パートナーが資金を提供している。